4―カガヤク―
……どこからともなく聞こえてきた声。
ばっちりフライングした私は、そのまま机に倒れ込む。
そんな私の横で、頬を引きつらせている若葉くん。
何とも言えない雰囲気の中、ガラガラッとドアを開け、陽気な顔で教室に入ってきたのは。
「おはようございまっす、朝桐です!」
え……えーと…………。
「……おはようございます?」
「いや、そこはツッコんでもいいところだぞ」
「バッカだな。セラちゃんは優しいの。察してやれよー」
ぞろぞろと入ってきた和久井くんや日野くんの言葉に、混乱中の脳内状態がさらに悪化した。
ちょっと待って、廊下でため息ついてるのって、城ヶ崎!?
「みんな揃って……どうしたの?」
「よくぞ聞いてくれました!」
「……なぁ和久井、コイツにしゃべらせると面倒だからお前が説明してやれよ」
「俺がか? そういうのは苦手なんだが……」
「大丈夫だって。俺らの中じゃ、お前が一番説明上手だ」
自信ありげに胸を叩く朝桐くんの横で、日野くんに諭された和久井くんが咳払いをし、口を開く。
「紅林には謝罪のつもりで、この数日様子をうかがいに行っていたわけだが……。
それすら困らせる原因だと、城ヶ崎に指摘されてな。だから、3人で考えたんだ」
「何を?」
「要するに、堅苦しくすると返って肩身の狭い思いさせちまうから、俺らなりに普通に接しようぜってわけ! だからさ、まずはお友達から始めましょー!」
「こーら朝桐。下心見え見えになってんぞ」
「朝桐の開き直りは異常だが……紅林には助けてもらったからな。感謝を行動で示すために俺たちも力になりたい。
ムシがいいのもわかってるが、できればその……友達として」
ともだち。
……やば。たった4文字の言葉にこんなに感激する私って、おめでたいですか?
「嫌なら別に構わないからな?」
「ううん。嬉しいよ! すごく嬉しいんだけどね、その」
苦笑いしながら、そっと隣を見やる。
そこには、いまだに顔を引きつらせたままの若葉くんが。
「私はいいんだけど、若葉くんが何か言いたそうなので……」
「ふふっ、ありがとうセラちゃん。すぐに終わらせるね。朝桐くん、ちょっと表に出ようかー?」
「は? 何だいきなり……って! いてててっ!」
「ほんっと、いいところで来てくれたよねぇ。空気読めないにもほどがあるよねぇー」
「ワケわかんね。つーか腕放せ……いでッ!?」
「――大口叩くのもいい加減にしろよ。彼女に馴れ馴れしくするからには、それに見合った覚悟はできているんだろうな。確かめてやるからさっさと来い」
「え、急に口調変わった……って、いてーっつうの! はーなーせーっ!」
ずるずると朝桐くんを引きずって行く若葉くんを、苦笑しながら見送る。
「……お手柔らかにね」
そっと呟いたつもりだったけど、ふと振り向いた若葉くんがニッと笑ったから、ギクリとした。
若葉くんには敵わないなぁ。
――新緑、茜、琥珀の瞳。
めくるめく時間のように変わりゆく色。彼は私の世界に、こんなにも鮮やかな色をつけた。
彼の笑顔は、言葉は、今日私に何を刻むのだろう。
それがどんなにささいなことでも、きっと私にはかけがえのない存在になりうるもの。
もう、独りじゃない。
友達がいる。……大切な人がいる。
そうやって照らしてくれる彼の光が、私はとても好きだった。
まばゆい光を受けて、私はこれからも強く、輝いていける。




