ハンターズ・ギルド
レティーアさんとのよくわからない戦闘訓練も終わり、シャワーを浴びて汗を流した後、昼食を取って昼から勉強の時間だと言うセリカちゃんと別れて自分はライアンさんに連れられて街に来ていた。もちろん今回はお嬢さま方も居ないため、徒歩での移動だ。別に歩くのは苦ではないし、異国の街を歩くのはそれだけで楽しいから問題ない。ただちょっと距離があるのが難点なだけだ。バスみたいな乗合馬車でもないのだろうか……?
「それにしてもライアンさん。自分の為に城を空けても良かったんですか?」
「なに、心配いらんよ。私の部下は皆、優秀だからな。それに今回の件に関しては私が直接出向かないと、向こうも容易には信じないと思うしな」
自分が肩に担いでいる袋に視線を向けて言うライアンさん。信じてもらえない、と言うのはこの袋の中身であるグラン・スコルピオの尾だ。これが今回の討伐証明部位としてハンターズ・ギルドに提出することになっている。グラン・スコルピオの討伐依頼の報酬を受け取るのと同時にハンター登録を済ませて身分証明書代わりにするため、その手続きを行うためにライアンさんは同行を申し出てくれた。
さらに言うならグラン・スコルピオの討伐には最低でもパーティー単位で行うのが一般的らしい。このパーティーというのが4人から6人を1つのパーティーと言う。ドラゴン◯エストとかモンスター◯ンターと同じだからイメージはしやすい。それ以上になるとクランと呼ぶそうだ。
このクランについてはパーティーと違い、設立には条件があるらしい。その条件と言うのが最低でもリーダーのハンターランクがB以上であること。10人以上の集団であること。そして1年に1回、規模に応じた登録更新料という名のギルドへの納税義務があるとのことだ。
ハンターランクについても質問したところ、ランクにはSからABCDまであり、Dが最低レベルだ。そしてランクの中にもさらに細かく分類されているらしく、それが0から5までの6段階。もちろん5が一番低くて0は少し特殊になるらしい。と言うのも、0はいつでも昇格試験を受けれる状態であることを示していて、C/0でC以上B未満の実力を有していると見なされるらしい。
「それで具体的にグラン・スコルピオの単騎討伐ってどれくらいのランクになるんでしょうか?」
「そうだな~~、基本的に1人で遭遇すれば逃げろって言うのが常識だからな。ランクにするとBランクくらいだろうな。それでも事前準備とグラン・スコルピオに対して十分な知識を持っていての話だ。あれは我々の援護もあったことと、運が良かっただけだからな。もう2度とするんじゃないぞ」
「あはは、肝に命じておきます」
言われなくてもあんな無茶はもうしたくないものだ。いくらお金を稼げたとしても、もう少し堅実に稼ぐ方が性に合っている。何事も基本は命大事に。ガンガン行こうぜはゲームの中だけの話だ。
「さて、ようやく着いたぞ。ここがハンターズ・ギルドだ」
「うわ~~、なかなか大きいですね」
周りの建物と比較しても二回りくらい大きい。3階建てで正面玄関は両開きの重厚な扉。扉の上にはギルドのマークだろうか?矢が番えられている弓のレリーフが掛けられていた。
「さあ、いつまでも眺めていないで入るぞ。昼を過ぎたこの時間帯なら、ハンターたちも出払っていてそう待たされることも無い筈だ」
頷いて扉を開けて中に入る。ギルドの中は3階まで吹き抜けのホールになっていて1階の奥の方には受付のカウンターがある。
右手に視線を向けるとギルドのイメージらしく依頼が張り出された掲示板があり、等間隔で分けられており、その上に何かが書いてあることから種類分けでもされているのだろう。左手に視線を向ければ武器や薬、食品類を表に並べている店みたいのがいくつかあった。ハンターたちはあそこで装備を整えたりして出ていくのだろう。
「サツキ君、そこで立ち止まっていては通行の邪魔になるぞ」
「あ、はい、すみません」
苦笑して言われ、恥ずかしくなって顔を俯かせてライアンさんの後を追う。ライアンさんは真っ直ぐにカウンターに向かい、親しげに受付のお姉さんと話したあと、こっちに来るよう手招きした。
「こいつが今話したサツキだ。すまないがハンター登録と報酬の支払いを頼む」
「わかりました、ライアンさん。私はベルと申します。では、サツキさん。少しの間、お時間を頂きますね」
「はい、よろしくお願いします」
そう緊張しないでも大丈夫ですよ、と笑われたが、緊張するものはしてしまうからしょうがない。しかも金髪のショートカットで美人のお姉さんとくれば、少し好みであることもあってさらに緊張してしまう。
「サツキさんは文字は書けないだろうと伺いました。私が代筆しますが、大丈夫ですか?」
「ええ、問題ないです」
「では、質問していきますので答えてくださいね。先ずはお名前からよろしくお願いします」
「はい、名前はサツキ・サヨナキです」
「サツキ・サヨナキさんですね。不思議な響きのお名前ですね。東方の出身ですか?」
「みたいですね。ちょっとした事故でこちらに来てしまって、名前と一般常識くらいしか覚えていないので、いろいろあやふやなんですよ」
「それは大変でしたね。では、とりあえず出身地はサンベルグで登録しておきますね」
「ええ、よろしくお願いします」
それからは雑談を交えながら質問に答えていき、最後に水晶の球体をカウンターの下から取り出した。
「それでは最後に魔法の適正などを調べますので、この水晶に手を置いていただけますか?」
「わかりました」
ちょっとファンタジーっぽいな、と感動しながら手を置く。ボウッと水晶が淡く光り、魔力が微量だが流れていくのがわかる。そしてどういう原理なのかは不明だが、いろいろな情報が載った紙が印刷された。
「ふむふむ、これはまた……」
「あの、何かありました?」
「あ、すみません。なかなか珍しいものだったので」
「珍しい、ですか?」
「ええ、魔力量はBランク。これは平均より少し高めですね。また属性についても四属性すべてに適性があります」
万能型ですね、と続けられたがそれってつまり器用貧乏なんじゃね?という疑問は脇に置いておく。どうせまっとうなやり方をできる訳じゃないんだし、今はロリ女神から自分に与えられたものを使えるようにするのが最優先だろうしね。
「それではこれで登録の方は終わりです。ハンターの証であるタグの準備をしますので、少々お待ちください。その間にグラン・スコルピオの討伐証明部位を見せてもらえますか?」
わかりました、と言って袋から尻尾を取り出す。それを受け取ったベルさんは討伐依頼の処理手続きを行い、報酬を出してきた。
「討伐の確認ができましたので報酬をお支払しますね。報酬は20万G。ですがハンター登録料として1万Gを差し引いていますので、19万Gとなります」
「わかりました、ありがとうございます。それと、1万Gだけ両替してもらえますか?ライアンさんに入市税を肩代わりしてもらっているので、返さないといけないので」
「わかりました。では、どうぞお確かめください」
封筒に入れられたお金を数える。想像していた金貨などではなく、紙幣を使われていることに少し驚いた。確か紙幣って国に対して相当な信頼がないと使えないと聞いたことがある。まあ、金貨だと重くなって困るから、こっちの方がありがたいから問題ないだろう。
「あと、これがタグになります。表には基本情報、裏にはランクを記してします。ランクに関してはライアンさんから相談されて、一先ずDの0になっています。Dランクは初心者に与えられるランクです。しかし実力としては十分なので、昇格試験を受けられる0からとなっています。頑張ってくださいね」
「ありがとうございます。できる範囲で頑張ってみます」
受け取ったタグを首から下げる。そしてベルさんに礼を言って待っていてくれたライアンさんの元に行く。
「お、ようやく終わったか?」
「ええ、何やら口利きしてもらえたようで、ありがとうございます。あとこれ、肩代わりしてもらった入市税です」
「む、別に問題なかったのだが」
「それでもケジメみたいなものですから」
「では、受け取っておこう。さあ、帰ろうか。今日はいろいろあって疲れただろう?」
「そうですね。では、帰りましょうか」
帰りも同じ道のりを歩いて帰るかと思うとちょっと陰鬱だが、異世界でのとりあえずの身分を得られたことで新しい異世界ライフを始められると思うと、少しだけ気分が上向いてきた。明日からも頑張っていこうと気分を新たに、ギルドからの一歩目を踏み出した。
結局遅れてしまい申し訳ありません。
とりあえず、この話で一章の終わりとしたいと思います。
次からは異世界ライフ編と称してやっていきます。
とまあ、簡単な予告はここまでにして、皆さんはFateという作品をご存知ですか?自分はようやく外典を手に入れることができて感激しながら読んでいます。
いい作品を読むと創作意欲も湧いてくるのでこれからも頑張っていきます!!
それでは次回以降もよろしくお願いします!!