打ち明けられた翌日 #14
次の日、リハビリが終わった後、瑞稀と再び会った。
昨日の話が嘘のように、今日はいつも通りの明るい笑顔を見せてくれる。
けれど、その笑顔の裏側にあるものが、昨日の言葉とともに、胸に重く残っている。
「ねえ、どうだった?」
瑞稀は普通に話しかけてきた。
昨日の重い話を引きずらず、何もなかったように振る舞っている。
「まあ、普通だったよ」
「ほんと?」
「ああ、リハビリも前より楽になってる気がするし」
瑞稀はちょっとだけ目を輝かせて、嬉しそうに笑った。
けれど、その笑顔が少しだけぎこちないことに、俺は気づいていた。
また、瑞稀は少し黙り込んで、俺のほうを見た。
その視線に、どこか探るようなものを感じる。
「……ありがとう」
突然、瑞稀が小さな声で言った。
「え?」
「昨日、ちゃんと聞いてくれてありがとう」
「いや、別に…」
俺は何もしていない。ただ困惑していただけだ。
瑞稀は話を続ける。
「すごく嬉しかった。春樹がそう言ってくれたから、少しだけ楽になった気がする」
瑞稀の言葉に、胸の中がわずかに温かくなる。
それでも、昨日の話のことを考えると、どこか心に空いた穴が塞がらない。
瑞稀は、何もかもを隠すように笑っている。
でも、その隠しきれない痛みが、どこかにあることを、俺は感じ取ってしまう。
——瑞稀の気持ちは、きっと俺なんかじゃ理解できない。
でも、少なくとも、今は瑞稀が笑っているその瞬間を、大切にしたいと思った。
「今日、またどこか行こうか?」
「うーん、そうだね……でも、外は暑いし、ちょっと休んでからでもいいかな」
「…分かった」
瑞稀は軽く手を振りながら、リハビリ室の隅に座る。
俺も隣に座り、静かな時間を過ごす。
——このままずっと、この平穏な時間が続けばいいのに。
そう思いながらも、胸の中でずっと、何かが鳴り響いているようだった。




