表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/217

めがみちゃんの理由

「めがみちゃんはなんでバイトしてるの? 欲しいものあるとか?」


 まずは世間話。幼馴染且つ偶然同じバイト先で再開したという間柄だ。まずはバイトの話がしやすい。

 おうちがお金持ちなのになんで働いているの? なんて意図はこもっていない。


「欲しいものはそんなにないんだけど、友だちと旅行いきたいかなぁ。……あ、あとバイクの免許とか、免許取ったらバイクかスクーター欲しいなって、なんとなく思ってる」

 教習所に行くとか、具体的な行動はしてないんだけどね、と照れたように笑っているめがみちゃん。


 うーん、ゆるい。


 小柄で、幼く見えるめがみちゃんからバイクという言葉が出たのは意外だったが、本気度はいかほどだろうか。少なくともまだ具体的には動いていないらしい。お嬢さんの気まぐれな興味かもしれない。



「その感じだと、バイトを始めたきっかけが具体的に欲しいものがあるからってことじゃないんだね。社会勉強とか?」



 そういう動機はありそうだなと思った。

 子どもが親のすねをかじることを許すタイプでなければ、お金持ちの家庭はどちらかといえば庶民よりも教育はしっかりとしているイメージがある。敢えて社会勉強やお金を稼ぐことの意義、大変さなどを実感させるためにバイトを強いるなんてこともありそうだ。


 わたしも家がお金持ちってわけではないが、お金に困ってとか、欲しいものがあるという理由ではなく、部活などやりたいことが特に見つからない中で、なんとなく湧いた「働いてみたい」という気持ちがバイトをしようと思ったきっかけだ。

 めがみちゃんも同じような動機だったら好感が持てるなと思ったが、答えはまたしても予想の範囲を外れた内容だった。



「元々は、ね。高校を卒業したらすぐに家を出ようと思ってて。その資金を貯めたくでバイトはじめたの」



 その表情は笑顔のままだが、先ほどまでの屈託のなさは影を潜め、自嘲気味な色がほんの少し顕れているように見えた。


 この人もまた、見た目ほどにはお気楽な人生を歩んでいたわけではないのかもしれない。



「自立心が高いんだね。めがみちゃんすごいなぁ」



 そう思い至った背景には積極的には踏み込まず、その行為そのものに対しての素直な賞賛を言葉で表した。



 たぶん、めがみちゃんはその決意を抱いた想いを、物語を、語ってくれるのだろう。


 言わなくても良いし、ごまかしても良いのに、少々言い難そうではあるものの、濁さずに当時の動機を語っためがみちゃん。

 自ずと「何故」という質問を誘発する内容だ。回答を語る覚悟無くして口火を切れる話題ではないはずだ。



 わたしの賞賛の言葉に、「そんな立派なことじゃないんだけどね」と困ったような笑顔のめがみちゃん。わたしは「ちゃんと聴くよ」「聴かせて」といった意識を持って、少し姿勢を正し、めがみちゃんをまっすぐ見つめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ