表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/30

教室で #23


始業式を終えた朝の空気は、どこか新鮮で清々しい。しかし、校舎に足を踏み入れた瞬間から、俺の中で何かが違うことを感じていた。夏休みが終わり、日常が戻ってきた。でも、俺の中での“日常”は少し変わっていたようだ。


 瑞稀が病院で過ごしていた時間が、あまりにも濃密だったからだろうか。あの日々を経て、俺は確実に瑞稀との距離が縮まったと感じている。そして、それがどこか不安でもあり、嬉しくもあった。


 学校では、久しぶりに会ったクラスメートたちとの再会が嬉しい反面、どこか浮ついた気分が収まらない。



 「久しぶり!」

 そんな時、友達の声がかかる。振り返ると、顔なじみのクラスメートたちが笑顔で話しかけてきた。


 「お前、どうだった?夏休み、何してた?」

 「ずっと家でゴロゴロしてたかな。部活もサボってたし」

 皆、相変わらずのノリで話してくる。俺もその流れに乗って話すことにした。けれど、どこかで心が落ち着かない。


 瑞稀が教室に入ってきた。彼女は笑顔で手を振った。そして、すぐに歩み寄ってきた。


 「おはよ」

 瑞稀のその一言に、少しだけ心が温かくなる。リハビリを終えて学校に来る彼女を見て、どこかホッとした。


 「おはよ、無理しないでね」

 俺が心配そうに言うと、瑞稀はニコッと笑って、肩をすくめた。


 「大丈夫だよ。学校に来たら元気出るし。皆と会うのが楽しみだったから」

 そう言う瑞稀の顔には、いつもの明るさが戻っていた。その笑顔を見て、俺は少し安心する。


 「そうか。でも無理しないでな」

 俺は何度も言ってしまう。少しでも瑞稀を支えたいという気持ちが、どうしても言葉になってしまうのだ。


そして、登校初日はなんとか終わった。


 「お疲れ様」

 俺が声をかけると、瑞稀は振り返り、少し疲れた顔を見せてからまた笑った。


 「お疲れ様、今日は久しぶりに学校行ったからちょっと疲れたかな。でも楽しかったよ」

 「そうだよね、俺も学校行ったけど、なんだか変な感じだった。しばらくリハビリが続いていたから、学校に戻るのが不安だったけど、またみんなと会えるんだなって」

 俺がそう言うと、彼女は小さくうなずいた。


 「うん、でも学校に行けるだけでも、嬉しいよ。春樹とまた会えるし」

 その言葉に、俺の胸が少し温かくなった。


 「それならよかった」

 俺は少し照れくさく言って、リハビリが始まる前に二人で少しだけ話をした。病院の空気は、やっぱりどこか静かで、落ち着く。けれど、こうして彼女と一緒に過ごすことで、少しだけ外の世界の喧騒も感じられた。


 次の日から、また普通の日常が戻ってきた。でも、彼女との時間がまた少しずつ積み重なっていくことが、どこか嬉しかった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ