無理をしていそうな君 #11
病院の自由外出は、週に数回だけ許可された。
瑞稀と外へ出るのは、今日で二回目だ。
「今日はどこ行く?」
病院のロビーで待ち合わせた瑞稀は、どこか浮かれた様子で尋ねてきた。
その表情は明るく、学校で見せる瑞稀そのものだった。
「どこでもいいけど。どこか行きたいとこあるの?」
「じゃあ、ショッピングモールとか行ってみたいな」
「モール?」
「うん、ここの近くにあるでしょ? 夏物の服とかも見たいし、ちょっと涼みたいし、ほら!夏祭りの浴衣も見ないと」
「まあ、いいけど……」
軽く肩をすくめながら、俺たちはバスに乗り込んだ。
病院の外へ出ることに、瑞稀は明らかに喜んでいる。
病院にいる時と比べて、驚くほどよく喋るし、よく笑う。
モールに着くと、まずは服屋を見て回ることになった。
瑞稀は店内を楽しそうに歩き回りながら、いくつもの服を手に取る。
「これ、可愛いなあ……」
「瑞稀ってそんな格好するイメージないけど」
「そう? じゃあ、こういうのは?」
俺の前で、ひらりと白いワンピースを掲げる。
「……まあ、似合う…かな」
「ふふっ、適当な感想」
瑞稀はくすくす笑いながら、再び服を選び始めた。
「ねえ、どうかな?」
「ん?」
「こっちのワンピース、似合うかな?」
さっきのとは違う黒のワンピースを抱えながら、瑞稀が笑顔で尋ねる。
その笑顔が、どこか作られたもののように見えてしまった。
「……ああ、似合うと思う」
一度でも疑うと最後まで疑ってしまう。
俺は曖昧に答えながら、その違和感を拭いきれずにいた。
もっと楽しく過ごしたいものだ。




