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4 貴族の婚約の意味

 

 さて、私はいつフラグを立てたんだろうか。誰にも気づかれないように気配は消していたし、まずここは三階である。


 もう一度言おう、三階だ。


 婚約者IN校舎裏with男どもがいるのは一階。しかも、窓からコソッと覗いていただけである。彼の気配察知能力がやばい。


 とりあえず、降りてきたらどうかと言われたので降りることにする。と言っても、この近くに外へ繋がる階段などないので、窓から飛び降りる。


「よいっしょっと」


 さすがに九メートルの高さから飛び降りれば骨折するので、風魔法を行使する。残念ながら、前世のファンタジーよろしく魔法の一つ一つにカッコイイ名前などないので、私は風魔法のことは《シルフ》と呼んでいる。前世では風の精霊の名前だと聞いたことがあるが、この世界にいる妖精は精霊とは全く別物らしいので名前被りはなかった。


 勘違いのないように言うけど、前世の少年誌でお馴染みのパンチラはない。そんな、淑女としてあるまじき行為をするのは毎度お馴染みヒロイン(笑)さんだと相場が決まっているのだ。


 私も最初に見た時は驚いた。

 学園内が広すぎて木の上に登って確認したとか言っているヒロインがいたらしいが、ラフィリア曰く下からだとパンツがモロ見えだったらしい。


 この世界では、女性は肌を婚約者や夫以外に見せるのははしたない行為とされている。ふくらはぎが出ているだけでもだいぶはしたないのに、ヒロインさんは暑いからと言って太ももの半分くらいまでスカートを上げていたのだ。


 私、ヒロインの前世はリア充系のJKだと思うの。私の偏見だとそういう人とかは、スカート膝上十センチくらいまで折ってたと思うし。かく言う私の友達のハナちゃんもそれ系だった気がする。


「れ、レティシアさん!?なんでここに……」


 私が降りて来たことに驚いてるヒロインさんだが、割とガチでビックリしたような声を出したあと、か弱そうな声で王子の後ろに隠れた。


「レティシア嬢、どうしてここにいるんだい?」


 おっと、馬鹿王子が先程までのことが全部嘘だと感じるような優しい顔で問いかけてきた。この王子、ヒロインに骨抜きにされているが実は結構優秀なのである。え?優秀な王子は婚約者ほったらかして庶民にうつつを抜かしたりなんかしないって?それが有り得るから恋って怖いよね。

 でも、それとこれとは話が別だ。私聞いてるんだからな全部。こうなったらここで証拠出してやんよ!


「ご機嫌ようルドルフ殿下。どうしても何も、証拠をお望みなのでしょう?私、全て見ておりましたので」


 王子が外面を良くしたのに倣って私も外面だけは良くする。簡単に言えば、顔は笑っていても目は笑っていないと言うアレだ。怒っている風な雰囲気を出すのが大事である。

 別に男どもの痴情のもつれなどクソが付くほどどうでも良いが、一応ガチでリンチされる五秒前に婚約者がなっていたのだ。

 ここで心配するなり怒るなりしとかないと、レティシア・マーティスという女は婚約者が危険な目に合いかけたのに、全くもって気にしない冷徹な女であるという評価が付けられる。

 それは私の今後としても良くないので何がなんでも回避しなければならない。


「う、嘘です!レティシアさん、ちょっと前に私に酷いこと言ってきたじゃないですか!それで、私悲しくて……」


 そんな、外面を気にする私にヒロインが支離滅裂なこと言ってくる。あと、なんでレティシアさんなの?私は元一般庶民だから気にしないけど、他のご令嬢からは顰蹙を買うよ?


 ヒロインがまたちょっと涙目になっていたので、王子達が怒ってこっちを睨みつけてくる。ぶっちゃけ怖くもなんともないが、それで良いのか王子。こちとら有力貴族の娘だぞ。


「それは感心しないな、レティシア嬢。いくら彼女が平民だからと言って、嫌がらせをするのは良くない」


 安心してくれ、まず嫌がらせをした記憶はないから。そして、私ガチでリンチされる五秒前に居合わせてからはここを動いてないし、その前あったのは先生だけだから。


「ふむ、記憶にないことを仰られても私には分かりませんので。そちらの方の勘違いではないでしょうか?」

「だって、レンくんと仲良くするなとか、ルドくんに色目を使うのは止めろとか……色々言ってきたじゃないですか」


 ヒロインは王子に抱きしめられながら涙目で訴えてくるが、私は当然のことしか言ってないと思う。あと、それを言ったのは入学当初なんだが。三ヶ月も前なんだが。

 レンくんというのは宰相の息子のことで、コーデリア嬢という婚約者がいる。婚約者を差し置いて仲良くするのは良くないんじゃないかと言っただけである。

 そして、王子に関してはもう何も言うまい。私としてはアイリス嬢が嫉妬するから辞めた方がいいと言ったんだけど、まず色目を使ったとすら思ってないらしい。


「それは公爵家の娘として良くないことではないのだろうか?この国の憲法は個人の自由を尊重することに重きを置いている。平民の娘だからとそれが蔑ろにされるのは良くない」

「あら?個人の自由が許されるのなら婚約者がいる異性とそんな風に抱き合っていいと?それでは何のために婚約をするのか分かりませんね?」


 婚約というのは家と家の結びつきである。それを個人的な理由で破棄するのは許されない。相手の不貞で浮気された側が婚約破棄を叩きつけるのは許されるが。

 前にヒロインから言われたことがあるけれど、私は婚約者のことを理解せずに魔法に没頭して蔑ろにしたからという理由で婚約破棄を突きつけられるらしいが、別に貴族の結婚で愛なんて言うものは大して重要ではない。

 貴族は愛人を囲うことが許されてるし、夫人が二人も三人もいるのは普通である。


 普段から結婚したくないと言っている私だが、婚約を解消するときはその時に応じる不利益を払うつもりだし、謝罪もする。成人したら本格的に魔道士団の詰所に入り浸るのでその前には婚約を解消したい。

 彼と婚約者でいる未成年の間はきちんと婚約者として振る舞うし、不貞をするつもりもない。もし婚約破棄をするとしても、筋は必ず通すべきなのだ。


 浮気して相手に婚約破棄を突きつけて浮気相手との婚約に持って行こうとするのはクズのすることである。

 そして、そんなクズになりかけている男どもがいるので私のお友達のためにも一肌脱ごうと思う。


「殿下もご存知の通り、私には再現魔法が使えます。私の記憶を遡って行けば、どちらが正しいかは一目瞭然。続きは園長室でやりましょうか」


 王子と宰相の息子とヒロインだけ連れて園長室に連行する。他は放置だ放置。

 これを機に王子と宰相の息子の目が覚めてきちんと婚約者と向き合ってくれるといいんだが。


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