第4話 聖なる母の家
汝は穢れし者。ただ主に許しを請え。祈りをささげよ。
汝がごとき者の存在を認めたもうた主に感謝を……。虚ろなる朧月は消え、廻る廻る。
汝の中にある悪しき心はここに居ることで次第に消え失せようぞ。そなたは天使の子。汝があるべしはここに在り。
忘れよ。汝の母たる穢れし悪魔のことを……。
うるさいぞ、天使ども。
あたしは誰にも屈しない。どうして何もしていないのに許しを請わねばならぬ。そなた等の崇める神とやらはどこにまします?神とはそれを知らぬ者にとっては虚像。空想の産物に過ぎぬ。
あたしは何もしていない。お前達に父上や母上を見下す権利は無い!!
――――――――――
目を醒ますとシェリアの目の前には目に痛いほど白い天井が広がっていた。
そうだ……
ここはカストレアの教会だ。
「シェリアさん。おきていらしゃいますか?」
ドアの向こうからカストレアの声が聞こえた。
「起きてるよ。」
シェリアが返事をするとカストレアは、失礼しますと言って部屋に入ってきた。
シェリアがいるのは南向きの客室だった。
窓の外を見るともう太陽はだいぶ上の方にあった。
「今日はこの町を案内して差し上げることになっていましたので。……夜になってからでは危険なので太陽の加護あるうちにと思いまして。」
カストレアは曖昧で寂しげな笑みを浮かべた。
夜になると危険。
それは辺境の町でも変わらないようだった。
夜は魑魅魍魎の時間。悪魔たちの遊戯の時間。
半分悪魔であるシェリアは彼らと渡り合うことが出来るが人間達ではそうはいかない。
邪悪な者は悪魔たちに取り憑かれ、生きながらに死んだ悪魔の皮になる。たとえ純朴な者であっても心の奥深い処に潜む邪心に見入られ、邪心の塊と化す。
「わたしは買い物がありますので先に町に出ていますね。2時にタクッテク社のビルの前で待ち合わせ……でどうでしょうか?」
「分かった。じゃあそのころに。」
「では、失礼しますね。」
カストレアは一礼すると部屋を出て行った。
シェリアは身の回りの支度を済ませると、マザー・テレジアの待っているという礼拝堂に向かった。
荘厳たるふいんきの中、司教マザー・テレジアは主に祈りを捧げていた。
「待っていましたよ。シェリアさん。」
テレジアは礼拝を終えると堂の中にシェリアを招き入れた。
「貴女に聞いてほしいことがあるのですよ……。天使さまである貴女に。」
テレジアはそう言うとカストレアによく似た笑みを浮かべた。




