暗い君 #4
夜に俺は考え続ける
病室の天井を見つめながら、俺は寝返りを打った。
昼間の出来事が、頭から離れない。
リハビリ室で、俺と目が合った瞬間にこわばった彼女の顔。
驚き、戸惑い、動揺――そして、逃げるように去っていった。
(……なんだったんだ)
普通に話しかけてくれてもおかしくなかったはず…
少なくとも、彼女の性格なら、そんな反応をすると思っていた…
なのに、俺を見た途端、何も言わずに去った。
まるで、俺に見られたくなかったかのように。
(何か……隠してる?)
けれど、俺と彼女はそこまで親しいわけじゃない。
クラスメイトで、時々話す程度。
彼女が病院にいる理由なんて、本来なら俺が気にすることじゃない。
――なのに。
(……気になる)
一度気になり始めると、妙な引っかかりが消えない。
俺は深く息を吐いて、目を閉じた。
考えても仕方ない。
どうせ明日もリハビリがある。
また会うことになるのなら、その時に――
(直接、話してみるしかないか)
ぼんやりと、そんな結論に至ったところで、俺の意識は次第に沈んでいった。
***
翌日、再びリハビリ室で
翌日。
昨日と同じ時間、俺はリハビリ室の椅子に座り、腕をゆっくり動かしていた。
担当の理学療法士が優しく指導してくれるが、俺の意識は半分上の空だった。
昨日のことが気になって、周囲をそれとなく気にしていたのだ。
そして――
(……来た)
扉が開き、昨日と同じトレーナー姿の彼女が入ってくる。
俺は思わず視線を向けた。
彼女も、俺の存在にすぐ気づいたようだった。
一瞬、足が止まる。
そして――昨日と同じように、すぐに踵を返そうとした。
逃げるつもりなのか。
そう思った瞬間、俺は反射的に声をかけていた。
「ねえ」
彼女の肩が、ぴくりと揺れる。
足を止めたまま、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「……」
何か言いたげな顔。
俺は、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「瑞稀…?」
「……なに」
「なんで…いるんだよ?逃げなくてもいいだろ…?」
デリカシーがなかったかもしれない。それでも聞きたかった。