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【幕間】 祷の空白7

 入院や手術の病棟は、検査のために訪れた病棟とはまた別に、同じ市内ながら少し離れた場所にあった。


 入院当日、祷は父親の運転する車に乗って出かけて行った。

 結局願子へは、入院に関する要点は伝えられても細かくは語られないまま。



 入院の初日は説明や検査で慌ただしいと母親から聞かされていた願子は、翌日姉のお見舞いに病室を訪ねた。


 祷はうとうとしていたが妹の来訪を喜び、起き上がろうとした。

 願子はそれを制し、「邪魔してごめんね、寝てて良いよ」と姉を気遣った。



 寝息を立て始めた姉を、願子はしばらく見つめていた。



 普段だったら、多分眠らずに対応してくれただろうと願子は思った。


 それでも眠ってしまったということは、余程眠かったのだろう。

 その原因は、それだけ疲れていたからなのか、それほどまでに体調が思わしくないからなのか。



 安らかな顔をしている姉へ、起こさないように気を付けながらも、願子は語り始めた。



 今のサンバチームの状況。チームが取り組んでいること……祷が手掛けていた計画のこと。



 願子が祷の入院を知らされたのは直前だったが、祷が入院を決めてから実際の入院までには一カ月程度の期間があった。

 祷としては入院と手術は最短で消化しておきたい用件だったが、空きベッドなど病院側の物理的な都合と、事前に何回か実施する検査や、血液の抗凝固薬を服用するための期間が必要だった。


 その間は基本的には日常生活に影響はないが、サンバ及び『ソルエス』に関する活動については、チーム代表の治樹より固く禁じられていた。

 放っておけば行動してしまうと思われたため、治樹は強めに伝えたのだとか。


 さすがに祷も素直に従い、同じ年齢でウマが合い、良く行動を共にしていたダンサーの穂積(ほづみ)にいくつかの計画を引き継ぎ、退院し落ち着くまでは日常生活や学校生活にとって必須な項目以外は、なるべく身体を休める時期として過ごすことになっていた。

 このことも、後に知らされた願子は腹を立てていた。

 なんで自分には頼ってくれなかったのかと。そんなに信頼できないのかと。


 もちろん、祷にはそのような意図はなく、祷もまた、願子の特性や能力を認めていたが、祷には合理に寄り過ぎている部分があった。

 推進していた計画においては、最適だったのは穂積に任せることだった。そこには心情的な配慮が入り込む余地を加味してはいない。

 妹の気持ちを考えれば、願子をその計画に絡ませるのは適した選択になり得たはずだが、あくまでも合理性のみを追求すれば、ここでの選択肢は穂積となる。ただそれだけの判断で下された決断だった。


 その考え方を含め、後の願子は姉を怒り、叱るのだった。

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