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【完結】夜空の琥珀  作者: はーこ
七章【極彩色の約束をしよう】
40/46

4―カガヤク―

 

 ……どこからともなく聞こえてきた声。



 ばっちりフライングした私は、そのまま机に倒れ込む。


 そんな私の横で、頬を引きつらせている若葉くん。


 何とも言えない雰囲気の中、ガラガラッとドアを開け、陽気な顔で教室に入ってきたのは。




「おはようございまっす、朝桐です!」




 え……えーと…………。




「……おはようございます?」



「いや、そこはツッコんでもいいところだぞ」



「バッカだな。セラちゃんは優しいの。察してやれよー」




 ぞろぞろと入ってきた和久井くんや日野くんの言葉に、混乱中の脳内状態がさらに悪化した。


 ちょっと待って、廊下でため息ついてるのって、城ヶ崎!?




「みんな揃って……どうしたの?」



「よくぞ聞いてくれました!」



「……なぁ和久井、コイツにしゃべらせると面倒だからお前が説明してやれよ」



「俺がか? そういうのは苦手なんだが……」



「大丈夫だって。俺らの中じゃ、お前が一番説明上手だ」




 自信ありげに胸を叩く朝桐くんの横で、日野くんに諭された和久井くんが咳払いをし、口を開く。




「紅林には謝罪のつもりで、この数日様子をうかがいに行っていたわけだが……。


 それすら困らせる原因だと、城ヶ崎に指摘されてな。だから、3人で考えたんだ」



「何を?」



「要するに、堅苦しくすると返って肩身の狭い思いさせちまうから、俺らなりに普通に接しようぜってわけ! だからさ、まずはお友達から始めましょー!」



「こーら朝桐。下心見え見えになってんぞ」



「朝桐の開き直りは異常だが……紅林には助けてもらったからな。感謝を行動で示すために俺たちも力になりたい。


 ムシがいいのもわかってるが、できればその……友達として」




 ともだち。



 ……やば。たった4文字の言葉にこんなに感激する私って、おめでたいですか?




「嫌なら別に構わないからな?」



「ううん。嬉しいよ! すごく嬉しいんだけどね、その」




 苦笑いしながら、そっと隣を見やる。


 そこには、いまだに顔を引きつらせたままの若葉くんが。




「私はいいんだけど、若葉くんが何か言いたそうなので……」



「ふふっ、ありがとうセラちゃん。すぐに終わらせるね。朝桐くん、ちょっと表に出ようかー?」



「は? 何だいきなり……って! いてててっ!」



「ほんっと、いいところで来てくれたよねぇ。空気読めないにもほどがあるよねぇー」



「ワケわかんね。つーか腕放せ……いでッ!?」



「――大口叩くのもいい加減にしろよ。彼女に馴れ馴れしくするからには、それに見合った覚悟はできているんだろうな。確かめてやるからさっさと来い」



「え、急に口調変わった……って、いてーっつうの! はーなーせーっ!」




 ずるずると朝桐くんを引きずって行く若葉くんを、苦笑しながら見送る。




「……お手柔らかにね」




 そっと呟いたつもりだったけど、ふと振り向いた若葉くんがニッと笑ったから、ギクリとした。


 若葉くんには敵わないなぁ。




 ――新緑、茜、琥珀の瞳。




 めくるめく時間のように変わりゆく色。彼は私の世界に、こんなにも鮮やかな色をつけた。



 彼の笑顔は、言葉は、今日私に何を刻むのだろう。



 それがどんなにささいなことでも、きっと私にはかけがえのない存在になりうるもの。



 もう、独りじゃない。



 友達がいる。……大切な人がいる。



 そうやって照らしてくれる彼の光が、私はとても好きだった。



 まばゆい光を受けて、私はこれからも強く、輝いていける。

 

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