姫田祷
バイトが終わって、バイト先のファミレスでお客様として入る。めがみちゃんも一緒だ。
いのりちゃんに会いたいという願いを、めがみちゃんが整えてくれた。
バイト終わりにファミレスで食事をしながら会って、そのまま車で送ってくれるというのだ。食事もご馳走してくれるとのこと。
先日の中華系ファミレスに続いてのことだから、ちょっとファミレス率高いなと思わなくもないが、移動する必要ないしなんでも揃ってるし美味しいし、効率が良い。
会いたいという要望に応えてもらった側なのに、ご馳走になり送ってもらうなんてちょっと図々しすぎると思ったが、めがみちゃんは「ペナルティなんだから遠慮しなくて良いよ。高いのいっぱい食べようよ」と強気な発言をしながら笑っている。
いのりちゃんは未だ来ていないが、ボックス席で横並びに座った私たちはメニューを顔を寄せ合って見ながら、先にいろいろと注文しておいた。
バイトの特権で賄いで食べさせてもらったメニューも多いが、試してみたいまだ食べたことの無いメニューも多い。そういう料理を中心に選んだ。
「祷来る前にたくさん届いたら、テーブルにお皿いっぱい並べておこう! 祷驚くかなぁ」
楽しそうなめがみちゃん。無邪気だな。
でも、驚くいのりちゃんはちょっと見てみたいと思い、私もめがみちゃんと一緒になって含み笑いをした。
ドリンクバーを取っているうちにオニオンスープとコーンスープが届けられた。
今いるバイト仲間はシフトの関係であまり被らない人たちだったが、それでも顔はわかるし話をしたこともある。
なんとなく気まずいかなって思ったが、別にそんなことも無く、続くサラダやシャカシャカポテトなども、当たり前のように提供され、当たり前のように受け取った。
ポーク盛り合わせ、ナスとほうれん草のおろし合え、エビフライ、と、順調にテーブルを皿が埋めていく。
それぞれが頼んだメイン料理の玉ねぎソースのスープハンバーグとグラタン風ハンバーグが届いたとき、
「わ、パーティーみたい! 賑やかで良いね」
いのりちゃんが到着した。
にこやかに言いながら私たちの向かいに座り、スプリングコートと鞄をソファーの端にまとめながら「私は何にしようかなー」とタッチパネルを操作して早速注文をしていた。
わたしたちのいのりちゃんを驚かせようという目論見はあまり効果を発揮しなかったようだ。
いのりちゃんはわたしたちふたりがかりで頼んだボリュームに匹敵するくらいの品を注文し、「シェアしよー」なんて言っている。
むしろわたしたちの方が驚いてしまった。サイドメニュー、ほぼコンプリートしてしまうのではないだろうか。
「こんばんは。今日は会ってくれてありがとうございます。いのりちゃん、わたしのこと覚えてる?」
注文がひと段落したのを見計らって、改めて挨拶をする。
「もちろん! のんちゃんでしょ? 小さい頃遊んだよねー。花火大戦おもしろかったなぁ。わたしたちの陣営がロケット花火弾幕を張っている中、のんちゃんドラゴン花火直接持って突っ込んできたじゃない? ハリウッド映画の主人公みたいだったよねぇ」
よく覚えている。
その後その遊びが大人にばれて、全員こっぴどく怒られた。
いのりちゃんはみんなをかばおうとしていたけど、関係なく全員こっぴどく怒られた。
あれだけ大勢の子どもがいたのだ。
幼い頃のほんのひと時一緒に遊んだだけのわたしを、おそらくは覚えていないだろうと思っていた。覚えていなくったって話を合わせることくらいはできる。
相手を傷つけないよう「覚えている」とははっきり言いつつも、具体的なところは何となくで話すのだ。わたしだってやったことある。
今回はわたしと会うことは前以てめがみちゃんから聞かされているはずだ。事前にわかっていれば調べることだってできる。覚えているふりをすることなんて簡単だ。
でも、いのりちゃんは多分、本当に覚えているような気がした。




