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吹きあふれこぼれ落ちて

 わたしたちはやっぱり双子だ。

 ぶつかるなら同じ力でぶつかり合う。相手が引かないなら自分も引かない。


 その行き着く先が破滅しかないと分かっていても。


「ふたりとも、何を騒いでるんだ」


 だからこの声は、最後の砦となってくれた。

 食事のあと一度店に行っていたおばあちゃんがいつの間にか家に戻り、わたしたちの部屋のある二階まで上がってきていた。


「だって!」「マレがっ!」


 同時に口を開いたわたしたちをひと睨みで黙らせるおばあちゃん。

 おばあちゃんが本気で怒ると、職人気質の塊のようなおじいちゃんの百倍怖い。



「ほんと、ふたりともそっくりだね。さすが一卵性双生児だ。まずは順番に話を聴こうじゃないか。どっちが話す? 決められないならじゃんけんでもするかい?」



「……いいよ、のんが話しなよ」



「ん……大きい音して、心配して声かけたら喧嘩になったの……」



 売り言葉に買い言葉を重ねた結果だということはわかっている。


 ひどいこと言われた。未だにショックだし悲しくて悔しくて、怒りを維持していないと多分涙が出てしまう。

 だけど、ひどいことを言った自覚もある。ここで事細かく話して、わたしが放った言葉の刃で、もう一度マレを傷つけることになるのは避けたいと思った。



「声を掛けただけでかい?」



「びっくりしたから、思わずいきなり扉開けちゃって、それで怒鳴られたから、わたしもムっとしちゃって……」



「そうか。他に言いたいことは?」



 わたしは首を横に振った。



「マレ」


 おばあちゃんはマレの言葉を促す。



「わたしが大きい音出して、のぞみを怒鳴りつけて……あと、侮辱するようなこと言った……」



「どうしてそんなことを言ったか、言えるかい?」



「............」



 俯くマレ。おばあちゃんは急かすような素振りは見せない。



「わたしっ……頑張ってたのに!」



 やがて口を開いたマレは、くしゃくしゃの顔で涙に塗れていた。



「色んなもの捨てて! 諦めて! そこまでしていたのに、踊れなくて。もう、踊れなくなっちゃったらどうしようって……今も。今だって、きっとみんな……」



 質問には回答していないマレが話し終えるのを待ちながら、おばあちゃんは扉の近くに落ちていたトゥシューズを見ていた。



「シューズ、投げたのかい?」



「トゥシューズは潰さなきゃいけないの。だからハンマーで叩いてたんだけど……ゴムとリボンも縫わなきゃならないのにソーイングセットは見つかんないし、ほぐしてもどうせ履けないしって思ったらなんか頭に血が上っちゃって、気が付いたら投げつけてた」



「マレ。道具はな」



「わかってるよっ! 道具を大切にしない人は一流にはなれないんでしょ? 大切にしてるよ。大切にしてたよ! それなのに、こんなっ……それに、トゥシューズは潰さなきゃいけないんだから、壁にぶつけたって良いんだよ」



「……それは正しい潰し方かい?」



「そういう潰し方をするダンサーはいるよ」



 おばあちゃんが問いたいことはそういうことではない。



「……正しくない、です。やり方がというより、目的が。わたしは道具に八つ当たりした。のんにも」



「焦らなくて良い、なんて言っては無理を強いることになるか?」



「わたし、どうしたら良いかわかんない!

練習できなくても現地で学べることはある。同じ空気に身を浸しておくことだって重要だと思う! 離れる時間が長ければ長いほど錆ついちゃうよ……!」



 おばあちゃんは黙ってマレを見ている。

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