始業式 #22
夏休みが終わり、空はどこかまだ夏の名残を感じさせる青さを残していたが、秋の風が冷たく頬をかすめる。病院のベッドで目を覚ましたとき、いつもとは違う空気が漂っていた。俺は時計を見て、今日は学校の始業式だということを思い出す。
「始業式か…」
思わずため息をつく。長い休みが終わってしまうことに少しだけ寂しさを感じながらも、どこかで新しい始まりに対する期待が膨らんでいる自分に気づく。
リハビリの時間が少し早めだったので、いつもより早く病院を出る準備をしていた。着替えを済ませ、病院の廊下を歩きながら、ふと瑞稀のことを考える。瑞稀も今日、学校に戻るのだろうか。
リハビリ室に到着すると、彼女はすでに準備をしていた。いつもと変わらず明るい顔をしているが、どこか疲れたような表情も見える。
「おはよう」
俺が声をかけると、瑞稀は振り向き、笑顔を見せた。
「おはよう!今日は、いよいよ学校だねっ」
「少し緊張するけど、まあ頑張るよ」
俺は照れくさそうに笑うと、瑞稀はうなずいた。
「私もね。久しぶりだから、ちょっと不安だけど…でも、春樹と一緒だから、大丈夫かなって思ってる」
瑞稀は少し赤くなりながら、そう言った。その言葉がどこか暖かくて、胸が少し高鳴る。
「大丈夫だよ、俺も頑張るから」
俺はそう言いながら、少しだけ背筋を伸ばした。
リハビリが終わると、瑞稀は病院の外に出る準備を整え、今日の学校の服に着替えた。久しぶりに制服を着る瑞稀の姿を見て、思わず見とれてしまう。
「どう?」
瑞稀がちょっと恥ずかしそうに自分の制服姿を見せてくる。
「うん、似合ってるよ。すごく綺麗」
俺は思わず言葉が出て、瑞稀は少し照れたように顔を赤くして笑った。
「ありがとう…じゃあ、行こうか」
彼女がそう言うと、俺たちは並んで病院を出て、歩き始める。学校までは少し距離があるけれど、今日は一緒に歩くことができて、それだけで少し安心した気持ちになる。
学校に着くと、校門前には同じように登校してきたクラスメートたちが集まり始めていた。久しぶりの学校生活に、心の中で少しワクワクする気持ちが湧いてくる。だけど、瑞稀があの病院で過ごしていたことを思い出し、少し胸が痛くなる。
「大丈夫?」
俺が不安そうに瑞稀に声をかけると、彼女はしっかりとした表情でうなずいた。
「うん、大丈夫だよ。行こうね」
瑞稀がそう言ったとき、俺は少しだけ安心した。
始業式のベルが鳴り、学校が再び動き出す。
始業式が終わると、俺は少し落ち着かない気持ちで教室に戻る。けれど、瑞稀が病院にいる間、少しでも支えになれていたのかと思うと、また一緒に過ごせる時間が増えることに希望を持っていた。




