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【完結】夜空の琥珀  作者: はーこ
六章【夜空の琥珀】
36/46

6―コハクイロ―

 

「……そろそろ帰ろうか。夜遅くなってきたし、送ってくよ」



「えっ!?」




 飛び退くように身体を離した私の腕を掴んで、若葉くんはいたずらっぽく笑った。




「まさか、僕がこんな夜遅くに女の子を1人で帰らせるとか思わないよね? 3年前みたいなことがあったらどうするつもりなの」



「それはそうなんだけど……そ、そういえば! どうして助けてくれたの? 3年前はまだ京都にいたんじゃなかったっけ」



「あのときはちょうど夏休みだったでしょ。父方の実家がこっちにあるから、折あるごとに帰省してたの」



「ちょくちょく東京に来てたんだ? じゃあミブロが満月の夜だけに現れるっていうのは?」



「そういえば、過去に例を見ない量の不良を片付けたのが満月の夜だったかな。ほら、タチの悪いゴロツキって夜行性じゃない。


 なんかすっごい恐怖を刻んじゃったみたいけど、あれで治安がよくなったから結果オーライかなって思って」



「……なんで、若葉くんがここの治安を気にしてくれたの?」



「それは君が住んでるから……って」



「え、どうして私の住んでる場所を知っ……」



「何でもない!」




 私の言葉を遮って、若葉くんが咳払いをする。




「ともかく! あのときは大会を控えていたから、近くの道場へ試合に行ってた、その帰りだよ。本当に、間に合ったからよかったものの……」



「すみません……」



「いい? 断ったって連れ帰るから。君に何かがあったら荒れ狂う。絶対」




 説教っぽく言っていたけど、声を上げて笑う表情にかげりは見られない。



 うー……。これはもう、抵抗しても無駄なのでは?




「ほら、行こう!」



 

 差し出される手は、あの日、あの夜に私を助けてくれた手と同じ。



 見上げると、穏やかな琥珀色の瞳に吸い込まれる……。



 断れるはずがない。こうなることを望んだのは、誰よりも私自身なのだから。



 差し出された手を取る。大きな手は優しく、それでいて力強く握り返してくれる。



 月明かりの下を、2人並んで歩き出す。



 会話はないけど、ただそれだけで満足だった。

 

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