9 ヒロインVSラフィリア
「………んなわけで、ここに第一学期の修了を宣言する。成績表もらって家に帰ること。学園は開いてないからな」
ヒロイン誘拐事件という大変面倒な一日が終わり、今日は終業式である。もっと格式ばったものじゃなくていいのかって?うちの祖母が学園長やってる時点で格式ばった終業式がされる可能性なんて潰れた。
夏休みは多くの生徒が領地に帰るが、私は王都に残って仕事である。夏祭りが毎日のようにある王都でトラブルが起きないわけがないので、基本は王都の邸宅に残って鍛練の日々だ。もちろん、何か問題があれば容赦なく呼び出される。
ラフィリアもこちらに残った。貴族夫人や貴族子女などが参加するお茶会に母と一緒にお呼ばれしているのだ。うちの母って結構凄い人らしい。王国で人気のファッションブランドのオーナー兼デザイナーを務めている凄い人で、社交界の情報にも詳しい。なんでも、うちの母がいるかいないかでそのお茶会の格が決まるくらいの人なんだそう。
そんな母の血を受け継いだラフィリアがオシャレが嫌いなわけはなく、学園が終わった後にお忍びで街歩きをする約束をしているのだ。鍛練の日々を送るとか言ったけど、息抜きも必要だ。そう、決してラフィリアの押しに負けたわけではない。
街には貴族様が満足出来るお高い品物なんてないんじゃないかって?ラフィリア曰く、安いものでも良い物はあり、大切なのは高さではなくデザインが気に入るかどうからしい。
なので、ラフィリアが気に入った物があればなんでも買うつもりだ。魔道士は結構高給取りだし、学園ばっかで使い道がなかったのでお金はある。
普段姉らしいことが出来てないので、こういう事で姉妹の仲を深めるしかないのだ。魔法に明け暮れるお姉ちゃんでごめんよ。
「嫌がらせですか、レティシアさん!」
んー?おかしいなー。何故か知らないけどヒロインの声がするー。そしてなんか私に文句言ってる気がするー。なんで?何が嫌がらせ?私はラフィリアと出かけることを考えただけなのに、何故嫌がらせなの?
「私が今日ルドくん達と街に遊びに行くからって、嫌がらせするつもりでしょう!酷い!平民は買い物するなってことですか!?」
うわっ、被害妄想だ。てか、なんで私が街に行くことを知ってるんだ。そして、何故それを嫌がらせと判断してこっちに突っかかってくるんだ。むしろそっちが嫌がらせだろう。
私が今日ラフィリアと街に遊びに行くからって、嫌がらせしてるんでしょう!酷い!貴族は街で買い物するなってことですか!?
「あら、お姉さまとわたくしがどこに行こうとあなたには関係ないわ。いつもお仕事が忙しいお姉さまがわたくしとの時間を取ってくださったのよ?邪魔しないでくださる?」
ラフィリアが冷たい目でヒロインに言い返す。ねえ、ラフィリア今どこから出てきたの?向こうでアイリス嬢とお話してたよね?ちょっとお姉ちゃん理解できない。
「だからって、今日じゃなくていいじゃないですか!嫌がらせです嫌がらせ!」
「あなたには常識と言うものがないの?遊びに行く日が被っただけで嫌がらせと判断するなんて、普通は考えないわ。随分と被害妄想が激しいのね」
ほんとにそれな。普通考えないよな、そんなこと。誰がいつ遊びに行くかなんて、他の人にはどうでもいいでしょ。てか、なんでわざわざ貴重な息抜きをヒロインのためなんかに使わないといけないんだ。
「なんでそんな酷いこと言うんですか!被害妄想なんかじゃありませんし、まずラフィリアさんには関係ありません!」
「じゃあ、まずお姉さまがあなたに何をしたのか教えてもらおうかしら?その後にお姉さまがどうしてそんなことを言ったのか、丁寧に教えてあげるわ」
ヒロインがラフィリアに対して関係ないと言ったがラフィリア、これをスルー。ヒロインVSラフィリアのキャットファイトが始まります。クラスメイトはこれをどうなるのかと観戦する様子。
「まず、レティシアさんは私に対して酷いことを言ってきました。ルドくん達に近寄るなとか、仲良くするなとか、彼らとあなたでは釣り合わないとか………」
「あら、言われて当然でしょう?何故庶民のあなたが高位貴族に釣り合うと思ったのかしら?」
どストレート。ラフィリア、オブラートに包まずストレートに言った!だがしかし、ヒロインはめげない。
「じ、じゃあ昨日!昨日です!私、昨日レティシアさんのせいで誘拐されたんです!」
「あら、ネムレストの第七王子があなた自ら人質になりに来たと証言しているのだけど、彼は嘘をついているのかしら?」
「そんなの嘘です、私、誘拐された時本当に怖くて……」
え、ごめん私あの変態が嘘を付くとは思わないんだが。そして、昨日父が自白魔法をかけた上でそう言ったはずだから嘘ではないはずだ。これが嘘なら父の信用に関わる。
あと、今気づいたけど男どもがいない。こんな場面でヒロインが泣きそうになってるなら絶対慰めて抱きしめているはずの王子率いる男どもがいない。あと、私の婚約者も。その他の男子生徒ならいるけども。
「まあ、仮にあの王子が嘘を付いていたとして、なんでお姉さまが誘拐したことになるのかを教えてくださる?むしろ、お姉さまはあなたを捜索しに行ったのだけど」
「それが罠なんです!レティシアさんはあの人達に命令して私を誘拐させて、それを救出することでノアくんにいい所を見せるつもりだったんです」
うわ、風評被害だ。ヒロインさんよ、もしかしてそれは乙女ゲームのシナリオかい?私そんなことしなきゃいけないの?面倒くさ。てか、まずどうして王子が私の命令を聞くんだよ。
私はただの公爵令嬢で、向こうは第七と言えど王子だぞ。
「どうしてそんなことをする必要が?」
「レティシアさんはノアくんに嫌われてますから!ちょっとでもいい所を見せたいと思うのは当然です!」
ヒロインから私への攻撃だ。オブラートに包んで言え、オブラートに。嫌われてるのは完全に私のせいだけど、せめて仲が悪いにしてお願い。地味に傷つくから。ほら、ラフィリア言葉に詰まってなにも言い返せないじゃないか。
「なんて……なんて失礼なことを言うのかしら!!」
いや、事実だから。ごめんけど事実なんだよラフィリア。あと、アイリス嬢はうんうんって頷かないで。確かに失礼なのは本当だけど、嫌われてるのは事実だから。