星は往く
子供の頃はいつも上を見ていた。
背の高い父が僕を見つめて頭を撫でる。
髪を結んだ母の料理をしている背中を掴む。
その度に見上げていた。
それなのにいつからか靴ばかり見るようになった。
躓かないように、誰とも目を合わせないように生きていた。これが大人だと思って生きてきた。
そんなある日、不意に飛んできたボールが額に当たって倒れて、僕は久しぶりに夜空を見た。暗闇に浮かぶ光の粒、きっと一万年、百億年先かもしれない。そして気づいた。
ちっぽけな宇宙の、ちっぽけな銀河の、ちっぽけな星の、ちっぽけな国の、ちっぽけな生命体。
忙しい日常で忘れていたこと。
星を見ると悩みが木の葉みたいに軽くなって、どこかへ運ばれて行く気がする。
やっと僕は立ち上がって、前を向いて歩き始める。
心無しかさっきよりも気分は晴れている。




