1話 召還、そして挨拶
門を抜けた先には目の前に1人の少女と、俺と少女を取り囲む様にたくさんの人間が居た。
これは王家の召還のパターンか?
疲労困憊といった雰囲気が周りから漂っているが、俺としては誰か説明をしてくれると嬉しいんだがなぁ。
そうやって見回していると、目の前のおそらく姫様と思われる少女が少しフラつきながら立ち上がり、俺と向き合うと両手でスカートをつまみ、確かカーテシーとか呼ばれる礼儀の挨拶をしてきた。
「お初にお目にかかります。私、クリューゲル王国が国王イザーク・ゴルド・クリューゲルの娘、リーゼロッテ・ゴルド・クリューゲルと申します。此度は勇者召還に応じてくださり感謝致します。勇者様のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
いや、流石は王族、様になるなぁ。これはあれかな?胸に右手でも当てて挨拶した方が良いのかな?
まっ、礼儀には礼儀で返さないとな。
「ご丁寧にありがとうございます。召還に応じました十文裂 那斬と申します。こちらの言い方だとナギ・ジュウモンザキとなります。勇者として姫様を助けに参りました」
そう言うと姫様は少し不思議に思う様に首を傾げたが、別に変な事は言って無い筈。さっきの挨拶で門から聞こえた声の主が目の前のこの姫様なのは確認したし、俺が召還に応じたのだって結局は助けを求められたからだしな。
「あの、この世界を助けにではないのですか?」
ん~?なんか噛み合わないなぁ?よく見れば目尻にうっすら涙もあるし声だって聞き間違えてない。…はず
「召還の時に勇者様助けてって言ったのは姫様ですよね?」
確認までに聞いてみたが、この姫様キョトンとしてる、って、なんか気付いた。…あ、だんだん顔が赤くなってきた。
「あっ、さっきの、聞かれて、あ、は、恥ず、かしぃ…」
って、アブね!赤くなってモゴモゴしたと思ったら急に崩れる様に倒れだした。
咄嗟に姫様の背中に手を回して支えて、事なきを得たけど、あれ?なんか身体がいつもより重いような?
「姫様!」「姫様!ご無事で?!」
おおう、周りの人達が一斉にやってきたよ。あっ、何人か俺を睨んでる。確かに姫様に覆い被さるみたいな格好だから暴漢と間違われそうだけど、俺は無実ですよぉ。
「失礼、姫様を診させていただけますかな?」
おー、助かった。冷静そうなお爺さんが姫様に呼び掛けたり、熱を計る様に額に手を当てたりするのを姫様を横抱きにしながら眺める。お姫様だっこではないぞ。
「身の丈以上に魔力をお使いになった影響でしょう。少し体調を崩されてしまったようですな。姫様は此方で預かりますので、勇者様は国王に謁見してきて貰えますかな?」
お爺さんがそう言ってから、あれよあれよと言う間に謁見の間とか言う所の扉前まで連れてこられた。
いや、まぁ、初めての所だし、こんな豪華な建物入った事無いから迷子にならないようにしただけなんだけど、1人で歩いたら迷いそうだなぁ。
謁見の間に入ると姫様と同じ金色に輝く髪のイケメンな国王様に、年齢不詳の美女な王妃様、多分俺より年下だろう王子様が最上段に、一段下には銀色の鎧の騎士が左右に5人ずつ、一番下には俺達入って来た連中がいる形になった。
「娘の召還に応じた勇者とは、貴殿か。名は聞いているナギ・ジュウモンザキと言うらしいな。勇者召還に応じた事深く感謝する。貴殿には魔王討伐の為、我等に協力してほしい。お願い出来るか?」
王様って、やっぱ威厳あるなぁ。
って、そうじゃない。協力要請の返事求められてんだった。けど、ワザワザ聞く必要無い質問するのって、完全に自分の意思で闘う決意や覚悟を自覚させる為だろうなぁ。
後は従属化させる為とか?まっ、何にせよ流石は王族だなぁ。
「私は異世界でも悪を退治してきましたので、この世界に巨悪があると言うならば、その退治に微力ながら共闘いたしまょう」
これで協力体制って事にしてもらえるかな?でも、不安だなぁ。王様、俺の発言聞いてちょっとニヤリとしたし。
「協力感謝する。勇者殿にはこの世界の仕組み等を学んで貰い、その後、魔王討伐作戦を開始する。過去の勇者召還と魔王討伐について記れた書物もあるので運ばせておこう。では、よろしく頼む」
そう言われて俺達は退室。でも個人的に呼ばれるかもなぁ…。俺の親父と同じ感じしたし、お王妃様達もあえて喋らない感じたったし。
まぁ、悩んでも仕様がない、まずはこの世界の仕組みとやらを教わりますかね。
何やら短い気がしますが次回は色々な説明回の予定です。
11月23日誤字脱字訂正