0話 召還される男、召還する女
今、俺の目の前には光り輝く穴がある。
周りには普通に行き交う人達が居るが、俺以外の誰一人として、その穴を気にする者は居ない。
そして穴に対峙している俺の事も、そこに柱があるから避ける様な感じに、立ち止まっている事に不審がりもせずに避けていっている。
ただ、この状況に最初は驚いたが、すぐに思い当たる節があった俺は光り輝く穴をじっくりと観察している。
(さて、昨日読んだマンガの異世界召還の『門』とそっくりだが、入っても大丈夫なもんかねぇ…)
一応、気構えは整えたつもりだし、今出来る範囲での『準備』も終わったが、説明も無しに飛び込む程異世界に憧れがある訳でも無いしなぁ。
そうして悩んでいると、門(?)の向こうから微かに声が聞こえた。
「たすけてください。…勇者、さま、たす…けて、ください」
…
……
あっ、ダメだ、これ。
女の子が泣くのを我慢した声で呼び掛けるとか、助けに行く以外無いわ。
(しゃーない、行くか。いきなり滅びかけじゃない事を祈るぞ、神様)
そうして俺は異世界への召還に応じた。
門に入る時に思ったのは、ラフな格好だけど問題無いよな?と言うのん気な事だった。
◇◇◇
予見の巫女が、5人の魔王の内の1人が復活する事を告げてから一月が経過しましたが、なんとか完全復活の前に勇者召還の儀式が開始出来そうです。
魔法陣も完成、宮廷魔術師50人も魔力の補充を完了、私も儀式に必要なレベルにまで上昇し儀式前の禊ぎを受けました。
儀式決行が決まり、昨晩は久方ぶりにお母様と寝所を共にする事が出来ましたし、お父様からも「何があろうともお前は私の娘だ」と有り難い言葉を貰えました。
弟も先程私の下を訪れ、元気のでる呪いや励ましの言葉を掛けてくれました。
これで召還に耐えられず、命を落としても後悔はありません。
◇
勇者召還の儀式を行う部屋は魔力の漏れを減らす為、窓も無く、魔力を注がれ起動した魔法陣によって蒼く照らされています。
私は儀式開始の為、自らの両手に傷を付け、魔法陣へと血を捧げます。
私達王家だけに伝わる神との契約が刻まれた血、生涯に一度きりの勇者召還を許され、『呪い』を与える諸刃の刃。
その契約に従い、私の口から言葉ならざる声が紡がれ、魔法陣がそれに応じ勇者召還の為の門が開かれました。
ここからが正念場です。異世界へと門を繋ぎ、勇者をこの世界へと順応させるだけの魔力を注がなければなりません。
その為に周りに控えていた宮廷魔術師達が私に魔力譲渡をし、私はその魔力で勇者召還を完了させます!
ですが、ここで予想外の出来事が発生しました。魔力が足りないのです。
高レベルの宮廷魔術師が50人いるにも関わらず、その全員から順次譲渡されているのに、魔法陣はまだ足りないとばかりに私からぐんぐん魔力を吸い取っていくのです。
宮廷魔術師達も私の表情から気付いたのでしょう、魔力譲渡の量を続々と増やしていきます。
そうして時間が経過し、魔力譲渡が苦しくなってきた者が少しずつ出てくると私の心にも焦りや不安が首をもたげてきます。
この召還は失敗するんじゃないかと不安な私は思わず、その恐怖を堪える様に、不安やそれに伴い出てきた悲しみが表に出ない様に我慢する様に呼び掛けていました。
「たすけてください。…勇者、さま、たす…けて、ください」
私のその願いが聞き届けられたのかは分かりませんが、門が輝きを増し、勇者召還を完了させたのです!
そうして召還された勇者様は不思議な紋様の浮かぶ黒い革鎧を身に纏った輝く様な黒髪の少年でした。
はじめまして、始まりました。
テンプレスタートですが、その方が最初は分かり易いですよね。
これから頑張って面白くしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。