1枚目
はじめまして。
タラタリと申します。
以前、別のアカウントにて小説を投稿していたのですが、スランプに陥ってしまい途中でやめてしまいました。
しかし、また書きたいなぁ……!と思い、小説を書くことを再開しました。
連載小説を続けられるか、自信はあまりないですが、頑張ってみようと思います。
好きな食べ物はママドールです。
得体の知れない怒りが私を支配する。私という存在以外のものに自分が支配されている気分。
私を動かすのは私。私の感情を感じるのだってもちろん私自身だから、私の感情だって私。
私は私が支配している。
どうして今までそう思っていたのだろう?
今、私を支配しているのは「怒り」だ。
どうやら私の感情は私に属するものではなく、私の意思とは関係なしに単体行動をするようだ。
そして、迷惑なことに、私の肉体を勝手に動かし、私の命令を全く聞かないのである。
感情は、私が大切にしているものを簡単に壊していく。
「地位」「体裁」「優しい人というイメージ」「明るい子というイメージ」
簡単に壊れるこれらのものは、実はそれ程大切なものではなかったのかもしれない、と傷ついた脳みそで考えたことがある。
私が本当に大切にしているものは何なんだろう。
私を支配している存在は何なんだろう。
そもそも私は支配されているのか?
支配って何?
渦巻く疑問。
しかしそれらは、今、自分を操作している怒りによって消去されてしまった。
後で脳みそのゴミ箱を漁らないとなぁ……
混乱した脳みそと、高まる鼓動。
目の前の相手は酷く怯えているように見える。
……いや、違う。
この人の眼。
喜んでいる。
爛々と光っている。
途端に湧き上がる憎悪。
相手は私が馬乗りになっているため、抵抗することができない。
太ももに硬い違和感を感じる。
不思議に思い目線を下にやると、カーキ色のジーンズにピラミッドの形が浮かび上がっていた。
喉から、体内でドロドロと渦巻いているものが駆け上がってくるような感覚。
私は顔を歪めて、それを飲み下す。
右手には割れたコーラ瓶。
さっき、彼の脳天で真っ二つに割れてしまった。力が少し強すぎたみたい。
息を深く吐き、空っぽの左手でこめかみを伝うベトついた汗を拭う。
やっと殺せる。
そう思うと嬉しさで口角が釣り上がってきた。釣り上がる、なんてものじゃない。まるで口裂け女。
裂けた口からは甲高い笑い声が垂れ流しになる。
興奮と喜びと憎悪と不快感で平静を保てない。
視界にパラパラと無数のカラフルな球が飛び、開きっぱなしの唇からは、唾液がたらたらと流れる。それが、乾燥してひび割れた唇に染みて、痛い。
狂ってトンでイきそう。
こんなの私じゃない。
でもこれは私。
私じゃないようで、この人物は私。
…………私ってなんなんだよ?
私はどうしてここまで狂ってしまったの?
何が私をこうさせた?
下を向く。
私の顔をじっと見つめる男。
息を荒げて、まるで獣のように体を上下させている。
お前だ。
おまえだ、おまえだ。
おまえのせいで、私はこうなってしまった。
お前のせいだ。
大きく弾みをつけるように、コーラ瓶を後ろに振る。
私の身体も仰け反り、一瞬、白目を剥く。
そして勢いをそのままに、振り下ろす。
絶叫しながら起きる。
自分が発している声なのに、うるさい。
眉間にしわが寄る。
なんって気持ちの良くない目覚めなの………おっえ。
涙が止まらない汗も止まらない鼻水は……出ていなかった。
心臓が早鐘を打つ。
浅く呼吸することしかできない。
肺が酸素を求めてキュウと痛む。涙がボタボタ落ちる。
「はぁっ……はぁっ…………あぁ……………またか……」
「VEGETABLE」と黒いロゴが胸にでっかくプリントされている、パジャマ代わりのTシャツはぐっしょりと濡れていた。
こめかみを伝う汗を人差し指ですくって舐めてみる。
…………塩っぱい。
その途端、硬直していた体が緩む。
あれは夢だったんだ。
そう確認できると、安心感により呼吸が長くゆっくりとできるようになった。
暗い室内。
きっと閉じたカーテンの向こうにも、だだっ広い闇が広がっているだけなんだろうな。
枕の下にあったスマホを確認すれば案の定、25時37分と、まだ日の光とは縁のないような時間だった。
深夜に目を覚ましてしまうのは何かと都合が悪いことだ。
また寝ようと努めなければならないし、何より眠ることが難しい。
過ぎていく時間と、段々と暑くなってくる布団に挟まれて、ただただ私は焦る。
安らぎを得る行為を行おうとすることに、安らぎを感じることができない。
薬を飲めばすぐに寝られる、って言われたこともあった。
冗談じゃない。
生理的行動をする為になんで人工的な物質を服用しなければいけないの?
気持ち悪い。
ゴロン、と仰向けになっていた体を転がす。
右頬に汗でしっとりと湿った枕が当たって、安らぎもクソも感じることができない。
今私が眠れない理由には、ただ寝付きが悪いということだけではなく、もう1つ原因がある。
でも、それを認識してしまうと、いよいよ私は眠れなくなってしまう。
つまり、その原因を私は認めたくないのだ。
「あぁ〜〜〜〜〜〜!」
意味もなく声を上げて、伸びをする。
ふぅ、とすぼめた唇から排出される空気。
私は___
何回も同じ夢を見ている。それも、同じ人を、同じ方法で殺す夢を。
どうしよう、今夜も眠れない。