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第1話 赤い瞳を持つ者

 

「貴殿の罪は重罪だ。王太子殿下の婚約者であるユリーナ・ルライン伯爵令嬢の暗殺未遂。死んで償ってもらう」


 ここは王が住む王都、ファルナ王国だ。王都の中心部である広場にて、これから罪人への処刑が行われてようとしている。そう私は今、断頭台の上に立っている。私は幼馴染みであるアルデウス・エルディに殺されようとしている。剣を私の顔に突きつけ、鋭い赤い瞳で睨みつけている。


「違う!!私はユリーナを殺そうなんてしていないわ!信じて!」

「エステラ・ローリンス、見苦しいぞ。証拠はあるんだ。どんなに足掻いても無駄だ」

 親友であるユリーナを暗殺しようとした罪。ユリーナとはとても仲がよく、殺そうとなんて思うはずもないのに、なんで。

 足掻いても無駄なのは…そうね、誰も私の話に耳を傾けてくれようとしてくれない。


「思い残すことはもうないな」


 ああ、ユリーナごめんね、

 真犯人がまだいる状態でユリーナを護ることができないなんて。

 死ぬのなら、せめて犯人をみつけてからが良かったな。


 そう思うと同時にアルデウスの振り上げた剣が私の胸に突き刺された。


 ああ、これで私の人生は終わりなのね。


 ーーー


「っは!!」


 処刑されたはずの私は、気がつくと何処か微かに身に覚えのある部屋のベッドに上にいた。


 ここは…

 あれ?私殺されたのよね。ここはどこ?

 天国?いや、地獄?地獄にしては素敵なお部屋。

 状況を理解するためにベッドから降りて、部屋を見渡した。

 部屋の壁紙は白でシンプル。各場所には美しい花々がいくつか飾られていて、とても華やかな印象の部屋だ。そう私ここを知っているわ。ここの部屋は確か…ユリーナの…

 ふと目の前に鏡が見えた。鏡を覗いてみる。すると、


「え?」


 目の前にはユリーナの姿が映っていた。

 え?なんで、これは私よね?でも鏡には、ユリーナ…

 ああ、そっか。私、処刑されて変な夢でも見ているのね。そうやって無理やりにでもこの状況を理解しようとした直後、背後から女性の声がした。

「ユリーナお嬢様、朝食の支度が出来ております」

 驚いてすぐ様後ろを振り返ると、そこにはメイドの姿をした女性が立っていた。

「今、私をユリーナと呼んだ?」

「? はい、ユリーナお嬢様とお呼びさせていただきました」


 もう一度鏡を覗いてみる。


 ユリーナだ。それによく見ると少し若い?まさか、本当に私がユリーナに?

 はは、まさかね。これは悪い夢よ夢。


 ーーー


 美味しそうなごはんが目の前に並んでいる。


 味がするし、とても美味しい。夢だとしたら味がするなんて可笑しいよね…

 今は私が断頭台に立った日から恐らく、約2年前。ユリーナは19歳。これは現実…一度死んだと思ったら、巻き戻り、しかもユリーナになっている?…ダメだ頭が追いつかない。

 待って、私がユリーナなら、ユリーナ本人は…

 不意に侍女のサラが話しかけてきた。

「ユリーナお嬢様、この後のことなのですが…」

 侍女の話を遮るように、

「サラ!これからローリンス家に向かうわ!」

「え、今からでしょうか?…なりませんお嬢様。本日はカルロント王太子殿下がお見えになられる日になります」

 サラは困った表情を浮かべていた。

 カルロント王太子殿下。この国を収めているカルロント王の第一王子である、クリス・リア・カルロント。

 なんでこのタイミングで…ああ、そっか今日はあの日なのか。月に1回、カルロント王太子殿下は婚約者であるルライン家にやってきて、顔を合わせる約束事をしている。婚約者同士中を深め合うためだろう。それが今日その日だったらしい。断ることも出来ないし、でも早くローリンス家に行きたいのに…


 ーーー


「クリス様、お待たせしてすみません。支度にお時間が掛かってしまって。お元気でしたでしょうか」

「ユリーナ!久しぶりだな。気にすることじゃないよ。君を待つ時間もとても有意義だよ」

「ふふ、恐れ入ります」

 こんな感じで良かったかな。殿下に対するユリーナの対応を思い出しながら、殿下が待っている応接室に入っていった。

 殿下は私を見るなり、座っていた椅子から立ち上がり、凄く嬉しそうな顔をこちらに向けてきた。相変わらずとても綺麗な顔をしている。髪は光に当たると反射して美しい銀髪。鼻はスラッとしていて、誰もが虜になってしまいそうな、透き通った青色の瞳をしている。

 何を話したらいいんだろう。そうだ。

「クリス様、本日我が家自慢の庭園に美しい薔薇が咲きましたの。是非良かったら、一緒に見に行きませんか」

「ああ、そうだな。ここで話すよりも、たまには外に出て一緒に外を歩くのもいいな」

 よし。これで外で歩いている最中に足が疲れたと言って、すぐ解散する作戦でいこう。その後すぐに、ローリンス家に向かおう。


 二人はそのまま薔薇を見に、庭園へと向かった。


「ここ一ヶ月はどのように過ごしていたんだ?」

「そうですね、新しい本をいくつか購入したので、ずっと本ばかり読んでいたかな」

 そう、ユリーナは本と花が好きな愛らしい女の子。よく花に関する話をしたり、面白い本を私に紹介してくれていた。恐らくここ1ヶ月はそう過ごしていたであろう。

「クリス様は、いかがお過ごしでしたか?」

「私は、この1ヶ月君に会えなくてとても寂しくて、心を痛めていたさ」

 うん?ユリーナに会えなくて心を痛めていた?殿下ってそんな風に言う方だったかしら。婚約者の前だけは、こう気持ちを素直に表現したりするのね。知らなかったな。


「クリス様、あちらが我が家自慢の庭師が丹精込めて育てた薔薇ですわ」

 庭園の入口から3分ほど歩いた所に、色とりどりの美しい薔薇が道の両脇の花壇全面に咲いていて、まるで薔薇道のようだった。

「おお、これはなんと美しい。ここまで育てるのには、かなりの時間や労力が必要だっただろう」

 そう、ここの庭を仕切っている庭師はとても優しくて、花に対する愛が凄すぎる人。ユリーナを喜ばせたいと、いつも働いていた。私が遊びに来る度に、ユリーナに連れられて、よくこの庭園に来ては庭師から花の話を聞いていた。

 ユリーナにこの薔薇を見せたいな…

 あ、ユリーナ。そうよ早くローリンス家に向かわなければ。


「クリス様、すみません。久しぶりに外に出たもので、足が疲れてしまって…」

「え、そうなのか?すまない気づいてあげられなくて」

 とても悲しそうな顔をしている。少し申し訳ないことをしたかな。いや、今はそれよりも。

「いえ、私が庭園にお誘いしたんですから、クリス様はお気になさらないでください」

「ではすぐに戻るとするか」

 そう言うと殿下は私に腕を差し出した。エスコートしてくれるのね。私は罪悪感を持ちつつ感謝をしながら、殿下の腕に手を通した。屋敷に戻っている最中、ふと殿下曇った顔をしながら、話し始めた。

「エステラ・ローリンスのことなんだが…」

 突然どうしたのでしょうか。私が何?殿下は何を話そうとしているの。

「エステラがどうしたの?」

「……」

「彼女にはもう関わらないで欲しんだ」

 歩んでいた足を止めた。

 え?なんで急にそんなこと言うの?殿下は私と目を合わせようとしない。

「クリス様、理由を聞いてもいいでしょうか。なぜエステラとは関わってはいけないのですか」

「……」

 何か言いたそうにしているが、曇った顔のまま無言が続く。

 やっと重たい口が開いたかと思えば、

「彼女は…今後君のことを傷つけるんだ。君には辛い思いをして欲しくないんだ」

「クリス様、エステラがなぜそのようなことを?エステラが私を傷つけるという何か根拠があるのですか」

 落ち着いて私。殿下が急に意味のわからないことを言い出して、少し怒りを覚え始めていた。殿下は私のことをあまり良く思っていなかったのでしょうか。

 それよりも根拠とは何なのか知らないと。

「クリス様、お答えください。エステラは私の親友なんです。そんな彼女を理由もなしに、いきなり避けるようなことはできません。私はこの後、エステラに会いに行きます」

 少し攻め立てるように問い詰めてみた。すると殿下は焦ったよう表情をして

「ダメだ!!彼女は君を殺そうとしているんだ!あっ!!」

 つい口が滑ってしまったのか、殿下は慌てて自分の口を両手で覆った。

 え、殺そうとしている?私が、ユリーナを殺そうとしていることなんてデマに決まっているけれど、なぜ殿下がそれを。まさか…いやそんなまさかね。でも…もしかしたら…

 焦っている殿下に私は。

「クリス様、いえ……アルデウス…」

 そう言うと殿下はとても驚いた顔でこちらを見た。

「ユリーナ、なぜアルデウスと…」

 ビンゴだったかな。

「あなたはアルデウスなのですね」

 動揺を隠しきれないまま、冷静に話をしようといていた。

「なぜ私をアルデウスと呼ぶのだ。私はクリス・カルロント王太子殿下だ。アルデウスではない」

 いいえ、あなたはアルデウスよ。私がユリーナを殺そうとしていたという話を、今この時で知っているのは、私同様に未来から巻き戻っていて、私を犯人扱いしていた人物。殿下とユリーナは私の無罪を主張してくれていた。なら、思い浮かぶ人物は一人。

 または違う貴族の者かもしれないが、そうではなさそうね。

「アス…私はあなたの正体を知っているわ」

「っ…!?」

『アス』は、私たちが幼少期の頃から一緒に遊んでいた時に、私がそうアルデウスを呼んでいた名前。ユリーナ達と出会った頃には、もうその呼び方はしていなっか。だからこそ、ユリーナがその呼び方を知っているはずがない。これでアルデウスも私がユリーナではなく、エステラだと察したかしら。

「まさか…エスなのか…」

 暗い表情を浮かべている。下を向き頭を抱え始めた。

「いや、まさかな…はは、まさか…」

 状況が飲み込めていないことはわかった。でもそれは私も同じこと。私だってこんな現実受け入れたくないわ。でも、それよりももう一つ確認したいことが。

「アルデウス、あなたは私が断頭台に立って、あなたに殺されたことを知っているのね」

「…ああ、知っているさ。私が君の胸に剣を突き刺した」

 今度は居た堪れない表情を浮かべている。なぜあなたがそんな顔をするのよ。

 それよりも、私の他にも魂が入れ替わっていて、巻き戻る前の記憶を持ったままの人がいるなんて。もしかしてユリーナ達も以前の記憶を持っているのかしら。

「アルデウス、あなた殿下には会いに行ったの?恐らくあなたと入れ替わっているんじゃないの」

 アルデウスは肩を驚かせたように動かしてから、目線を下に下ろした。

「まさか、殿下に会いに行かずに、すぐここに来たの?」

「ああ、そうだ」

 呆れたわ。アルデウスはユリーナのことが昔から好きだったのは知っていた。婚約者がいるユリーナに対して、直接的に想いを告げることはなかった。殿下とも仲が良かったため、尚更想いを打ち明けることはしなかったんだと思う。だからこそ、殿下の姿になったアルデウスは、ユリーナに直接想いを告げられると思い、すぐ様ユリーナの元へとやって来たのだろう。

「確認するためにローリンス家に向かおうとしているのか」

「ええそうよ。私がユリーナの姿をしているなら、恐らくユリーナは私の姿をしているはずよ」

 アルデウスは少し考えことをしてから話し始めた。

「俺も一緒に行く」

「え?」

「お前がいつユリーナを襲うかわからないからな」

 まだ私を暗殺の犯人だと主張してくるのね。まあいいわ、それより今は一刻も早くユリーナに会いに行かなければ。


 ーーー



「着いたようだな」

 ローリンス家に到着した。そう言われて窓の外に目をやった。我が家だ。

 馬車の中では私たちはずっと無言だった。未来で私のことを殺したやつと同じ馬車に乗るなんて、居心地悪いわね。相手も何を考えているのか…



 ローリンス家

 代々王族の騎士団を率いている侯爵家。一族皆、幼少期の頃から剣の心得を得ている。もちろん私も同様だ。物心つく前から剣を握っていた。彼、エルディ家も騎士団の一員の侯爵家だ。ローリンス家とエルディ家は共に王族の騎士団として協力関係で、昔からの交流があった。それもあって幼少期の頃から、彼とは一緒に遊び、共に剣の鍛錬をしていた。

 いつからか互いに距離を取るようになっていた。



「お嬢様でしたら、只今御仕度をしておりますので、こちらでもうしばらくお待ちくださいませ」

 ローリンス家の侍女に応接室に案内された。

 スージー。私の専属の侍女だった。今の私はユリーナに見えるから、客人をもてなす対応だけをされた。以前は処刑される前の1ヶ月間は牢獄に閉じ込められていたから、スージーに会えなかったのよね。久々に会えたのに、寂しいものね。









初めまして、公しょうぶん(ハムしょうぶん)と申します。

読んでくださりありがとうございます!

物語を考えるのが好きで、今回初めて投稿させていただきました。

素人なので、表現が乏しかったり、内容がうまく纏まっていない部分や、可笑しな部分があると思います。

不定期になってしまうかもしれませんが、それでもこれからこの作品を投稿し続けようと思っておりますので、ぜひ良かった続きも読んでくださいましら、幸いです。

よろしくお願い致します。

(1話目から長くなってしまいました…すみません)


参考に登場人物

主人公 エステラ・ローリンス侯爵令嬢

主人公の幼馴染 アルデウス・エルディ侯爵

主人公の親友・王太子殿下の婚約者 ユリーナ・ルライン伯爵令嬢

王国の第一王子 クリス・リア・カルロント王太子殿下

エステラの侍女 スージー

ユリーナの侍女 サラ


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