合同練習
合同練習はダンサーの練習場に移動し、ダンサーと一緒にバテリア全体が指揮者のヂレトールの指揮のもと、演奏する練習だ。
特に大きな音のスルドがずれていると全体に影響が出てしまうので、ある程度演奏ができるようになるまではリズムの基礎基本を学ぶ目的で、どの楽器奏者もまずはガンザというシェイカーで参加している。わたしも前に出たエンサイオではそうだった。
今日はほまれさんが認めてくれた。
ほまれさんはこのチーム内では新参者だが、バテリアのリーダーとヂレトールに話をつけに行ってくれて、わたしが合同でスルドを演奏する許可を取ってくれた。
ほまれさんはゆったりした雰囲気だけど、意外(と言ったら失礼だよね)と頼れる先輩といった感じも持っていた。
「ほまれさん、ありがとうございます! 本当は本人がちゃんとお願いしにいかなきゃだめだよね」
「気にしないで。この場合は本人が行くと自己主張にもなっちゃうよね。やる気はアピールできるけど、技術力に伴う可否判断は他者の方が良いから、私が言って良かったんだよ」
それよりもーー。
ほまれさんがそう呟いて深刻な表情をつくったからなにかと思ったら、
「いのりの呼び方がいのりちゃんなのに、歳下の私の呼び方がさん付けって違和感あるなぁ」
え。まあ、そういうものか。
「まあ私も先輩にいつまでも敬語が抜けなくて距離感あるなんて言われてて、人のことは言えないのだけれど、もし呼びにくいとかなければ、もっと気軽な呼び方にしてもらえると嬉しいな」
「じゃあ、ほまれちゃん?」
「うん、それでいこう。マレと同じ呼ばれ方だから、ちょっと不思議な感じする―」
ころころと笑っているほまれちゃん。今日初めて会ったばかりなのに、柔らかい雰囲気のお姉さんに見えたり、頼れる先輩に見えたり、教え方の上手な先生に見えたり、今は幼い女の子のようにも見えた。
なるほど、魅力的な人だ。マレが慕うのもわかる気がする。
合同練習は始まってしまえばバテリアの大音量で指導などはできない。
数曲通しで演奏し、少し休憩や打ち合わせの時間が入る。会話ができるとしたらそのタイミングだ。
口頭で教えてもらうことはできないので、ほまれちゃんの動きをよく見ながら、それ以上にヂレをよく見て、プリメイラとセグンダの音に集中しながら、長丁場の演奏に臨んだ。
わたしの志望はテルセイラだが、まだ複雑なことはできないし、ヂレが出すサインも理解していない。
あくまでもサンバの基礎となるリズムを、崩さないように打ち続けることに終始した。
一定のリズムを打っているだけでも、長いと時折ずれそうになる。それは集中力の問題だ。
もうひとつ、単純に筋肉の疲れと体力的な疲れの肉体的な問題も起こってくる。
長くなればなるほど心身ともに摩耗するのだから、終盤こそが地力が問われる場面となる。
精神も肉体も、基礎トレーニングで鍛え上げるしかないから、これは恒常的な課題だ。




