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【完結】夜空の琥珀  作者: はーこ
二章【紅蓮のハザード】
14/46

5―ドンカン―

 

「……みっともないところを見せちゃったね」



「ううん。言ったでしょ。僕は紅林さんを受け止めるよ」



「……ありがとう」




 顔が真っ赤なのは、泣いたせいだけじゃない。


 熱いし、恥ずかしいし、くすぐったい。


 こういうのって何て言うんだっけ。ええと、あれだ!




「本音で話せる友達っていいね!」




 若葉くんが、笑顔のまま硬直する。




「………………この流れでそれを言う?」




 ボソッと何か言ったみたいだけど、残念ながら私には聞こえなかった。




「紅林さんって、意外と天然?」



「急にどうしたの。違うよー」



「……絶対そうだね」



「それを言うなら若葉くんだって!」




 反論しようとしたら、若葉くんにはぁ……とえらく長いため息をつかれた。




「……違うな。鈍感、か」



「だから、何言ってるのー!」



「聞きたい?」



「うんっ! 聞き……」




 たい、と言おうとして、気づいてしまう。


 若葉くんが、異様なオーラを身にまとって微笑んでいることに。




「あー……、やっぱり、いいかな?」



「そう? 残念だなぁ」




 言葉のわりに目が笑ってない。


 まだ怒ってる? 何で?


 私何かしたかな。というか、何かしたの私なの?


 そうよね。2人っきりなんだし、他の誰が何をしたって……。




(……ちょっと待って! 私、今なんて……2人っきり?)




 今更だけど、再認識してしまう。


 え、何これ。顔がすごく熱いんだけど。




「あれ?」




 火照った頬を両手で覆い、押し黙ってしまった私を見て、若葉くんがきょとんとする。




「なんだ」




 それだけ言うと笑った。その笑顔を見てさらに顔が熱くなると、若葉くんはもっと笑みを浮かべる。


 なんで若葉くんは笑ってるの? なんで私は顔が熱くなって…………。




「紅林さん」



「は、はひィッ!!」




 声が裏返った。……もうやだ。


 焦ってるこっちがバカみたいに向けられたのは、いつもと変わらない笑顔。




「一時はどうなることかと思ったけど、午後の授業丸々休んだからかな、元気になったみたいでよかった」



「私、そんなに寝てたの!?」




 慌てて掛け時計を確認すると、7限目の授業なんて、とっくの昔に終わっていた。


 窓からは茜が差し込んでおり、完全に夕暮れ。想像を絶する気絶時間。




「紅林さんは、無理をすると身体が素直に反応しちゃうみたいだね」



「うん。お腹が痛くなるの。でもここまでとは予想がつかず……!」



「それほど、紅林さんにとって堪えることだったんだよ。


 いい機会だと思って、今日は部活休んだら? 全快しないことには調子が出ないでしょ」



「……そうだね」



「じゃあ僕、教室に荷物を取りに行ってくるよ」



「重いから自分で行くよ。歩けるし」



「それじゃあ休む意味がないでしょう」



「でも、日直も全部してくれたんでしょ? 迷惑かけてばっかりで悪いもの」



「何言ってるの。迷惑をかけられるために僕がいるんじゃない? 紅林さんは、もっと人をコキ使うことを覚えたほうがいいよ」



「……そんなことを勧めるのはどうかと思うんだけど」




 コキ使うとか……若葉くんに何だか黒いものが見え隠れしているのは、気のせい?




「とにかく、紅林さんはもっと甘えるべきだってこと! いい? 遠慮禁止だから」



「えっ!」




 禁止されちゃった。えっと……どうしよ?


 色々考えたけど何も思い浮かばない。となると、仕方ない。




「じゃあお言葉に甘えて、お願いしてもいい?」




 こっちは申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど、若葉くんはすごく嬉しそうに笑った。




「もちろん!」

 

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