2話 説明と確認
いわゆる説明回
王様達との謁見後、俺は書庫へと連れてこられた。…何故?
「では勇者様、これから説明致しますがよろしいですか?」
一緒に来た人達が入り口の警備に立ったり、何かを探しに行ったかと思ったら、残ってた人が先生役だったみたいだ。
「あっ、はい。よろしくお願いします」
俺がそう言うと、先生役の比較的若い魔法使い(?)さんは人の良い笑顔を見せてくれると、一つ頷いてから話しだしてくれた。
「はい、よろしくお願いします。それでは、まず始めに言っておきますが、この世界には過去五度、勇者召還及び魔王討伐が行われました。今回の召還は六度目になります」
六回目か…、魔王ってのは復活するのか、新たに産まれるかで危険度が変わりそうだなぁ。
「四度目と五度目の勇者は手記も残しておりますので、今取りに行っておりますので、参考までにお読みください。
では、魔王討伐に関わる原初の話から…」
◇
この世界のみならず、様々な世界を管理する神と、世界を渡り善悪を説く神々がおられるのはご存知ですか?
ご存知無い?まぁ、言葉通りですので分かり易いと思いますが、今回重要なのは後者の世界を渡る神です。
その神の一柱に善悪を説き、その世界に広がる悪意も其の身に修める優しい神がおられました。
数々の世界を渡り、悪意を取り除いて来たのですが、この世界にてとうとう其の身に溜めた悪意に神格まで蝕まれてしまい、邪神へと変貌されてしまったのです。
その事実に気付いた他の神々が泣く泣くその邪神へと堕ちた神を討伐されたのですが、その時にはすでにこの世界に魔王が5人産み落とされてしまったのです。
ですが、この魔王と言うのが厄介でして、邪神は神が堕ちた者で他の神が討伐しますが、魔王はその世界での特に強い強者と言う位置付け上、幾ら邪神の加護があろうと、神は手出し出来ない決まりなのだそうです。
魔王とその配下によって蹂躙されるこの世界に心を苦しめた神々にこの国の当時の王がある提案をしたそうです。
それが現代まで行われてきた勇者召還です。
王は、邪神の加護を貫く神の加護を持つ勇者を召還して貰えないかと提案しました。そうすれば神が直接干渉しない策となると。
ただ、神々は危惧しました。加護を持たせての召還は出来ますがそれにより人々の間で力ある者の争いが起きないかと。
これに更に王は言いました。勇者を召還する我々に制限を掛けても構わないと。
神々は検討し、みだらに召還が行えない様、勇者1人のみの召還と神の制約による各国の協力、更に術者にの…いえ、召還による反動ですね、これらが制限として掛けられ、初代勇者が召還され魔王は討伐されました。
ですが、邪神の加護は死して尚、魔王を助け、ダメージにもよりますが、数百年置きに復活しこの世界を滅ぼそうとし、その度に勇者を召還しているのです。
今回は魔王復活が事前に予見出来たので、勇者様にはそれまでにレベルアップをお願いする事になります。
◇
「レベルアップ?」
神様が関わってるのは予想外だったけど、概ね事前に考えてた通りの内容だった。うん、ファンタジーファンタジー。
でも待って。魔王や魔法があっても構わないけど、レベルアップ?ゲームの中じゃあるまいし、レベルでステータスが分かるなんて無理だろ?
「はい、レベルアップです。ああ、勇者様の世界はレベルの概念が無かったのですね。意外と多いのですね?最初の勇者様以外はレベルの説明からする事が多かったみたいです。
それではレベルですが、強さの目安を示します。基本的には教会での啓示で調べるのですが、勇者様は『ステータス』と念じると確認出来る方が多い様ですね」
言われて直ぐに念じると確かにこれは『ステータス』だ。
「ステータスには物理攻撃力、物理防御力、魔法攻撃力、魔法防御力、敏捷能力、魔力量、生命力、場合によっては器用性や身体操作能力なんかも出るみたいですね。それと神から授かった『加護』や『スキル』も表示されます」
確かに言われた通りのステータスが出てる。
◇
十文裂 那斬
レベル 1
生命 200/200
魔力 15/????
物攻 50
物防 270(40)
魔攻 15
魔防 15
敏捷 70
破邪の加護
スキル
(・千変万化LvMax)
・格闘Lv5
・銃撃Lv3
・剣術Lv1
◇
「あれ?なんかスキルが有効になってないのがあるんですけど?これはどういう事ですか?」
千変万化はLvMaxなのに文字が色褪せて有効になってないみたいな感じだ。
魔力の最大値が表示されてないのも気になるけどなんか聞いたらマズい気がするから聞くのは辞めとこう。
「勇者様は神から加護を受けておられますよね?その加護とこの世界に身体が慣れるまでは有効にならないもう一つの加護と勇者様方が呼ぶレアスキルです。早い方でも数時間は有効になりません。あと、私的な意見ですが、基礎魔力まで補充されなければならないと思いますよ?まぁ、私的な意見なので気になさらないでも良いですが…」
「基礎魔力…ですか?気になるので聞いてもよろしいですか?」
「ありがとうございます。基礎魔力は魔力の上限だと思います。これも我々は曖昧な量しか把握は出来ないのですが、例えば赤ん坊から魔力を感知するまで、時間がバラバラなのです。そして、感知するのが遅かった子程魔力量が多かったんです。ですから産まれてからの基礎となる魔力量なので基礎魔力と言い、勇者様もこの基礎魔力が補充されるまではレアスキルが使えないのでは。と私は考えているんです」
ふむ、つまり最大値まで魔力を補充しないと千変万化は使えない、と。マズいなぁ…最大値不明だよ。
「あの、どうされました?個人的な意見ですし、他の宮廷魔術師からは否定されるような事なので気にされない方が…」
この人、宮廷魔術師なんだ。って、それは関係無い、今はこの人の意見が正しいかどうかだけど、悪意は無いし、考え方もしっかりしてる、それに俺には魔力とかの知識が無い。
………よし、この人に頼ろう。
「ここだけの話にして欲しいのですが、その基礎魔力の数値が不明なんです。少しずつ補充してるんですが、いったいどれほどあるか分かりますか?」
「…不明、ですか?」
「はい、不明です」
やっぱりマズかったかな?
「…多分、数値化するには多すぎるのだと思います。…それに関しては何か対策を考えておきます」
おお、神妙な顔つきをされたけど理解してもらえた。
それからはスキルや魔法についての話になったが、ゲームやマンガなんかの説明と似た感じだった。軽くまとめると。
『スキル』
攻撃手段、Lv1から10段階あり最大でLvMax
レベルが上がる毎に威力と精度が上昇
産まれながらに持っているのもあるが大抵は訓練で身に付ける。
『魔法』
魔力と呪文により発動、無詠唱は過去の勇者達にも出来ず最低でも魔法名を唱えなければ発動しない
ただ、応用や発動後の自由性は才能と努力次第
属性は火・水・風・土・光・闇
光は神の加護を持つ勇者のみ、闇は魔王のみ使用可能
これも基礎魔力が補充されるまでは使用不可の見込みが高いらしい、残念
「それにしても色んな事に詳しいですね」
褒めると言うか感謝の意味合いでまずはそう言ったら、先生役のアレン・ストロテジーさんは苦笑をこぼした。あれ?
「私は魔力が少ないんですが、書物を読み漁り研究と実験で宮廷魔術師になったんですよ。だから、知識はあるんですよ。仲間内からはたまに『賢者』とか呼ばれてますよ」
あー、たまに見かけるイジメみたいなのか。でも、アレンさんに悲壮な感じも無いし、大丈夫かな。
「でも、おかげで俺は色々と助かってますよ。だから、ありがとうございます」
「いえ、これも私の役割ですから。適材適所です」
アレンさんと仲良くなれて良かった。その後は生活とかの細々とした事を説明してもらい、とりあえず身体を慣らす為に室外訓練場に連れて行って貰う事にしたが、よく考えたら部屋とか勇者の手記とかの事があったんだった。
数冊の手記と魔法や勇者関連の書物を持った人(アレンさんの助手らしい)を連れて用意されていた部屋へ行き、分かり易い場所に置いてから訓練場に向かった。
訓練している騎士や兵士の邪魔にならないように端の方でストレッチや習っていた武術の型をしたけど、やっぱり身体の動きが重いというか、違和感がある。
これも加護や世界に身体が慣れてない影響かな?それこそ微妙に重力が違うとか。
身体も少し動かしたし、早々に部屋へと戻り、夕食まで手記等を読むと言ったら1人にしてもらえた。
よし、では俺個人の確認作業をしますかね。
◇
「表示枠展開、稼働率及び身体情報を表示」
そう言うと、黒革のジャケットに擬態させていた『微粒子型可変結合式特殊犯罪対策具』、開発者は分かり易くナノマシンと呼ぶ俺の『武器』が少量だけ手前の空中に浮かぶと俺の指示通り、横長の画面を形作り欲しい情報を表示した。
まずはちゃんと稼働したな。でも、稼働率が5%と少な過ぎる。それに身体情報も『アップデート中』になってる。
「稼働に関する詳細情報を表示。更にアップデートの理由も表示」
『新規稼働供給源確保に伴い適合作業中、操作者の会話より魔力と判明。魔力との身体適合の為アップデート終了までおよそ10:38:40。
魔力供給量により稼働率向上となります』
…なんぞ、これ。
こっちも異世界召還の影響か?それにしても魔力をエネルギーにするとなるとマズいなぁ。ステータス開いてもまだ????のままだし、現状値もやっと生命力と並んだぐらいたしなぁ。…アレンさんに対策を急いでもらおう。
「…スキルについて表示」
『身体アップデート後、格闘・銃撃・剣術が最適化され使用可能。
千変万化はナノマシンと連動しており、稼働率100%において使用可能』
うわぁ…
フィクションですが、おかしな箇所があればご指摘ください。