1―トウキョウ―
久しぶりの東京。今までに長期滞在をしたことはある。だがそれが観光目的だったことは、ただの一度だってない。
では、何をしていたか?
結論から言うと、大学病院の教授だの研究者だのに、この異常な体質調査のため、精密検査を迫られる日々を延々と繰り返していた。
このとき僕は弱冠7歳。遊び盛りの子供に対して、地獄を突きつけるようなものだ。
幼かった僕は、ふとした拍子で暴走し、それを抑える術を知らなかった。
教授たちからは、自分の感情を抑えるように言われた。でも子供にそんな器用なことができるはずがなかったから、違う方法を取った。
それは、話さないこと。
何があっても、何を言われても、必要最低限のことしか言わない。そうすれば感情を動かされることはない。
結果として暴走することもなかった。
すべてはうまくいったと思われていたが、そんな僕を、両親や教授たち以外の何も知らない大人たちは「可愛くない」と一蹴した。
『まぶしすぎるくらい笑顔が魅力的な人に言われても、説得力がないんですけど!』
彼女の言葉が真実だとするなら、長い年月を経た今、僕は変わったのだと思う。ほかでもない、彼女のおかげで。
――東京にいい思い出はない。けれど、彼女がいる。
「あの日」の約束があるから、僕は帰ってきたのだ。




