4話 レベル上げ
スライムが予想外に簡単だったけど、レベル上げで考えたら楽だし、ありがたい事にしておこう。
それから再びモンスターを探すがスライムが連続して出てきたので石投げばかりだったが、最初のと合わせて10体ぐらい倒すと何やら不思議な感覚を覚えた。
身体がふわりと浮くような感じと言うか、軽くなったような感じと言うか、兎に角初めての感じだったので動きが止まったらアレンさんが笑顔で話しかけてきた。
「おめでとうございます。漸くレベルアップですね。初めての時は皆その感覚に戸惑うものですからね、慣れると戦闘中でも問題無く動けますよ」
確かに言われてからステータスを出したけどレベルが2に上がっていた。
十文裂 那斬
レベル2
生命 310/310
魔力 780/????
物攻 128
物防 386(106)
魔攻 115
魔防 166
敏捷 107
大体5~8ぐらい上がってる感じか。生命は10と多めだな。魔力についてはもう深く考えまい。
その後も魔物を探すと今度は全身緑色で額に小さな一対の角を生やした子鬼の集団を見つけた。
「待ってください、あれはホブゴブリン種です。魔物のゴブリンとは違い亜人の一種です。彼らは集団で行動し人助けや上位種のハイホブゴブリンになる事を目指しているだけの人間種に友好的な種族です」
危ない危ない。ゲームで見たゴブリンそのままだったから襲う所だった。
「魔物との区別の仕方ってありますか?」
ってか無いと困る。
「簡単です。亜人種は衣類を着用します。装備も街で買ったり整備したりしてるので綺麗です。ですが魔物は裸で装備も拾ったり使ったままで錆びたり汚れていたりします」
なんか魔物ゴブリンはゲームより汚物感が強そうな気がしてきた。
まぁ、こういう時こそ会うよねー
ホブゴブリン集団から10分もしない内にアレンさんの説明通りの薄汚いゴブリンが三匹纏まっている所を発見した。
「まだこちらには気付いて無いです。自分と勇者様で一気に片付けられると思います」
キッドの提案だが、俺は自分の力がどの程度か少し試してみたいので少し先行させてもらおう。
「キッド、勇者としての力を確認したいからまずは一撃、俺がいれてからの残った奴を二人で殲滅しよう。アレンさんは魔法で支援をお願いします」
二人が頷いてから俺はまたもや石を拾い、今度はゴブリン集団の奥の草むらに投げ入れ意識をこちらから背け、その隙にゴブリンに近付き纏めて凪ぎ払うように両手剣を一閃させた。
予想では一体斬る毎に力が減衰して二匹までしか斬れないだろうと思っていた。だが、実際は豆腐に包丁を入れるように殆ど手応え無く振り抜けた。
ステータスが高いってのはこうも理不尽な暴力を可能にするのか。しかも魔力の補充が出来ればこれにナノマシンの補助まで付くんだからそうなれば無双になりそうだな。
俺がそんな事を考えていると、またもやレベルアップの感覚を覚えた。…早すぎないか?
「アレンさん、またレベルアップしたんですけど、ゴブリンってレベルアップし易い魔物なんですか?」
「いえ、そんな事はありませんよ。ただ勇者様は加護の影響でレベルアップし易いみたいですね。これは先代の勇者様が手記に書いておられました。それと近接戦闘を行うとレベルアップが早まる傾向がありますね」
「パーティーで戦っても前衛の方がレベルアップしやすいです!」
キッドの実体験込みで解説を貰ったが、俺からしたらご都合主義万歳な状況だな。
それからまた探索を続けるもなかなか見つからず、とりあえず昼食を食べる事にした。
「保存の効く乾パンと保温管に入れたスープです。スープは熱いので気を付けてください」
「はい、ありがとうございます。ところでアレンさん、その保温管が少し赤く光ってるのは魔法ですか?」
旅の食事って感じのセットを手渡されたがアレンさんが取り出した保温管はうっすらと赤い光を纏っていた。
「はい、付与魔法で極小サイズの火嵐を付与して温くなりすぎないようにしたものですよ」
魔法もスキル扱いだから基本的には攻撃手段しか無いけど、応用が効くってのは生活の小ネタにも有効だったのか。色々考えとこう。
そうして三人で昼食を食べていると遠くからズシンズシンと大きな足音が響いてきた。
「すみません勇者様、どうやらオーガが来たようです。奴らは普段はもっと奥に居るんですが時折こうして浅い所に出てくるのです」
人の昼飯の邪魔しやがって!蹴散らしてやる!
そこからは迅速に行動しオーガの方向へ音をたてないように近寄る。…居た。
「六匹ですね。どうしますか、私が殲滅する事も可能ですが」
確かにアレンさんなら出来るだろうしその方が簡単だけど今回は俺のレベルアップが目的だからな、俺が戦う方が良いだろう。
「アレンさんは後方支援、俺とキッドでオーガを叩きます。アレンさんが危険だと判断したら迷わず撤退の指示を出してください。まだ色々把握出来てない俺より信用出来ますから。いざとなったら火嵐で殲滅してください。キッド、まずは二人で出来る限り殲滅だ、頑張ろう」
「「はい」」
ゴブリン戦よりも気をつけながらオーガ達に近寄るとまずはアレンさんによる先制攻撃だ。
「盲目の風」
アレンさん曰わく、砂混じりの風を発生させる目潰し魔法で人型のオーガには効果覿面だ。
「剛力の剣閃」
「はあぁぁぁ!」
目潰しが効いている間にキッドと共に走り一匹ずつ倒す。あと四匹。
それからは走ってオーガ達を攪乱しながら斬りつけようと思ったが目潰しから回復した奴が早速、太い樹を握り潰しただけのような棍棒で殴りつけてきた。
咄嗟に両手剣で棍棒を斬り捨てようと打ち合ったが何故か吹き飛ばされてしまった。
「剣に対抗する棍棒とかアリか!?」
「それもスキルの影響ッス!打ち合いはスキルを強く意識するか技を使わないといけないッス!」
「なるほど、分かった!」
あと語尾が楽しい事になってるな!今は言わないけど!
剣術スキルを意識しながら一匹一匹確実に倒していく。スキルもあるが打ち合いは避けて手首を狙い、打ち合わない時は一撃必殺の勢いで倒していく。
俺が二匹、キッドが一匹倒して残りの一匹に向かおうとした時、森の奥から緑色の何かが飛びかかってきた。
「水弾!!」
アレンさんがすかさず援護射撃をしてくれたが襲ってきた何かは水弾を切り裂いた。
「あれはハイゴブリンです。魔獣程ではないですが、魔物の中ではオーガよりも強力です。それに真新しい大剣から見て誰か冒険者を襲ってきたのかもしれません。気を付けてください」
じっくり見ると全身緑色で額に角があるのも同じだけど、身長が160cmくらいまで伸びて顔つきもいかにもな悪面になっている。
「キッド!オーガは任せた!こいつは俺がやる!」
どこであろうと、誰であろうと、狂気によって他者を傷つけたなら『咎人』だ。
だったら俺の『仕事』の時間だ!
◇
一合、二合、三合と両手剣と大剣がぶつかり合い火花を散らす。
力は拮抗し、スキルとスキルがぶつかり相殺し、意識は加速する。
だが、技が粗すぎる!
ハイゴブリンが大剣を大きく上に構えたのを見て俺は左下段に刃を横にして構え、同時に剣を振り抜く。
大剣はこちらを縦に一刀両断する気迫で頭上から迫るが、その刃筋を逸らす様に両手剣を右上に振り抜き、交差。
大剣は俺の左側の地面に突き刺さり、両手剣は刃がハイゴブリンに向き直った状態で俺の手の中にある。
「『正法執行』!!」
ハイゴブリンを切り裂くが、牙の並んだ口を開き死ぬ間際の抵抗として噛みついてこようとするが、気を抜いてない状態では無意味だ!
切り裂いた両手剣の返す刃でハイゴブリンの胴を横一文字に切断する。
キッドもオーガを倒したらしく辺りに倒れていた死体が霧の様に消えていく。
『仕事』の状態で倒したからか無意識に合掌していた。
◇
「凄いですね。オーガにも苦戦せずハイゴブリンにも一人で打ち合って勝たれるとは」
「勇者として加護を受けてるみたいですし、前の世界でも軍や騎士みたいな仕事をしてましたから、このぐらいの敵は大丈夫ですね」
実際、親父やお袋達との稽古に比べたら準備運動程度だし、仕事の具合でみてもまだまだ軽い方だしな。
その後も三人で休憩を挟みながら魔物を狩っていく。魔物などのモンスターはほぼ例外無く悪意だけの存在らしいので俺も『仕事』として存分に働いていった。
オーガやハイゴブリンは出てこなかったがその分、数をこなしたので戻る前にはレベルが10にまで上がっていた。
◇
帰りの馬車でキッドの語尾をからかったら照れていたのが可愛かった。愛玩動物みたいで癒された。
戦闘シーンの描写は専門用語をなるべく使わず分かりやすくしていきたいと思います。
まぁ、あまり知らないと言うのもあるんですがね。