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【完結】夜空の琥珀  作者: はーこ
二章【紅蓮のハザード】
10/46

1―オニイチャン―

 

 ……それは、登校ラッシュの20分ほど前のことです。




「おはよう紅林さん。はい、日誌もらってきたよ」



「……ふぁいっ!?」




 日直の役目を思い出し、朝練を延期して職員室へ向かおうとしたら、教室の出入口で若葉くんと遭遇。




「ちょ、ちょっと待って。若葉くんはどうしてこんな早く学校に?」



「え? 僕も日直だからだよ?」



「はっ!?」




 間抜けな声を出したので、レンズの奥にある黒目がパチパチと瞬く。




「そんなに驚くこと? 黒板に書いてあったよ。僕の見間違いでなければ」



「それはないかな!? ウチのクラスで若葉くんって1人しかいないから!」



「ははっ、そっか。なら間違いないなー」



「そうだよ。ハハハ」




 ……今日って若葉くんだったっけ?


 編入翌日に日直なんてアリ? 別の人だった気がするのは私の思い違い?




(……まさかね)




 心当たりがないわけじゃない。いや、どちらかといえばありすぎるけど……。




「紅林さんって、いつもこんなに早いの?」



「……あ、うん。家近いしね」



「へぇ。この辺は駅からも近いよね。学校帰りとか充実してそうだな」



「何が?」



「あれ、寄り道しない?」



「いやぁ……部活が終わったらすぐに帰るし」



「そうなんだ? 僕なんか毎日してるけど」



「毎日!?」




 若葉くんの顔から、一瞬にして笑みが消えた。




「そうなんだよ……毎日が戦場でね」



「ごめんちょっといい? 若葉くんは学校帰りにいつも何してるの?」



「何って、ゲームセンターの……」




 ゲームセンター!?




「斜向かいにあるバーの……」




 ……ああ、ゲームセンターは関係ないのね。でもまだ雲行きが怪しいんだけど……。




「裏路地を通り抜けた先の寺の……」




 寺? バーの先に寺なんてあったっけ?




「200m行ったところにある、スーパーに用があるんだけど」



「…………………………」




 色んな意味で、なんと言ったらいいのかわからない。




「えっと……若葉くんはそこで何を?」



「やだなぁ紅林さん。夕飯の材料を買うんだよ。葉物野菜がビックリするほど高くてね。もう大変で大変で」




 私、若葉くんと話してるのよね? なのに主婦が見えるのはなぜ?




「わ、若葉くんって、家庭的、なのね」



「意識したことはなかったけど、言われてみればそうなのかな。


 ウチは兄弟多いから、母さんを手伝ううちにいつの間にか僕の仕事になっちゃったんだ。学校帰りの買い物は日課みたいなものだよ」



「兄弟がいるの?」



「妹と弟が1人ずつ。まだ子供だから僕が面倒見なきゃいけないからね。……似合わなかった?」



「ううん、全然!」




 お兄ちゃんなんだ。若葉くんがしっかりしてる理由もこれで納得。


 それにしても、料理が日課とは驚き。


 私も頑張らねば、とひそかに決心した朝の出来事でした。

 

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