電話
ふと、気づいた。
スマホの画面が光っている。着信があるようだ。スマホを取ると同時に電話が切れた。少し前からコールしていたのだろうか。
画面を見ると、着信は三件。全てお父さんからだった。無音にしていたが何らかの操作ミスでバイブの設定も切ってしまっていたらしく、今の今まで着信に気づかなかった。
折り返すとすぐに繋がった。
「おお、寝てたか?」
「んーん、計算してた。ごめん、着信音鳴らなくて気づかなかった。そっちは仕事中だよね?」
「ああ」
向こうとの時差は今の時期だと七時間。日本の方が進んでいるから、十五時くらいか。
最初の着信は二十時前くらいだったから、お昼の時間にかけてくれたのだろう。おやつの休憩とかあるのだろうか? シエスタの国という印象があるが、流石に就業中に長々と昼寝の時間が用意されているとは考えにくいが。
「仕事大丈夫なの?」
「気にするな。大丈夫だから出てる。こっちは六時間に一度二十分の休憩を取らないとならないんだよ」
それがこのタイミングにたまたま合致したかどうかは特に言わない。そっけない対応をするが、気を使わせないようにしてくれているのかもしれない。
「マレのこと? 聞いてるかもしれないけどおばあちゃんのところで働いてる。こっち来たばっかの頃はピリついてた感あったけど、今は割と穏やか。一緒に遊んだりもしてるよ」
あまりダラダラおしゃべりする時間はないだろうから、先回りしてお父さんが聞きたそうなことを伝える。
「マレもまだ起きてると思うよ?」
今のマレならフラットな話もできるだろう。今後に関する具体的なことも。
おそらくフランスに残された両親は不安を抱えていたはずだ。直接重要な話をするということも今なら時期尚早ではないだろう。
「希の様子はわかった。ホッとしたよ。望もケアしてくれたんだろ? ありがとうな。母さんにも連絡しとくよ。でも今日は望と話したくて電話したんだ」
わたしと?
なんだろう。
何か問題を起こしたって自覚はないが......。
お父さん、お母さんとは毎月一度電話で情報交換をしている。もちろん、雑談や相談なんかも。
家族で組んでいるトークグループもある。
そこでは済まない話?
学校の担任も緊急連絡先として、今住んでいる家の固定電話、おじいちゃんの携帯電話、『弥那宜』の固定電話に加え、お父さんの携帯電話も把握している。
学校から何らかの連絡がお父さんに入る可能性はあるけれど、緊急なら優先順位的にはおじいちゃんに行くだろう。将来のことやわたしの例えば成績や生活態度のことならお父さんに直接言ってもおかしくないが、心当たりはない。進路などに関しても、時期的にまだ早いし、まずは生徒に志望を出させてからの順番だろう。そのような書類の提出やヒアリングは未だされていない。
心当たりもないのに、知らず知らずのうちに何かやっちゃった? と、妙にソワソワしてしまった。
何のことを言われるのだろう?




