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いのりちゃんの提案

 さて。もう少し蕎麦の話聴いてもらいたいけど、それだけでこの時間を終わらせてはならない。



「いのりちゃん、配信とかもやってるよね? 止まってたのは入院したりブラジルいったりしてたのが理由なんだよね? ってことは戻ってきたから再開する?」



 友だちがいのりちゃんの動画を楽しみにしていることや、自分たちでも配信したいなんて話が出ていることを伝えた。その暁にはコラボりたいなんていっていることも。



「あー、そういうのも面白いねぇ。……あ、コラボも良いけど、一緒にやるとかもありじゃない?」



 やる? とは? え、一緒に……?


「のんちゃんも観てくれたんだよね? そしたら知ってるかもしれないけど、いくつかの企画を並列してやってるのね。その中で音楽系のが中心で、最近はサンバの打楽器メインなんだよねー」


 知らなかった。いや、打楽器の動画は見た。ササたちに教えてもらったとき、古いものからさーっと見ていて、吹奏楽のコンテンツが多かったから、なんとなく同じ感じだと思っていた。


 サンバ? さきほどめがみちゃんからも出てきたワードだ。

 全くイメージが湧かないが、動画で大きな太鼓を演奏していたいのりちゃんは絵になっていた。

 ああいうものなら決して似合わない趣味ではないのかもしれない。



 一緒にやるって、動画を? それとも、太鼓を? サンバを?



「サンバ関係で動くことも多いから、一緒にやってくれるならその流れでごはん行ったり遊んだりもできるし。がんちゃんも一緒だから、楽しいよ」


 ね、と妹に振っている。めがみちゃんの方も「うん、ふたりともスルドって言う楽器やってて、すごく大きな音が出て面白いんだよ」と微笑んでいる。

 心臓に響く音を身体に受けると、なにやら奮い立ってくるらしい。それを自ら出していると思うと興奮するのだとか。


 打楽器やサンバという音楽に興味があったわけではないが、楽しそうな二人をみていると少し気になった。

 それに興味の有無よりも、単純にいのりちゃんと一緒に何かやれるというのはそそられる。めがみちゃんとも、まあ、もっと仲良くなれるならそれに越したことはないし。



 少し肯定的なそぶりを見せると、いのりちゃんとめがみちゃんは口々にサンバの魅力を教えてくれた。


 音楽的、文化的な面白さももちろんあるのだろうけど、どちらかと言えばイベントでの体験・体感した興奮についての語りが多い。


 曰く、何者でもない自分であるのに、その場に在っては主役のようであり。

 だけど、花形であるダンサーを躍らせる一見裏方のようであり。

 その実パフォーマンスの土台を担っている縁の下の力持ち的ないぶし銀の魅力があり。



 自分が特別ななにかになれたような感覚は単純に気持ちが良さそうだと思った。


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