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不審 #3
目が合った瞬間、彼女の表情がわずかにこわばった。
学校で見る、明るく快活な彼女とは違う。
驚き、動揺、そして――躊躇い。
(……なんでこいつがここに?)
俺が戸惑っている間に、彼女はすっと視線を逸らし、何も言わずに立ち上がった。
そして、まるで俺から逃げるように、足早にリハビリ室を出て行った。
(……え?)
俺は声をかける間もなく、その背中を目で追った。
扉が閉まる音だけが、静かなリハビリ室に響く。
……何だったんだ、今の。
学校での彼女なら、「あ!」と声を上げて駆け寄ってくるような性格のはずだ。
なのに、俺を見た瞬間に去るって――
リハビリ用の器具を握りしめたまま、俺の中に得体の知れない違和感が残った。