迷宮最終層~九首龍戦~③
その後戦闘は一時間以上続き、九頭竜の首を残り三本まで減らすことができた。しかし、銀首がほとんど回復しきり、完全復活も時間の問題だ。それまでに倒す、または、もう一度銀首を、復活とほぼ同時に切り落とさなければいけなくなる。銀首だけを相手にし切り落とすことはできたとしても、今は銀首だけでなく、黒、黄、紫の首が残っている。
これらの攻撃を掻い潜り、銀首を一撃で堕とすのは不可能に等しかった。
「しょうがないか。アスール、【聖炎】を銀首にはなって。それで十分くらいは時間が稼げるはずだ」
「でも、もう魔力が足りないよ」
「俺のやつを吸っていいよ。でも、残りの半分だけにしてくれ。それ以上吸われると、戦闘自体が困難になる」
「やた」
アスールは小さな声で何か呟くと、白夜のほうへトテトテと歩いてきた。そして、白夜の後ろへ回ると口を大きく開けて、首筋にかみついた。
白夜は首から血と魔力を吸われ、体から力が抜けていくが、それはあまり気にならなかった。それ以上にアスールの出す「ぁ・・・ん。クチュ(唾液や血の混ざる音)ハア♡」等という、吐息などに反応していた。アスールは身長は小さいが、白夜と同じくらいで、見た目はかなりの美少女だ。耳の近くで艶っぽい声を聞かせれて、反応しないほうが難しいのではないのだろうか。
それでも白夜はその声に地球での(地球でも雪音に同じようなことをされていた)ことを思い出し、アスールの出す艶っぽい声に耐えていた。
10秒(体感時間では幾時間という時間)でアスールは魔力を吸い終えたようで、白夜の首から(唾液の糸が引いているが)口を離した。
「ごちそう様。それじゃ、【聖炎】」
アスールの放った【聖炎】は、首の生える途中の所で燃え始めた。