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擦り合わせ

 めがみちゃんから聴いた話。今目の前でやり取りしている印象。


 よく言えば行動的ないのりちゃんは、わたしの感覚で大枠でとらえれば、やっぱり素敵なお姉さんだった。



 華やかで柔らかな雰囲気。雰囲気通りの落ち着いていて優し気な物腰、物言い。

 でも、妹に見せている姿はちょっとお茶目。

 仲の良い相手には見せる姿なのだろうか。それもまた可愛らしくて親近感が湧く。



「のんちゃんちお蕎麦屋さんだったよね? お蕎麦屋さんには少し前くらいまで年に何回か行ってたけど、その頃にはのんちゃんは引っ越ししてたんだよね。のんちゃんがお引越ししても年賀状とか送ってたのに途絶えちゃってたね。ごめんね。でも、こうやってまた縁が結べて嬉しいなぁ」



 わたしに向けた笑顔にあの頃の面影が重なる。

 正確には当時住んでいた家屋は蕎麦屋では無かったが、おおよそ「蕎麦屋さんの子」として認識されていたのだろう。

 覚えてもらえていたことが、単純に嬉しかった。



「がんちゃん、先輩じゃん。どう? ちゃんと頼れる先輩?」



 いのりちゃんはがんちゃんをちょっと冷やかしながら、わたしにめがみちゃんの様子を尋ねた。めがみちゃんは「余計な質問しないで」と嫌そうな顔をしている。



「めがみちゃん、ちゃんと教えてくれてますよ。優しいし困ったときとか助けてくれて頼りになります。それに、昔わたしが名前いじったことを謝ったら気にしてないって言ってくれました」


 他人行儀な話し方、本当は嫌だな。とは思うが、さすがにわたしにも少しくらいは分別もある。


「へーぇ、立派だねぇ」


「なんかバカにされてる感じがしていや!」


「そんなことないのにー」



 うーん、わたし、姉妹のいちゃつきに利用されてる?



「のんちゃんは高校でこっち戻ってきたんだよね。なんか部活とかやってる?」



 世間話を続け、話を振ってくれるいのりちゃん。こうやって少しずつ場をほぐしているのだろう。



「部活やってないです。バイトがんばろうと思って」


「そうなんだ。何か目標とかあるの?」


「いえ、部活してないのも遊びたいだけで。遊びたいのでお金が必要でバイトはじめたって感じです」


「あはは、高校生って世界広がるもんねぇ。遊びたいよねー。お金だって必要だし、うん、わかるわかる」


「あ、でもお金稼ぐ目標じゃないけど、目標みたいなのはちょっとあって。おばあちゃんみたいになりたいなって」


 いや、言葉足らずか! これじゃあ、早く年を取りたいみたいじゃない。

 それにおばあちゃんのことは「祖母」って言わないと。でも面接でもないのにそれも固いか?



 そんな懸念も杞憂で、いのりちゃんはわたしが言いたかったことを理解してくれていた。



「のんちゃんのおばあさんはおじいさんと一緒にお蕎麦屋さんやってるんだったよね? お蕎麦屋さんになりたくて飲食業界で修業とか?」


「そこまで具体的になりたいものがあるってわけじゃなくて。お蕎麦屋さんは実際には作ってるのはおじいちゃんだし、お弟子さんを育ててるのもおじいちゃんで、職人って意味ではおじいちゃんが蕎麦屋なんだけど、おばあちゃんっておじいちゃんも含めたお蕎麦屋さん全体をなんていうの? びしっと仕切ってるみたいで格好良いんです」


 一般的には腕の良い職人のおじいちゃんの方が、「仕事人」とか「プロフェッショナル」って感じで格好良いのだと思う。

 おばあちゃんの格好良さは、なんて言ったら伝わるだろう。上手い表現が見つからないな。「誰々みたいな」と言えればわかりやすいのかもしれないが、俳優やキャラクターなどの知識を探っても、ちょっと見つからない。うつくしい人、若々しい人、かわいい人はいるけど、うちのおばあちゃんは、なんていうか、......あ!


「凜として! るんです、うちのおばあちゃん」


 良い言葉あった!


 いのりちゃんは微笑んでいる。

「素敵なおばあちゃんなんだね。お店でお見かけしたことも、多分声をかけていただいたこともあったかなぁ。なんとなく覚えてる。のんちゃんの言ってることもわかる気がする」


 伝わったようで嬉しい。

 いのりちゃんには不思議な魅力がある。

 一生懸命説明したり伝えたりして、それで微笑んでもらえると、なんだかご褒美をもらえたような気持ちになった。

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