3話 初戦闘
アップデートもあるし、魔力の補充も身体を休めると早くなるとアレンさんから聞いたので異世界召還初日はもう、早々に寝た。
魔力補充のせいで色々不便しそうな事にふてくされたとか、専属のメイドが付かない事に落ち込んだとか、未だ異世界っぽい種族に会えない事への不満からふて寝したとかでは無い。断じて無い。
そうさ、まだ初日が過ぎただけ、これから次第で色々変化があるさ。
さてと、それじゃあ朝の確認といきますか。まずは『ステータス』
◇
十文裂 那斬
レベル 1
生命 300/300
魔力 560/????
物攻 120
物防 380(100)
魔攻 110
魔防 160
敏捷 100
破邪の加護
スキル
(・千変万化LvMax)
・格闘Lv5
・銃撃Lv3
・剣術Lv1
◇
…アップデートって、ホントにアップデートだったんだ。ステータスが軒並み上昇してるよ。むしろバグだろ、レベル1でこの数値とか。
いや、諦めるな俺。意外とこれがこの世界では普通かもしれない。アレンさんに確認するまではそう思おう。
「表示枠展開。及び稼働率と身体情報を表示」
『稼働率8%。身体の魔力適合完了。ナノマシンによる身体アシストは現状不能』
魔力適合が完了という事は、生身では十全に闘えるかな。それにしても、一晩寝ても3%しか上昇しないのかぁ。
よし、今の内におさらいしよう。
・現状、使用不能なのが『ナノマシン』と『千変万化』もしかしたら『魔法』も
・どれも基礎魔力の補充が必要
・だが補充量が判らず多分数値化出来ない程の量
…アレンさん、対策マジでお願いします。
さて、それはそれとして、顔洗ったら食堂に行こう。
今日からは姫様の勇者として活動するんだから朝飯はしっかり食わないとな。
◇
「まず、戦闘でレベルアップして貰う前に、レアスキル以外でどんな戦闘スキルをお持ちか確認させてください」
朝食の後、アレンさんにレベルアップしに行きたい旨を伝えたらこんな確認をされた。
そういや、普通のスキルについては話してなかったな。ステータスについてもだけど。
「格闘Lv5と銃撃Lv3、剣術がLv1ですね」
「銃撃?そんなスキルがあるのですか?」
あーれー?使用可能だし、レベルも途中だからレアスキルでは無いと思ったんだけどなぁ。
「銃って無いんですか?」
「いや、有りますよ。でも銃使用者のスキルは銃術スキルなので、銃撃スキルでは無いです」
なんでだろ、銃撃と銃術で違う点?まぁ、判らない時は確認するか。
「アレンさん、これから特殊なステータスを出すので横に並んで貰えますか?」
「?…分かりました」
「表示枠展開、銃撃スキルについて詳細を表示」
『銃撃スキルは銃術スキル・砲術スキル・筒術スキルの統合上位スキルとなります。補正により投擲スキルLv1、射術スキルLv1相当の効果を得られます』
なるほど、統合ね。確かにその3個は纏めて使ったりしてたな。
「なん、ですか。これ」
横を見ると青い顔のアレンさん
「統合上位スキルなんてか聞いた事もありません。それより、まずこれは何ですか?こんな浮かび出るものなんて魔法にもありませんよ」
「…前の世界でのステータスです?」
俺の発言を聞いてアレンさんは青い顔のまま黙ると、少ししてから頭を振った。
「すみません、あまりの事に動揺してしまいました。そうですよね、勇者様は異世界から来られたのですからこちらとは違うモノを持っていても不思議では無いですよね。
ステータスもレベルは1でしょうが召還前の経験から高い能力値になっている筈ですよね。文献を読んでそういう諸々は知っていたつもりだったんですが、実際見ると驚きますね」
「えぇと、驚かせたみたいですみません」
気にしないでくださいとアレンさんは言うがまだ顔は青かった。ホントすみません。
それとやっぱりステータスは高いんですね。予想はしてました。
◇
とりあえず銃は無いとの事なので両手剣を準備してもらう間に昨日もお邪魔した訓練場に赴いた。
冷やかしとかでは無くレベル上げに行けば多数を相手取る事もあるので騎士か軍からパーティーを組む相手を借りに来たのだ。
アレンさんが諸々の手続きや根回しはある程度してくれていたらしいので、訓練場にいる人から3人までなら連れて行って良い事になっているらしい。
アレンさん本職以外でも万能だなぁ。旅の時とか連れて行くと便利そうだ。
「とりあえずアレンさんには色々聞くと思うのでついて来て貰いたいんですけど大丈夫ですか?」
「はい、元よりその様に魔術師長から拝命されていますのでご心配なく。あとは盾役や斥候役がいるとパーティーとしては安定しますね」
うーん、多人数相手も大丈夫だけど、流石に今はナノマシン補助が無いからなぁ…
盾役で誰か借りるかなぁ…。おっ、あれは!
「あそこの犬耳の盾訓練してる兵士さんなんか良いですね!歳も俺に近そうだし、レベル上げなら連れてくのもやっぱりレベル低い相方が良いと思うんですが!どうでしょう!」
そう、犬耳だ。茶髪の上に茶色い犬耳が生えた同い年か少し下ぐらいの少し幼い感じのする少年が盾を構えて訓練している。
アレンさんはいきなり興奮した俺に驚いたみたいだけど、これは仕方ないと思う。
作り物感の無いふさふさの毛並みと気配や音に反応してピクリと動く仕草。まさにファンタジーを代表するような存在の亜人が目の前に居るのだ。地球人なら興奮するだろう。
「確かに一理あるかもしれませんね。分かりました彼を呼んで来ましょう」
アレンさんが犬耳達の所に行って、件の兵士さんを連れてくると彼はキラキラとした目で俺を見てきた。
「はじめまして勇者様!自分は第三防壁軍所属のアーキッド・グランと申します!幼い頃から聞いていた勇者様と闘える事を誇りに思います」
「うん、よろしく。勇者として召還されたナギ・ジュウモンザキだ、これからレベル上げに盾役で来て貰うけど大丈夫かな?」
「はい、最近ですが盾スキルも取得したので精一杯お役にたちます!」
「うん、ありがとうアーキッド」
なんだろう、弟感が半端ない。犬耳関係無しで頭を撫でたくなるぞ!
って!無意識で撫でてた!しかもアーキッドも気持ち良さそう!
少しの間キッド(アーキッド)の頭を撫でて和んでいると俺用の両手剣も届いたので馬車にてモンスター達のいる『魔力溜まりの森』へと向かった。
◇
キッドに馬車の操車は任せて、俺はアレンさんからモンスターについて教わる事になった。
「モンスターですが、4つの分類に分けられます。動物が魔力溜まりによって変異するか、魔力溜まりから自然発生する『魔物』。魔物が更に魔力を蓄え巨大化した『魔獣』。魔獣が人間を喰らい悪意のみですが確かに理性を持ち魔法も扱う『魔族』。そして99体の魔族を喰らい凶悪に進化した魔族100体分の力を持ち闇魔法を使う『魔王』。五大魔王はこれよりも強化されてはいますが、基本的には同じようです。これから勇者様には最下級の魔物でレベルアップをしてもらいます。レベル1~5相当の強さですので囲まれない限りは勇者様お一人でも大丈夫な筈です」
その後も馬車に揺られ約一時間移動した所で大きな森に到着した。木がデケー。
馬車を森近くの馬車小屋商人に預けるらしい。なんでも冒険者もよくここで稼ぐので、馬車を預けられて身軽に森に入れるようになるから儲けが良いらしい。
森に入るとキッドが盾を構えて先頭を歩いてく。
「いました、スライムです」
三人で木の陰に隠れて伺うと一匹のスライムがぷるぷる震えていた。
「スライムは弾力がありますが、中心にある核を目掛けてブレなく一直線に斬るか、槍などで貫く、重量武器で叩き潰すのが一般的ですね。石を投げつけて意識を向けさせて石を投げたのとは別の方向から攻撃すると簡単に倒せます」
流石アレンさん。攻略法までスラスラ教えてくれたし、初めての戦闘を完勝で決めますかね。
足下から少し大きめの石を拾って投擲モーションに入る。
狙いを定めて…
投げる!
勢い良く石が飛んでいき狙い通りスライムにぶつかる。
ドパン!!
…えっ、え~っと、石がぶつかったと思ったらスライムが爆散した。
「投擲スキルがある勇者様ならこれくらい楽勝でしたね!」
キッドが笑顔で言ってきてから漸く銃撃スキルの補正にLv1で投擲がついていたのを思いだした。
いや、完勝するとは言ったけど、呆気なさすぎる。呆気なさすぎる!