ふたご
服や小物、雑貨など一通り買い終えた後は、本屋や楽器屋をのぞきつつ、アミューズメント施設でも遊んだ。
雑談の中で、マレはSNSは割とやっていると言った話があった。動画の発信などが中心で、情報の収集にはあまり積極的ではないようだ。
ミームやネット発の流行など、マレはあまり認識していなかった。
「わ、モモンガだ!」
わたしが好きなキャラクターのぬいぐるみを見つけて声を上げても、マレはピンと来ていない顔をしている。
「え、モモンガってムササビみたいなやつだよね? あれが? モモンガ?」
「知らない?」
「はじめてみた」
「えー、結構人気なんだよ」
「このモモンガが?」
「いや、これはあんまり。わたしは好きなんだけどね。この世界というか物語が人気なんだよ。あのネズミとネコとうさぎは人気だよ」
「え、どれがネズミでどれがネコ?」
「青い方がネコだよ」
「ネコで青って、ドラえもんじゃん」
「ちがうから!」
「まあ見てたら何となくかわいくなってきた」
「あー、モモンガ獲れそう。やろー」
「えっ、こういうのって獲れるもんなの?」
「そりゃー、簡単ではないけど不可能な設定にはなってないよ」
「え、そーなんだ。パチンコとかといっしょで絶対獲れないのかと思った」
「パチンコだって絶対負けるわけじゃないからね?」
「そーなの? 屋台のクジは?」
「あー、あれはあやしーね。でも最近は景品表示法とかコンプラとかユーチューバーが買い占めて検証しに来たりとかいろいろあるらしいからインチキは無いんじゃないかなぁ」
言いながらレバーを操作し、モモンガの端の方にアームが引っかかるように調整する。
「位置全然違うじゃん。もっと真ん中に寄せないと」
「いーのいーの。良いから見てて」
アームがぬいぐるみの端っこを持ち上げ、ぬいぐるみ全体は持ち上がらないままアームが景品を落とす穴の下まで移動する。
その移動の力を使い、ぬいぐるみが地に着いた部分を支点にして、持ち上がった部分が反転し一気に落とし口に身体の半分以上が乗り上げる形になった。
もう一度、今度は持ち上がらなかった方の端を狙いアームを落とす。すると、そちらが持ち上がった途端落とし口に乗り上げていた側が滑り落ちるように落とし口に落ちていった。
「やたー!」
「うわうわうわ! すごいすごい!」
結構クールなマレにしては珍しく興奮している。
「青いのかわいいって言ってたよね。マレにも獲ってあげる」
「えっ、ほんと⁉︎ あれだよね? 獲れるの?」
「たぶんいける!」
それも、一撃で。
といったわたしを、マレは羨望の眼差しで見ていた。こんなことでもマレに認められるのは嬉しかった。
だから、外すわけにはいかない!
気合いと集中が実ったのか、見事マレの分も獲得できた。
「わー! わーっ! すごいっ! うれしい! えー、かわいー!!」
その世界の登場キャラクターたちような喜び方をしているマレが微笑ましくて、わたしも嬉しくなった。
ふたりはアミューズメントで獲得したぬいぐるみを入れた袋と買い物袋を抱えて同じ家へと帰っていく。
お互いで買った服は、シェアし合おうよと約束しながら。
多少体格は違っているがやっぱり双子だから大きな差異は無い。
しゃべりながら横を歩く笑顔は鏡合せのようで。
生き写しのような姉妹が存在していることを、わたしはとても嬉しいと思ったんだ。
でもわたしは、見た目が同じ双子の、表層しか見てなかった。
その裡に何を抱えていたかなんて、何も理解していなかった。




