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12 貴族のファッションセンス

 

「お姉さまはスカートとパンツスタイルどっちがお好きですか?スカートも愛らしいと思いますが、お姉さまのようなお方ならパンツスタイルも何の違和感もなしに着こなせます!」


 私、レティシア。今着せ替え人形になっているの。


 服を選び出したラフィリアは止まらなかった。予算も考えずにどんどん選んでいくので、お金のことを出して止めようとしたら「お母さまから支払いは家から出ると言われておりますので平気です」といい笑顔で言われてしまった。私が小さな頃から物をあまり強請らなかったかららしい。後悔後先たたずと言うやつだろうか。それとも後の祭り?


 この国のファッションだが、前にも言ったように足が見えてしまうのはアウト。そんなはしたないものは大変顰蹙を買う。それにミニスカートは可愛い女の子が着るから可愛いのであって、私みたいなキツめの女が着ても可愛くはないのだ。場合によっては若作りしている二十代後半に見えるに違いない。


 最近パンツスタイルが私の母によってこの国の流行になりつつあるらしいが、前世みたいなジーパンはない。なんか、ふわっとしたやつ。最初の方はキュロットスカートにして、そこからだんだん今の形になっていったらしい。体型カバーが素晴らしく、スカートよりも細身に見えるからご婦人方に人気だとか。


 で、今ラフィリアが私に勧めてきているのはレザーパンツ。どうしてそうなったんだラフィリア。確かにこの顔と長身なら着こなせんこともないだろうけど、だいぶキツイぞ。主に精神が。まず、どんなトップスと合わせるっていうんだそれは。それをオブラートに包んで聞けば、差し出されたのは白いシャツに黒いニット?カーディガン的なやつ。ねえ、知ってるラフィリア。今の季節は夏だぞ。あと、ここの世界観は中世ヨーロッパ風。どこの中世ヨーロッパにレザーパンツ履いた女がいるんだ。


「うーん……さすがに、これは私じゃ着こなせないんじゃないだろうか」

「そうですか?似合うと思うんですけど……まあ、お姉さまがそう言うなら仕方ありませんよね!次のを選びます」


 ラフィリアは基本的に、私のお願いはよく聞いてくれる。多分私が本気で嫌がれば着せ替え人形にするのも止めてくれるだろうが、如何せん今日はラフィリアのために来たのだ。そして、多分ラフィリアもこのお出かけを楽しみにしていてくれたはず。楽しそうにしているラフィリアの顔を曇らせるのはいけない。そんなことするやつはぶん殴ると決めている。


 でも、このままじゃラフィリアは自分の服を選ばずに私の服だけを選んで帰ることになるのではないだろうか。それは私的にとてもいけない。可愛い可愛いラフィリアの着せ替えを見に来たと言うのに、私みたいなやつの着せ替えとかちょっと解釈違いってやつなんじゃなかろうか。


 幸い、ラフィリアは私の服選びのために長考している。抜けるなら今がチャンスだ。店員さんに荷物を預け、私も店内を散策する。


 何をするかといえば、一つしかない。私もラフィリアの服を選ぶのである。なんか、私ばっかり選んでたら申し訳ないだろ。ファッションセンスなんてものはあいにく持ち合わせていないが金ならある。とりあえず、ラフィリアに似合いそうなの買ってラフィリアが持ってるのと合わせてもらえばそこそこにはなるんじゃないだろうか。

 フルコーディネート?冗談じゃない。いくら姉に対して優しい子でもさすがに自分の好みから外れてるクソだっさいコーディネートなんか贈ったら怒りはしないが呆れるかもしれないだろう。


 さて、ラフィリアは銀髪に金色の瞳という前世では普通にとても珍しい色合いをしているが、どんな色が合うのだろうか。黒か白なら大抵の色彩には合うって前世のばーちゃんが言ってたけどそれって事実?


 間違ってたら恥ずかしいし、変なの選びたくなかったから店員さんに協力してもらった。仕事があるだろうにごめんねと貴族風に言ったら「お気になさらず、本当に仲のいいご姉妹なのですね」と返された。そうだろう、そうだろう。私とラフィリアは多分他の貴族とは違って仲がいいのだ。


 この前のフレデリカ嬢お茶会乱入事件のように、普通貴族の姉妹っていうのは仲が悪いらしい。アイリス嬢は三人ほど妹がいるらしいが、全員から邪険にされているのだとか。

 なんか、自分より年上の女の子は両親からの愛情を一番に受けるとかなんとかで、嫉妬されるらしい。


 多分、ラフィリアにそれがないのは私が小さな頃から魔道士希望で女っ気も何もなかったからなんだろうな、きっと。それで多分ラフィリアは、ダメだこの姉。自分がついていないと淑女さも何もない的なことを思ったんだろう。それ以外に思いつかない。


 私に淑女とは何たるかを教えてくれたのは母ではなくラフィリアだった。その時の私は七歳で、既に女性は守るべきものと判断していたため、自分がその守るべきものの立場になるとは考えられなかった。そんな私に対しラフィリアは淑女マナーを学ばなければ泣いてやるとガチで泣きます五秒前を何度も繰り返して今に至る。


 ものすごく手がかかる姉でごめんよ。

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