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第7話 協力者

 まず初めに私は、メルビン伯爵家について調べることにした。伯爵家と裏市場との関係については、世間一般にはあまり知られていなかった。関係がバレた後すぐにプリアンド子爵家によってもみ消されたのだ。だからこそ、調査はそう簡単には行かなそうだった。

 ユリーナがこの話を知っていたのも、プリアンド家とルライン家の繋がりかららしい。しかし、それ以上は何も知らないと言っていた。

 この話をより詳しく知っている人物で話してくれそうな人は…。


 翌日、街の人通りが少ない場所にあるカフェへと、とある人物を呼んでいた。その人物が待っている店へと私は向かった。指定された場所にその人物は座っていた。

「お待たせしました。ラランカ・メルビン様」

 私が向かった席に座っていたのは、私が今調べている事件の当事者の貴族の娘だ。

「あ、ルライン様。お待ちしておりました。先日はお茶会に招待していただきありがとうございました」

 ユリーナの姿が見えた途端、椅子から立ち上がりニコニコとしながら、私に挨拶をした。

 お茶会では分からなかったけど、この子可愛く笑うのね。

「是非ラランカ様にお会いしたかったんですげど、お茶会ではあまりお話が出来なかったので、こうしてお誘いさせていただきました」

 という口実で呼び出していた。

「私もルライン様とお話をして見たかったんです!」

 純粋な瞳で見られて少し罪悪感が湧き上がって来た。


 そうして2人で世間話をしたりして少し時間が経った頃、私は本題に乗り出した。

「ひとつラランカ様にお伺いしたいことがあるのですが」

「はい、なんなりと」

「…メルビン伯爵家と裏市場との関係についてなのですが」

「っ!」

 一瞬で暗い表情になった。やはりあまり触れられて欲しくない話題なのね。

「以前メルビン伯爵家が行なっていた販売企業で、裏市場との関わりがあったと伺っております」

「そのことがバレ、法に反する行いでそれ相当の処罰が下されるはずだったにも関わらず、何者かの手によってもみ消された。その何者かは誰かというと、プリアンド子爵家。子爵家によって多大な額が動いたと」

「…なぜそのことを…」

 ラランカは怯えて、声が震えている。

「ルライン家とプリアンド家が親戚同士なのはご存知で?」

「はい」

「プリアンド家をこれまで支えてきているのは、ルライン家なの、プリアンド家の行動などの報告は常に入るわ。でも、メルビン伯爵家との関係についてはあまり詳しい報告がないの。だから、メルビン伯爵家のご令嬢であるラランカ様なら、何か知っていることがあるのではないでしょうか」

「……プリアンド子爵家とは…」

 口を中々割ってくれないわね。それもそうね。実家の悪行について掘り返してほしくないものよね。でも…

「ラランカ様、この一件からラランカ様は、アリアラと行動を共にするようになったと把握しているのですが、それは正しいですか?」

「…はい、その時ぐらいからだと思います」

「アリアラに逆らえないのでしょう」

「っ! …あ…その…」

 家同士の関係のせいで、ラランカはアリアラに逆らえずにこき使われていた。でも未来では、告発があった後から2人は会うことはなくなったとは思うけど、彼女が知っていること、アリアラから何を聞かされているのか、知っておかないと。

「アリアラから酷い扱いをされているのではないのですか」

 まだ怯えている状態だけれど、やっと話しはじめてくれた。

「はい。その一件の後から、私はプリアンド子爵家にラランカ様の侍女として送り込まれまいた」

 侍女?伯爵家の令嬢が、子爵家の侍女に。そんなことがあったなんて。

「最初は、子爵家に父の過ちを揉み消していただいたことに感謝しておりました。侍女としての仕事も心より引き受けました。しかし、侍女の仕事とは思えないことをやらされたり、日々アリアラ様からの…体罰もございました…」

 酷い…。想像していたことよりも遥かに、酷いことをされていた。これは、告発者が誰なのかと探ることと同時に、彼女の救出も視野に入れるべきね。彼女の話を聞いてそんな感情も生まれ始めていた。

「メルビン伯爵にはこのことは」

 ラランカは、首を振った。

「言っていません。言えません。子爵家は我が家にとっては命の恩人でもあります。我が家がいけないことをしたのはちゃんと自覚しております。ちゃんと罰を受けるべきですが、父は罪から逃げることしか考えておりません」

「そうなのですね…」

 アリアラから彼女を引き離すことは簡単だけど、アリアラが黙ってはいないだろうし、彼女にとっての良い方法は何かないかしら。

「ユリーナ様、こんなことをあなた様にお願いをするのはご無礼ではあることは分かっていますが、どうか父の罪を認めさせ、どうか…アリアラ様から…解放されたいです」

 お願いする手が震えている。決して彼女が嘘を付いている様には見えないが、ここで直ぐに助けてしまっては駄目だ。

「ラランカ様、あなたを助けることは出来ますが、私も目的がございます。これからあなたを利用することになるかもしれませんが、宜しいですか」

「はい。構いません。ユリーナ様は、お優しい方だとお噂は聞いておりました。今日少しでもお話が出来て、それが本当なんだと分かりました。お力になれることがあるのでしたら、何でも仰ってくださいませ」

 悩む暇もなく、ラランカは直ぐに返事をした。

「そう、ありがとう。しかし、直ぐに今の状況からは救い出せないわ。まだ少しの間だけ待っていて貰えるかしら」

「もちろんでございます」


 ラランカとの話し合いはここまでにして、闇市場の話はまた別の日に聞くことにした。

 今日は、彼女の信用を得られたことでも良い収穫だった。

 彼女を先に帰らせた後、馬車が到着するまで少し大通りに出て、街で時間を過ごすことにした。


7話まで読んでいただきありがとうございます!

ラランカ・メルビン伯爵令嬢は、とても可愛らしい令嬢です。


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