表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

明晰夢 食人族と異種文化交流をしよう

作者: 微睡み朧猫

まるで修学旅行にでも行くようにジャングルの奥深く、秘境中の秘境に暮らす現在の文明を全く知らぬ部族を訪ね、彼らを日本に招く企画に参加していた事を夢の中で知る。

しまった‼ またここに来てしまったと後悔するも既に手遅れ。

この世界は度々夢の中でのみ迷い込むおぞましい場所。

しかし、今回はこの夢の記憶を持ち出せる事ができた。理由は分からない。

この世界に限ってはうまく夢を操る事が出来ず、基準はリアルのそれと変わらず明晰夢ならではの自由がほぼ存在しない文字通り悪夢なのだ。

その光景はバスの車窓から見えてくる。半透明化したバスはジャングルの木々を透けるように進むのだが、彼ら食人族の軌跡を写し出すおぞましいスクリーンへと変わり、如何にして人々を襲い喰らうのかが丸見えなのだ。

彼らは金属製の道具を持たず、武器は様々な形状をした石器のみであり、切れ味の悪い小刀らしき物は酷い苦痛を与え、生きたまま内臓を引きずり出すと噛みつき引き千切る。地飛沫と返り血を浴びながら一心不乱で膓を喰らう。そうして息絶えた身体の内臓を全て平らげると次に彼らは各々好きな部位を切り出すとようやく腰を据え、まるで硬いフランスパンでもかじるかのように食べるのだ。彼らは火を使うが人間の脂肪を巻きつけた松明のようなものは灯りや猛獣対策であり、肉を調理する概念はなく生肉のみだった。

そんな先祖代々繰り返されてきたであろうビジョンを延々写しながらバスは進む。と、いつもならここいらで目覚めるのだが今回は続きがあったのだ。

我々の人数は5人に対し食人族は20人程だ。現地付近で通訳を雇い彼らと人類史上初のコンタクトを試みた。幸い我々は完全武装していたのでいざとなれば彼らと対峙する覚悟は万全だ。如何に狂暴な彼らと言えど近代兵器には敵うまい。とは言うものの命の補償などない。我々は決死の覚悟を用いて彼らとのコンタクトを図った。意外にも彼らは我々を快くもてなしてくてた。

そして彼らがなぜ人を襲い食すのか訊いてみるとシンプルな答えが帰ってきた。それは食人は先祖代々続いている伝統だったのだ。

多様な動植物が存在しているにも関わらず彼らは皆口を揃えて言う。人間程狩り易い動物はいない事。肉質も良く一度に大量の食料確保ができる事だと。そんな彼らのある特長に気づいた。彼らの前歯が犬歯や奥歯を除き全てないのだ。理由を訊くと獣のような鋭い犬歯で肉を引き裂くのに前歯は邪魔らしい。犬歯は石器で削り牙のように尖らせ切れ味を増し獲物の腹を裂く彼らなりの武器なのだと。内臓が一番の好物で皆早いもの勝ちだと言った。なぜ内臓を真っ先に狙うのか再度訪ねると柔らかくて食べやすく一番栄養を補える部位だと語った。更に我々はなぜ人だけをを食べるのか訪ねると彼ら以外の人間は食料だと先祖代々伝わる風習であり、それが当たり前、つまり彼らにとってそれが常識であり、我々が牛や豚の肉を火で調理し食べる事に疑問を抱いているようであったのだ。

程好く打ち解けた我々は異文化交流と称し我々の母国である日本に来てみないかと訪ねた。予め録画しておいた日本の風景を録画した映像を彼らに見て貰ったところ、彼らはざわめき驚きを隠せずにいた。まぁ当然だろう。生まれて初めて見る外界の様々な未知なる光景を目の当たりにした彼らは全く理解できず混乱するばかり。

彼らは長老に判断を委ねると3人だけならと了承を得られた。


我々は選ばれた3人と通訳を介し、必用最低限の規則を伝えた。日本では絶対に人を襲わない事。そして人々を食料だと認識しない事を。しかし、好物である人々を前に彼らはどこまで理性を保てるのか不安だった。そして不安は現実化する。

来日した彼らの食事だが当然人肉を提供できる筈もなくあらゆる動物の生肉や内臓を与えたが誰一人として手をつけない。なぜ食べないのか訪ねると彼ら曰く鮮度や匂いが全く異なり食欲が湧かないらしい。このままではまずいと判断した我々は直ちに彼らを帰国させる事にした。だが、既に手遅れだった。人肉に飢えた彼らは我々の宿泊するホテル内で一人の仲間を襲い喰ってしまったのだ。私は恐怖から必死に逃げ出すと風景ががらりと変わった事に気づいた。

そこは小学校へ登下校する際、必ず通る とある小道 でした。そしてなぜか私は小学3年生でランドセルを背負い、その小道を歩いているのです。

実は私が小学3年生の頃、口裂け女の噂を耳にし、その小道に出ると聞いたのでした。なので独りで歩くのが怖くて仕方がなかったのです。そんなある日、授業も終わりクラスメイト全員が帰り支度をしていると担任の先生が戦慄の言葉を発したのです。

その内容は、今日、口裂け女が現れ人が襲われて怪我をしました。なので暫くは集団下校する事になりましたので皆さん各班に分かれ帰宅して下さいと。その言葉を聞いた皆はかなり驚いていました。帰り道には学校の先生や親御さん、PTAの人達から近隣の住人、更には警察官までが各歩道に立ち、皆を誘導するこれまで見た事のない異様な光景でした。無事帰宅してもいつ口裂け女がやって来るとも知れず暫くは大変怖い思いをしたのです。後に聞いたのですが、口裂け女を装った便乗犯による強盗目的の通り魔だったらしく犯人は逮捕されたそうです。この噂話は我がG県発祥と聞いた時も驚きました。

その記憶と夢がリンクしたのでしょう。私はその とある小道 で食人族に追われていたのです。彼らは吹き矢で私を狙いながら追いかけて来るのですが、その吹き矢の先端には痺れ薬が塗られており、刺されれば瞬時に身体が麻痺し動けなくなる物でした。これはかなりヤバいと悟りせめて痺れ薬だけでも排除しなくてはと思い念じると成功しました。すると背後から吹き矢を飛ばす音と共に無数の矢が背中にプスプスと刺さる感覚と痛みを感じたのです。背中にたくさんの矢が刺さったまま私は無我夢中で逃げました。この小道さえ抜ければ助かると確信しながら。

小道を抜ける瞬間、眩い光に包まれ気がつくと人々が行き交う広い大通りにいました。あの恐ろしい世界から抜け出す事に成功したのでした。

目が覚めた時、ぐったり疲れていましたが安堵感が勝っていたのをはっきりと覚えています。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ