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【完結】夜空の琥珀  作者: はーこ
二章【紅蓮のハザード】
12/46

3―オカドチガイ―

 

 何も見えない中に、私は座り込んでいる。



 誰も来ない。何もできない。


 いつまで経っても抜け出せない。



 どのくらい時が過ぎたのだろうか。


 辺りは真っ暗。やはり、何も見えやしない。



 私はどうしたらいいの?


 誰も、助けてはくれないの?



 ……嫌。



 嫌だよ。苦しい、悲しい、辛い。


 独りは、寂しい。


 ねぇ……誰か。


 助けて。お願いだから助けてよ……。






 フッと、何かが差し込んだ。






 見上げると目がくらんでしまうほどのそれは、『光』だった。



 ああ、これはあのときと同じ。

 

 ねえ、また来てくれたの? こんな私のために。


 ミブロ。私の、お月さま…………。






  ☆ ★ ☆ ★





 まぶたを持ち上げると、幾つかの蛍光灯と白い天井が目に入った。


 ぼんやりする視界をこじ開け、視線をずらす。


 目にした世界はすべて横たわって見えた。私は、ベッドに寝かされていたのだ。




「……紅林さん」




 誰かが私を呼んでいる。……誰だろう。




「紅林さん!」




 必死に呼びかけてくれる声で、やっと目の前の人物を認識する。




「……わかば、くん……?」




 ちいさく問いかけると、若葉くんの顔がくしゃっと歪んだ。




「やっと目が覚めた。……よかった」



「ここは……」



「保健室だよ。様子がおかしいと思って追いかけてみたら、気を失っていたんだ」




 事情を聞きながら上体を起こす。


 まだ残る腹部の痛みが、記憶を思い起こさせた。




「若葉くんが連れて来てくれたんだ。ごめんね……」



「それよりも、何があったのか教えて」



「え……」



「どう見ても普通じゃなかった」



「そ、それは」



「僕に言いにくいこと?」




 若葉くんは淡々としていて、私の知っている彼ではないようだった。


 まさか、とは思ったけど。




「……怒って、る?」




 何も言わない。それが答えだった。


 やがて、笑みなんて一切ない真剣な表情が姿を現す。




「……紅林さんの秘密を守るって、確かに言ったよ。


 でも僕は、後は関係ないからって、知らんぷりするような薄情な奴になった覚えはない。――気づくから」




 どうして言ってくれなかったのかと、言外に訊ねられた。……心配を、させた。


 怒られても仕方ないはずなのに、若葉くんのほうが悲しい顔をしてる。




「みんなに避けられていることはすぐにわかった。その理由が紅林さんだってことも。


 それでも僕は、紅林さんと一緒にいたかったんだよ」




 若葉くんの言葉は嬉しい。泣きたくなっちゃうくらい。でも。




「ダメだよ。それじゃ若葉くんに友達ができないもん……」



「誰かを無視して仲良くなったのが友達なの?


 僕はそうは思えない。そんなもののために君が傷つくなんて、お門違いだよ」




 その言葉は静かに、鋭く私を追い詰める。深く、心をえぐる。


 彼は、できもしないことを私に求める。

  

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