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【幕間】 マレ 〜手に入れたもの〜

 手放したものなどまだまだいくらでもあった。



 テレビなどは世界情勢など知っておいていた方が良いとの観点でニュースくらいは観るようにしている。それ以外はそんな時間があるならバレエの動画を観る時間にしている。



 友だちとの時間、はどう見積もっても潤沢に取れそうには無かった。

 学校なら昼食や行事等でおしゃべりするくらい。

 あとは同じバレエ教室に通う練習生同士でおしゃべりをすることもある。が、どうしてもそのメンツではバレエの話が中心になる。



 趣味や遊び。いわゆる余暇と呼ばれる時間に過ごすような行為はわたしの人生からは失われていった。



 だけどそれは、得るべきものを得るために、自らが選んだ選択肢。



 積極的な選択の末の結果のそれらとはやや趣が異なるのが、結果としてただ疎遠になっていった妹だった。



 人との交流は最低限にせざるをえなかった。

 最低限にするにあたり、友人や同居する家族の中で最も交流機会が少なくなったのは、相談や送迎の発生しない妹だった。




 同じ意味を持つ名を与えられた同じ遺伝子を持つ一卵性双生児の妹。



 自らの意思でそうなったのではなく、結果そうなっただけの妹との関係性については、損なわれていくことに一抹の寂しさはあった。では、どうにかできるのかと問われれば、そこに割ける時間も余力もなかったことは事実。ならばその結果も甘んじて受けなくてはならないものなのだと、自分に言い聞かせた。



 一時は魂すら、同じものを宿しているとさえ思えたはずの片割れとは、全く異なる人生を歩むことになった。




 多くの人にとって、当たり前に持っているものや大切なもの。

 それを捨ててまでして得られたのは、数多のコンテストにて勝ち取ったトロフィー。そして、バレエの本場のひとつイギリスのバレエスクールへの進学の権利と奨学金。



 捨てたものと得たもののバランスに関する評価は価値観で変わる。



 とても大切なものを手放していると思っているが、それでも後悔は無い。

 どうしても得たかったものが得られている、それだけでも僥倖だ。

 私と同じかそれ以上のものを投げ打って、それでも届かなかった人たちだって何人も見ている。その悔し涙も。そして、その道を諦めた姿も。



 誰にとって何が大切なのか。それはその人の価値観で変わる。

 だから比べても仕方がないし、ひとの在り方にモノを言う権利も必要もないのは重々わかっているのだが……。


 かつて、ひとつの場所にあったふたつの魂。


 今は同じ姿を持った、別々の道を征く姉妹という関係性の他人。

 わたしの生き方はだれにもとやかく言われたくないのであれば、わたしが誰かの人生をとやかく言う筋合いはないが、どうしても気になってしまうのは、やはり同じ遺伝子を持った片割れに対してのこだわりだろうか。



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