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無駄にはならない無駄

 切られたトンカツを適当にばらしながら、話を戻した。トンカツは箸で触れただけだが、軽やかな食感を思わせて切り身単位で独立していく。


「さっきの続きだけど、おじいちゃんだってさ、あんな感じだけど実は甘いかんね」


「知ってるよ。あの人入学祝とは別に、入学準備費とか称して小遣いやってたろ? 準備なんて全部終わってんのにさ」


 やっぱおばあちゃんはなんでもわかってるなぁ。

 あの家では隠し事ができない気がしていた。正確には、おばあちゃんにはなんでもわかっちゃうんだろうなって思いがある。


「もらった。返さなきゃダメ?」


「いいよ、もらっときな。身内のところで甘やかされるより他所様でちゃんと働きたいって気構えを持っているのんなら無駄な使い方しないだろ?」


「どーかな。学生の欲しいものなんて大体無駄じゃない?」


 実際、もらったお金どうしようかなと思ったとき、その場限りの楽しいことに使うことしか思いつかなかった。これを浪費って言うんだろうな。


「そういう無駄が若い時には必要なんだから、人生にとっちゃ無駄じゃないさ」


「なんかおばあちゃん、しびーね」


 おばあちゃんがそう言うと、無駄遣いさえも含蓄のあるものや粋なものに思えてくる。


「格好良いだろう? のんもその気風があるから将来が楽しみだよ」


「うん、じゃあまず格好良くどっかでバイトして稼いでくるよ!」


 おばあちゃんは「頼もしいね。これも食べな。まだ食べられるだろ?」と、自分のトンカツもわけてくれた。


「食べられるけど、おばあちゃんの分じゃん。残すのどーなん?」


 まだ食べられるし、トンカツ美味しいから貰えるなら嬉しいけど、わたしを喜ばそうとして自分の分まで与えようとしてるなら過剰だ。


「あはは、そうだね。でもおまえが食べるなら食材を無駄にすることにはならないから良いんだよ。

しかし、情けないねぇ。私もまだまだ若い気でいたけど、FJKと同じ量ってのには無理があったようだ。食べてくれるだろ?」


「FJKって!」


 そう言うことならと、遠慮なくトンカツをもらいながらも、突拍子なく飛び出した略語に思わず突っ込んだ。

 お腹いっぱいってくだりは、気を使わせないように言ってくれたのだろうか。その配慮は嬉しいけど、本当は食べたかったのを我慢して譲ってくれたなら、おばあちゃんにもしっかり食べてもらいたかったが、本当に食欲が衰えているよりはそっちの方が良いなと思った。


「客商売やってるんだ。情報収集は当たり前。新しい言葉だって知っているだけじゃなく、きちんと理解し使えるようになっておかないとな。のんも若いからって油断してないで、きちんとアプデしとかないと価値観なんてすぐにズレてってしまうよ」


 確かに、おばあちゃんの言葉は昔の言葉でも最近の言葉でも、なんて言うか地に足がついていると言うか板についていると言うか。

 年配者が無理して若者言葉を使っているような違和感や上擦った印象は無かった。

 なんなら、逆にアリか? なんて思ってしまう。

 むしろ略語が知性的、はちょっとニュアンス違うか。合理的でスマートな言葉に思えてきた。英語で言えばby the wayはBTWと書いた方がスムーズなのと一緒。お互いが認識している言葉なら、認識や情報の交換において質速度ともに高い方が良い。



 とにかくわたしの生き方について、おばあちゃんのお墨付きを得られた。

 なんにもなく、楽しいことしかしたくない私だけど、それでも格好良くなれるはずだ。きっと。


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