心の虎
胸で蠢く疼く悲痛
黒く不気味な戦慄と絶望
わたしは穢れている
この不浄は拭えない
わたしは決して赦されない
ぼくは汚辱を受け入れる
ぼくはすべてを赦すから
ぼくの言葉を信じてくれ
きみは崖から飛び降りて
ぼくに全魂をまかせたよ
ぼくだから抱きとめると
ぼくでなければ出来ないと
信じたのではなく
誰でもよかったのかもと
ある日あなたは呟いた
胸で蠢く疼く悲痛
黒く不気味な戦慄と絶望
シーソーは傾き重荷はぼくのもの
ぼくはただの座布団だった
ぼくはただの緩衝材だった
君が吐いた苦痛の限り
それが今は恩讐となり
この胸に息づいて燻る
ぼくがぼくである必要はなかった
ぼくでなくて誰でもよかったのだ
絶叫を完璧に封じる防音室を
きみは求め彷徨っていたのだろう
ぼくは悲嘆を漏らさぬ集音器だった
きみは拭えぬ汚穢と不満を咆哮しつくし
気がすんだあと消え去った
あの日あの時あの瞬間から
ぼくは誰も信じていない
自分だけを信じている、虎のように
人はみな誰でもない
のっぺらぼうを演じている