中華料理系ファミリーレストラン
その機会は意外と早く訪れた。
「うちとは違うのいっぱいあるね。なんにしようかー?」
めがみちゃんはテーブルのタブレット端末でメニュー画面を遷移させていた。
飲食店では少しずつタブレットのメニューが導入され始めていた。バイト先もタブレット対応が完了している。それでもまだまだ全店にいきわたるというほどではなく、大規模なチェーン店でも全店完備にはなっていない。
タブレットがあっても、従来のメニューは残っているので、それも広げてふたりで注文商品を検討した。
「わたしこれにしよー」言いながら慣れた様子でタブレットを操作するめがみちゃん。うちのお店とは系列が違う店舗だが、操作感はあまりかわらないのかもしれない。
「なににしたのー?」
「油淋鶏定食。エビチリも頼んだよ。のんちゃんも食べてー」
「ありがと! じゃーわたしもメインともうひとつたのも。めがみちゃん辛いのいける?」
「得意じゃないけど好きだよ」
「おけ、赤餃子頼んじゃお!」
「辛すぎるの無理だよ⁉︎」
「言って、ファミレスクラスよ? いけるしょー! 挑戦しよー!」
「うん、やってみる。無理だったらのんちゃん食べてよね」
メインは麺類と迷いながらも回鍋肉定食にした。
注文を終えたわたしたちはドリンクバーで各々ドリンクをとってくる。ふたりともサコッシュやショルダーポーチに貴重品を入れているので、席は空けたって大丈夫。
わたしは野菜ジュースにメロンソーダを混ぜた爽やか野菜ジュースをつくった。配合にコツがいるが、絶妙な配分で作れると見た目は毒液みたいだけど意外とおいしいのだ。
「わ。斬新なの創るね……」
若干引いた感じを出しているめがみちゃんは、両手にカップを持っている。
お金持ちは混ぜたりしないのかな? でも両方ホットなんだ?
と思っていたら、片方のカップのドリンクをもう片方に移し替えている。
「えっ、なにそれ?」
「キャラメルアップルティーだよ」
なるほど。片方でアップルティーをつくって、それをキャラメルマキアートに混ぜたのか。
同じ混ぜるにしてもしゃれてんねー! なんか上級者みたいだ。
やっぱりお金持ちは違うなぁ。
いや、お金持ちはファミレスの上級者になんてならないか?
ファミレス業界に身を置いた期間の差なのかな?
「へええ。おいしそう。わたしもやろー」
「ドリンクバーって、クリエイティブで楽しいよね」
この辺の感覚はやっぱりちょっとお嬢さんって感じ。
庶民は、お得さがドリバを選ぶ主要素のはず。たぶん。みんなそうだよね?
ちゃんとしたレストランではできない創造性を楽しむなんて、上流階級が庶民文化に降りてきて、精神的余裕を持って庶民には思いつかない楽しみ方を生み出したみたいなイメージ。
ドリンクメイキングを楽しんでいるうちに料理も届いた。
それじゃ、楽しいおしゃべりタイム、はじめましょうか。




