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【幕間】 祷の空白5

 さて、この患者は……。


 医師は患者のリアクションを待った。

 医師の見立ては、おおよそ的を得ていた。



 強い意志と意識を以て形成された即断と独断の気質の持ち主だとしたら難しいかもしれないとの可能性も捨てきれず、念のために用意しておいた家族の同席を促す説得材料。医師の備えは使わずに済んだ。

 祷はあっけなく「症状や状況、手術の内容や同意書のことはあらかじめ親に伝えておきますが、先生に直接説明していただけるよう親と日程を調整します」と素直に応じた。

 医師は、説得をしなくて済んだということよりも、即断即決の決断力の持ち主に、素直さも備わっていたことに安心感を得た。

 この患者とならば、真摯に向き合えば相応の応えをくれるだろう。


 言い方が正しいかはわからないが、扱いやすい良い患者とは、信頼関係が築きやすく、結果として良い治療ができることが多い。



 患者に対して親身になるべきだとか、患者と一緒になって感情的にならずにドライな方が良いとか、医師の在り方を問う声は両極端だが、この医者は患者との距離の取り方という切り口を敢えて考えず、「論理的で丁寧でわかりやすい」ことを旨としていた。主治医となる医師のそんな身の置き方を、その説明の仕方や順序などから読み取っていた祷は、医師に対して一定の信頼感を得ていた。


 医師の方も、頭の回転が速く、感情は安定していて、素直な患者を、扱いやすく手が掛からないと評価し、だからそれなりの対応で良い、ということではなく、手が掛からない分回せる労力を回してあげるべき患者という風に捉えていた。



 この病院は心臓手術に関し国内でも有数の実績のある病院だった。

 通える地域にそのような病院があったことは幸運と言えた。

 そして、主治医はその病院の中で豊富な実績を持つ、心臓病の権威だった。


 名医の施術を受けられる幸運に恵まれた祷だったが、地方からこの病院での治療を求めて訪れる患者もいるくらいなので、予約は取りにくい。

 父親は仕事があるのでそもそも無理だとして、主婦の母親の予定は調整つけられるだろうと、なるべく早いタイミングで予約を取った。




 手術は大掛かりではないため短時間で終わる。入院は必要だが日数は相応だ。手術の成功率は極めて高く、成功により根治となるため病院に通う必要は無い。

 基本短い付き合いとなる予定だが、病気の治癒という同じ目的を持った医師と患者として、まずまずの関係性を以てスタートを切れたと言って良いだろう。

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