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【完結】夜空の琥珀  作者: はーこ
番外編【桃色十年恋慕】
44/46

3―ショウドウ―

 

 始まりの場所は、あの公園だった。



 僕はそこで彼女と出会い、彼女に救われ、彼女から大切なものをもらった。



 とりとめのない日常の一瞬一瞬が思い出となり、心の支えになる。



 彼女とこのままずっと一緒にいられたら、どんなにいいだろう。触れ合う度、その気持ちが強くなった。



 けれど楽しい時間が過ぎ行くのは、まばたきをするより早いものだった。






  ☆ ★ ☆ ★






「また遊ぼうね、ソウくん!」



「うん」




 手を振り返しながら、軽い足取りで駆けて行くちいさな背中を見送った。


 脳裏をよぎる笑顔に温かい気持ちを感じ、同時に胸が痛くなった。




「……ごめんね、セラちゃん」




 目頭が熱くなり、空を振り仰ぐ。頭上に広がる茜は驚くくらい澄み切っていて、悔しいとも、綺麗だとも思った。




 ……もう、準備は整ってしまった。




 僕は明日早朝、京都に帰らなければならない。






  ☆ ★ ☆ ★






 帰宅した頃には、宵闇が空を染め始めていた。




「あら、もう帰ってきたの? せめて今日くらいは、もう少しだけセラちゃんと遊んでいてもよかったのよ?」



「……いい」



「聡ちゃん?」




 母さんの呼び声を無視して居間を通り抜け、真っ直ぐに自分の部屋へと向かった。



 ……気分が悪い。どうにも落ち着かない。



 夜風に当たりたくなって外へ出ると、運の悪いことに満月だった。




「……くっ!」




 血が、疼く。




 うっかり琥珀の光を見てしまった僕は、とっさに掴んでいたベランダの手すりに額を打ち付けた。



 衝撃。すぐ後に痛みがついてくる。



 歯を食いしばり、ただ床を睨みつけていた。



 こうなることはわかっていた。だから早く帰ってきたんだ。傍にいるほど、離れたくなくなってしまうから。



 僕はまだ、この衝動を抑えることができない。



 今の僕に会えば傷つけてしまうから、僕は何も言わずに君のもとを去る。



 君が泣いても、それをやめはしないだろう。




 ――夜が更け、満月が空の頂点へと昇る。月の力が最も強くなる時間帯だ。




「……っ!」




 今夜は一晩中眠れないだろう。よりにもよって、それが今日だなんて。



 一晩中、あの子の笑顔が浮かんでは消える。それは、生き地獄だった……。




「――聡士くんっ!!」




 突然の声に耳を疑い、反射的に顔を上げる。


 夜になり飛躍的に上昇した視力では、その声の主が誰なのか、判別するのは容易だった。


 僕は唇を噛み締め、部屋を飛び出した。

 

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