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第5話 訪問者名簿

 

 ユリーナがルライン家に来てから数日が経った。

 アルデウスが、ユリーナが私の護衛騎士になった噂を聞き翌日にでもルライン家に来るのかと思っていたが、以外にも数日経った後にやって来たのだ。


「クリス様、本日は約束の日でもなく、何の伝達もない中のご訪問でとても驚きましたわ。何かお急ぎのご用でしょうか」

 訪問理由なんて分かりきっているが、少し嫌味っぽく言ってみた。しかしここには侍女のサラがいる、不仲だと勘付かれないために笑顔は忘れずにした。

 逆にアルデウスはとても険しい顔をしていた。

「すまないが、外してくれるか」

 アルデウスは侍女を部屋の外に出るように伝えた。

「で、説明してもらおうか」

「何がでしょうか」

「とぼけるな、分かっているんだろ。いい加減その愛想笑いもやめろ、もう侍女はいないんだ」

 そろそろ意地悪はやめておこうか。

「アルデウスがここへ来た理由は、ユリーナを護衛騎士にしたことを噂で聞いたのでしょう」

「ああそうだ」

 それ以外に理由はないわよね。ユリーナに近づくなと言われてすぐに、ユリーナを私の護衛騎士にしてしっまたのだから、アルデウスにとっては居ても立っても居られない様子ね。

「誤解しないように言うけど、ユリーナには本当に護衛をしてもらおうとは思っていないわ。ローリンス家当主にも、これは期間限定だと伝えているし、雇用ということではなく、あくまでローリンス家からの護衛任務として来てもらっているから、ユリーナには何も負担はかけないわ」

「俺が言っているのはそういうことではなくて」

 苛立ちからか、頭をくしゃっとしため息を吐いた。

「私がアルデウスの忠告を聞かなかっただけで、私はユリーナを傷つけるつもりはないわ」

「だとしても信用はできない」

 どんなに弁明しても、アルデウスはとことん私を疑ってくるのね。

「ユリーナをローリンス家にひとりで置いておく、マシでしょ」

「……」

 何も答えなくなった。アルデウスも同じことを思ったのだろう。

「…わかった。今回のことは見逃すが、もし彼女に何かあった時のことは…」

「わっかてるわ」

 ユリーナに対して過保護過ぎるというか…でも私も人のこと言えないか。まあでも一先ずは少しでも納得してくれたなら、それでいいわ。


 二人での話が終わり、私は応接室にユリーナを呼んだ。彼女の元気な姿をアルデウスに見せるついでに、二人で仲良くお話でもどうぞ、と伝え隣の部屋へと私は移った。

 ここの部屋には、ルライン家との関わりのある貴族や商人などの訪問履歴の資料が保管されている場所だ。そこで私はルライン家に来た貴族名簿に目を通した。特にユリーナに会いに来た人たちの名前を確認した。主に殿下や私の名前ばかりが記載されていた。たまに見かけない名前もちらほらと確認できた。ユリーナの親戚の方々の名前や、従兄弟の名前もあり、たまにお茶会も開いているみたいね。他にも目を通すと、宝石商人やドレスなども販売しに来ていた。

 この中から怪しい人物を何人か選別して、ユリーナとの関係性など調べていかないとね。

 あれ、この人は…ウィルナド・カッツェタ。カッツェタ伯爵の長男で、確か常にいろんなご令嬢との噂が流れて来ていたような…そんな人がなぜ。もしかして、次の標的がユリーナだとか!?いやいや、考えすぎか…ユリーナは、殿下の婚約者なんだし、手なんか出せないわよ。…でも確か、この人って未来で私に…

 何かを思い出そうと考えていると、隣の応接室に繋がる扉から叩く音がした。返事をするとユリーナが入って来た。

「もうアルデウスは帰られたわ」

 ああ、調べ物をしていたら気づかない内に結構時間が経っていたのね。

「アルデウスとはどうだった?」

 二人の様子を伺ってみることにした。

「久しぶりに楽しくお話が出来たわ。あとここでの生活はどうかと聞かれたの。でもここは元は私のお家だし、どうもなにもないわ、とても快適よって答えたわ」

 と、クスクスと笑いながらユリーナは話していた。アルデウスは、そういうつもりで聞いたんじゃないとは思うけど、まあいいか。楽しかったみたいだし。

 するとユリーナは私が机の上に開いていた名簿を見つけた。

「あれ?それは訪問者名簿かしら?そんな物を読んでいたの」

「あ…そうなの、ユリーナのフリをするなら関わりのある人たちのことも知っておこうかなと思って」

 慌てて言い訳をしたが、大丈夫だろうか。

「そうなのね。確かに知っておいて損はないかもしれないわね。何か知りたいことがあれば聞いてね」

「うん、ありがとう。早速なんだけど、この人のことで、従姉妹の…」

 私の言い訳でなんとか納得してくれたので、早速関係性について聞くことにした。

「ああ、従姉妹のアリアラね。彼女とは、親戚同士仲良くしてもらっているわ。私がお茶会を開く時にも、たまにだけど招待したことも何度かあるわ」

「そうなのね。ありがとう」

「ふふ、いいえ」

 彼女、アリアラ・プリアンド子爵令嬢は確か、未来ではユリーナとはあまり仲が良くなかったはず。プリアンド子爵家の脱税疑惑が告発により発覚して、地位を失っていた。そしてその告発者がルライン家の者だった。告発がどういった経緯だったのか知らないが、それ以降二人が会うことはなかったはずだ。しかし、ルライン家への逆恨みで暗殺を企んでいた可能性もある。一度、直接会って彼女がどんな人物なのか確認してみよう。


第5話まで読んでいただきありがとうございます!!


(つぶやき)

アルデウスは、久しぶりにユリーナと二人で話が出来て、さっきまでの苛立ちを忘れて楽しくお話を出来たそうです。良かったね。しかし、一体何を話していたんだか…

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