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あなたのためなら  作者: 秋風
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出会い

あなたは死人を愛したことがありますか?

そんな非論理的で不可能なこと、当然無理に決まっている。

死人を愛することなど、もしも愛したところで、その愛は一方的なところで止まる《とどまる》のだから。

だが、もしその一方的な愛が、両思いの愛へと変わったら。

あなたはどうします?


平成20年、四月。

曙がすぎ、窓から日差しがつきさす。

私は毎朝のように6時に起き、二度寝し、また起きる。

やっと目を開けようとした瞬間、なにもがモザイクに見える。

気づくと昨夜つけていたコンタクトがまだ入ったままだった。

私は上体を起こし、壁を触りながらトイレへと向かった。

このような出来事は毎日のように過ごし、慣れてきている。

顔を洗い、歯磨きをし、朝シャンをしてやっと、目を開けることができたのだ。

目をこすりながら、指先を目ん玉へとつきさし、コンタクトをとり、そのまま排水口へと捨てる。

髪を洗い、風呂場から出て、そのまま学校の準備をする。

まさに普通の学生生活を過ごしている。

今日から高3。始業式には遅れないよう急いだ。

着々と準備が進み、私は家を出た。


家から一歩踏み出たその瞬間、雷に打たれたような刺激が背骨へと走った。

なにかが起こる。そんな予感がした。


私は理想、想像、予想、妄想には長けている。

長けているというか、それしかしない。

ラブコメのラノベによく出てくるルートとかそういうものを自分が主人公としてどうしただろうと勝手に想像する。

自分の頭ん中で何が起こっているかは思いのほか説明しづらい。

そんな頭ん中でおこる考えを私は「自分ワールド」と名付けている。

誰にも邪魔されない自分だけの世界。ぼっちとしてはこれ以上ない幸せな世界だ。

それがきっかけで五分五分という割合で次に起こる出来事を予知することができる。

異能力者として勝手に思い込み、アニメや漫画に出てくるキャラみたいにそんな理想的な人になりたい、と思っている。

最終的にはただの傲慢で自分が退屈な人生を送らないための時間つぶしみたいなものだ。


さておき駅への徒歩20分、私はその間音楽を聴きながらニュースを歩きながら読む。

洋楽やJPOP、あらゆるジャンルを取り入れることで脳が活性化する、と思う。

こういう勝手な考えは昔からの癖で日々新しい思考を思い浮かべている。


ニュースはニュースだが、私はファッションにはまっている。主にスニーカー。

「靴なんて最低でも3足あれば足りるでしょう。どうせ足二本しかないんだし。」

と思っているそこのあなた。それは違います。

オタクがフィギュアを揃えると同じように、スニーカーを愛してやまない人たち、「スニーカーヘッド」達はスニーカーを揃えると同時に幸福感を味わえることができる。スニーカーの素材、歴史、そしてどうしても手に入れたかったあの靴をようやく手に入れた高揚感。たまりませんなぁ。

そんなわけで、私はスニーカーオタク、通称「スニオタ」と呼ばれている。


窓越しに展示されているフードサンプルを眺めながら進む歩道。

駅まであと2分切った歩道橋を渡っている最中、人影を目にする。

女性の方で歳は私と変わらないぐらい。彼女の目の先にはまだ太陽が出てない緋色と紺色の空だった。

「あぁ、ラブコメ主人公なら彼女が自殺すると勘違いして助けるだろう。」

彼女は突然レールを掴み、飛び越えた。


なぜかはわからない。

自分の頭ん中では真っ白になり、その上コンタクトをつけながら目を覚めるように、周りがぼやけた。

だが、なにかを示すかのように、彼女のことだけは、はっきりと見えた。

気づいたら体が動いてて、手には彼女のシャツを鷲掴みしていた。

走っていたせいで勢い余って彼女ごと転げ落ちた。

正直意識を失ったかと思えば平常で、彼女のことを確認すると涙目でこちらを見つめてきた。

雫のような青い目。絵でみたギリシャのサントリーニの海のごとく美しい眼差しだった。

こんな未熟な私でも、初めて人生での出会いにめぐり会え、ときめきを感じていたと思う。

見知らぬ美少女を腕に抱えながらいう言葉ではないが、私はとても優柔不断な人である。

こういう出来事が起きながら私は頭の中の整理がつかずどこから始めていいかわからなかった。

今朝の「なにかが起きる」というのはこのことなのか?


そんな混乱と動揺で溢れている私はまだ知らなかった、予想さえしていなかった。

彼女の真実を。


すぐさま彼女に声をかけた。

「君大丈夫?」

金髪に青い目、外人か?制服きてるし、学生ってことは間違いない。っていうかこの制服どこかで。色々と疑問に思いつつも彼女の心配してやまなかった。

彼女は顔をあげ、ようやく目線を合わせた。

すると雨が降ったかのように目から頬へと水粒が流れていった。

っげ、私なにかした?全然大丈夫じゃないじゃん。助けるのやばかった?まさか何かの勘違い?頭ん中ゴチャマゼになり、次から次へと連想を繰り返した。


「あ。」

彼女はやっと第一声をはなった。

声のトーンはまさしくアニメ声優でヒロインに抜擢できるような可愛い声だった。

「あわわわわわわ。」と恥ずかしがるかのように私と距離をとった。

多分、大丈夫なんだろう。

自分が助けられたことを気づき、感謝をしてくる、そう思ってた。

「なななな、何様ですか!」

えー。なに私は救世主じゃないの?どういうこと?

すかさず私は、

「あ、あのー。すみません、大丈夫。ですか?」

と問いかけた。

彼女の表情からして、「は。何言ってんだこのキモオタ。」とでも思っているのだろう。

「はっ。」と彼女はようやく今の状況を理解し私に向かい頭を下げた。

「す、すみませんでした!」と逃げるかのように走って行った。

なんなんだ一体。今日の予感はこれなのか?まぁ考えはあとだ。とにかく学校へと。

「なんだとおおおおお!!」時間は早くすぎ、毎朝乗る特急も4分前に出発していた。

高校3年の最悪の始まりだった。


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