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【幕間】 祷の空白4

 医者は説明の流れで治療名は伝えたが、具体的な術式の説明はこれからだった。


 にもかかわらず、即断した患者に、これから具体的な説明をするのでよく考えるよう伝え、家族と話し合うよう促した。



 この症状には、カテーテルアブレーション治療で対応することになる。


 医療に関する知識の無い者が、「心臓病の手術」と言葉だけを聞けば、身体を開く大手術を想像されることもあるだろう。

 しかし祷は、考える素振りも迷う様子も見せず、手術を選んだ。

 医者の言った治療名を知識として知っていたか、カテーテルという単語から、切る手術ではないと判断したのか。

 それとも、大手術であったとしてもする場合としない場合のリスクの評価と判断を素早く実行し、結論を出したのかもしれない。



「具体的な説明をしますね。結論は改めて出していただいて結構です。また、ご家族の同意も必要になりますので、書類だけでも結構なのですが……」


 できれば説明に立ち会って説明を受けてくれた方が良い。

 手術前にも家族を伴う説明があるが、まだ学生で親元にいる患者だ。頭の回転が速く決断力に富んでいる印象の患者ではあるが、家族とは状況を共有してもらいたい。

 それに、これはすべての手術に言えることだが、どんな手術でもリスクがある。万が一のことを家族に伝えないわけにはいかないのだ。




 医師は果断な性質を持っている患者は、独断の気があると考えていた。


 家族に対してなんらかの事情があるのか性格なのかはそれぞれあるが、基本姿勢として「独りで立っている」。

 頼らない、頼れない、頼りたくない、頼るという概念がない……理由は様々あれど、「可能なら」「どうしても譲れないこだわりではないのなら」、家族でも親族でも、誰かを伴ってもらいたかった。

 病気と闘うのは患者自身だが、病気との戦いは孤独ではないのだから。


 それに、医者側の立場としては万が一に備える必要があった。丁寧な説明と、都度都度の合意形成を患者の家族や親族と構築しておくことで、万が一の際に医師自身と病院を守ることができる可能性が高くなる。などと思うことは利己的にも捉えられそうだが、少なくとも誤解によって悲しみや怒りを親族に与え、訴訟などのリスクを医者や病院が被るのはお互いに不幸だ。


 だから医者は、どんな患者であれできるだけ丁寧に説明したいと考えていたし、できるだけあらゆる段階で家族と同席を、難しければ情報の共有をしてもらいたいと望んでいた。


 様子を伺うに、医師には祷に家族に特段共有できない、ないしはしたくない事情があるようには見えなかった。

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