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第7話

アイーダの酒場、というのは通称。

正式な名称は”スターライト”というらしい。


アイーダの酒場、の方が覚えやすいから

今では誰も正式な名前を呼んでくれないんだとか。


酒場というだけあって昼間はさすがに開いていないので、

今から日没まで時間を潰す必要があるんだが…

どうしたものか。


一人で外に出るのは危険だし…

かといって、威勢よく旅に出ると言った手前

家にもそうそう帰れないし…。


とりあえず、俺は街の中をブラブラしてみることにした。

とは言っても、極力人通りの少ない道を選びながら。


細い路地裏に置いてある、明らかに誰も使わなさそうなツボの中を

ふと覗いてみると、その中には薬草が入っていた。


…!?

何でこんなところに薬草が…!?


買えば一つ8ゴールドもする薬草が…。

細い路地裏に置かれたそのツボの周りに、

人が出入りできるような場所もなければ

そもそも誰も使わなくなって久しいといったような風体のツボだ。


周囲を確認してみると、当然この場にいるのは俺だけ。

…もらっちまおうかな…。



…いや。


一応、このツボが置かれてる側の建物の人に確認してみよう。

もしかしたら何らかの理由でこのツボの中に入れてるのかもしれないし。


俺は建物の玄関側へ回り込むと、そのドアをノックした。



主人公「すみませーん」


街の人A「はーい」


ドアを開け、この建物の家主と思しき男性が出てくる。


俺は路地裏のツボの中に薬草が一つ入っているのを見つけたんですが、

これはもしかしていらない薬草ですか?


そう家主に話を振ってみる。


家主「いやあ、自分にもいつか薬草を使う機会があるかもしれないと思って

    試しに買ってみたは良いんだけど、実際もし魔物に襲われて

    攻撃を受けようものなら、多分一撃で私なんか死んでしまうだろうなと…

    そう思ったら特に家の中に置いておく必要もないんだ。」


主人公「なるほど…そうだったんですか」


家主「しかし必要ないとは言っても、捨てるのも勿体ないしね。

    薬草は特殊な力を秘めた草だから、使用期限は特にないらしいし

    もし必要なら持って行って構わないよ。

    見たところ魔物と戦う職業の方のようだし、

    どうせなら私としても有効活用してほしいから」


主人公「本当ですか!?ありがとうございます!!」


こうして俺は、薬草を手に入れた。

快く薬草をくれた家主に、心から感謝しなくては。


他の家にも、もしかしてこういう使う予定のない薬草があったりするのかな…?

でもわざわざ、使う予定のない薬草持ってませんか!?なんて

そんなことを尋ね歩くのも度胸がいる話だ…。

多分さっきの家主と同じような理由で、タンスの中やツボの中。

家の外だったり家の中だったり…家のどこかに眠っている薬草があるんだろうけど。


民家から離れ、再びトボトボと歩き出した俺だったが、

まだまだ酒場が開くまでには時間がある。

そういえば腹減ったな…。


ちょっと早いけど、宿屋に行って宿泊場所を確保しつつ軽く飯を食うか…。

食事をとっている間に良い時間になるはず。


俺は宿屋へと向かった。

宿は一泊…というか、一人あたり2ゴールド。

その2ゴールドの内には、食事代も含まれている。


でも待てよ…薬草って宿代より高いのか…。

一見ただの草だけど、それだけ貴重なんだな。



宿で軽く食事を済ませた俺は、少し休憩してから”アイーダの酒場”へと行ってみる。


酒場の中に入った俺を一目見て、

酒場の店主であるアイーダが俺に声をかけてくれた。


アイーダ「いらっしゃい」


主人公「ど、どうも…」


ちなみに、この世界では16歳が成人で

16歳からは酒を飲んでも問題ないとされている。

酒場に入ってみるのは、今日が初めてだ。


アイーダ「見たところ、魔物と戦う職業の方のようだけど」


主人公「!」


国王様もそうだったけど…いや、国王様の場合は特殊な修行の賜物か。

この店主の場合は…人生経験が豊富だからこその観察眼。ってやつなのかな。


アイーダ「ここはあなたのような、魔物と戦う職業の人が

      一日の疲れを酒で癒すために…。もしくは新しい出会いを求めて、

      世界中から人がやってくる出会いと別れの酒場。

      今日はまだ店を開けたばかりだから、まだそこに一人いるだけだけど」


もし仲間になってくれる人を探しているなら、声をかけてみたら?

と、アイーダは小さな声で俺にだけ聞こえるように言った。


視線の先には、見たところ俺より少し年上と見える一人の青年がいる。

その足元…テーブルの脚に立てかけてある杖のようなものから

恐らく魔法を扱う職業なのだろう。


俺は国王様の、精霊の加護を受けし者同士であれば能力を確認できる

という言葉を思い出し…青年の能力をこっそり見てみることにする。


眼を閉じて手を胸に当てると…青年の能力が確認できた。

…レベルは29。職業は魔法使い。

この青年は既に、かなりの数の魔物と戦ってきたようだ。

HPやMPの他にも、使える魔法まで分かるとは

これは随分便利な能力だな…。


俺が能力を確認していることに気付いた青年もまた、

俺の能力を確認したようだった。


俺は意を決して口を開く。


主人公「あの…!もしよかったら」


青年「断る」


一瞬だった。

というか、最後まで言わせてすらくれなかった。

まぁしょうがないか…文字通りレベルが違いすぎるもんな…。


俺はその青年のもとを離れ、アイーダに相談してみた。


主人公「ダメでした…」


アイーダ「あらら」


主人公「レベルにかなり差があって…」


アイーダ「そっか…断られちゃったか。

      あのお客さん数か月前からウチの店に通っててね。

      そこそこ魔物と戦った経験もありそうだから

      あなたみたいな駆けだしの人に優しくしてくれるかと思って

      ちょっと期待したんだけどな…」


アイーダは溜息をつきながら言った。


主人公「…ここにはああいう熟練のお客さんばっかり?」


アイーダ「いいえ。もちろん熟練のお客さんばかりじゃなく、

      あなたのような駆けだしの人も仲間を求めてここへ来るわ」


主人公「そういう、いわゆる駆けだしの人と仲間になるには

      どうすればいいですか?」


アイーダ「…実はウチの店の二階には、”登録所”というのがあってね」


主人公「登録所?」


アイーダ「ええ。たとえば今のあなたみたいに、

      一緒に戦ってくれる仲間が欲しい時。

      どんな人に仲間として一緒に来てほしいかを募集する為に

      募集要項を登録しておく場所よ。」


主人公「なるほど…そこに募集要項ってのを登録しておくと、

      それを見て応募してくれるフリーの人がいて

      一緒に戦ってくれる仲間になってくれる…ってわけですね?」


アイーダ「そういうこと」


主人公「でも、今の俺と仲間になってくれる人なんて本当にいるんでしょうか…」


アイーダ「…まぁ、不安にもなるわよね。自分から声かけて断られちゃったし」


主人公「…そうですね…」


募集をかけて誰も集まらない…なんてことになったら目も当てられない。


アイーダ「でも、募集をかけないことには応募してくれる人も来ないわよ」


主人公「確かにその通りですよね…。早速登録所に行ってみます」


アイーダ「良い仲間が見つかると良いわね。」


俺はこの店の二階にあるという、登録所へと向かった。

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