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思い出 #30 終

 夏が再び訪れ、あの日の記憶が色褪せることなく、心に刻まれていった。


 あれから一年が経ち、瑞稀のいない夏祭りがやってきた。去年、二人で見た花火の夜を思い出すたびに、胸が締め付けられそうになった。しかし、その思い出をただ悲しむことなく、前を向こうと決心していた。


 今年もあの神社の前を通り過ぎ、花火が上がるのを待つ。夜空が少しずつ色づいていく中、俺は一人でその場所に立っていた。


 「来年も、花火を一緒に見ようね。」


 瑞稀の言葉が、今でも耳の奥に響いてくる。あの日、病室で交わしたその約束は、今も俺の心の中で生き続けている。


 今年、花火を見るのは一人だ。それでも、彼女が言った「来年も」との言葉を思い出しながら、空を見上げる。


 静かな夜、そして夜空に咲く無数の花火。その一つ一つが、まるで彼女の思い出のように美しく輝いているように感じた。あの日、彼女が見たかったものを、今、俺は一人で見ることになった。でも、決してその思い出を一人で背負っているわけではない。彼女の言葉、彼女の笑顔、瑞稀がくれたすべてを胸に、俺はこれからも前に進んでいこうと思う。


 花火が夜空に広がり、色とりどりの光が輝く中、俺は静かに目を閉じて心の中で祈った。


 「ありがとう、ずっと一緒だよ。」


 彼女との約束を、そして彼女の記憶を胸に。来年も、きっと。

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