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第1話

16歳になった途端旅立つことになった件  第1話



16歳になったある日のこと。

俺は母親に連れられて、国王と謁見することになった。


これは前々から知っていたことだが…

この街のみならず、この世界中の人間はみな16歳を節目に

色々な職業へと就くことを余儀なくされる。


その為の儀式が、俺が16歳になった今日行われるというわけだ。

城の地下にある聖堂で行われる儀式。


この儀式によって、精霊の加護を受けることで

自動的に職業が決まるらしい。

勇者、戦士、僧侶、魔法使い、忍者…

色々な職業がある中、俺の母親は農民だった。


農民は魔物と戦える職業ではないが、大事な職業だ。

魔物と戦う為の職業以外の職業には他に武器商人や

宿屋の主人、銀行員なんてのもある。


俺の父親は戦士という職業だったらしいが、

魔王を倒す為に旅立って以来今は行方不明だ。


今、この世界には魔王と呼ばれる存在がいて、

その魔王の配下である魔物が世界中に跋扈している。

俺の住むこの街の周辺にも、もちろん魔物がいて

今や街と街を往来するにも命がけ。


街の周囲には特殊な結界が張られているから

街の中にまで魔物が入ってくることはそうそう無いが、

もし仮に魔物が入ってきてしまっても街を警備する

守護者という職業の人たちが常に3交替で守ってくれているので安心…


そんなことを思っていると、俺の儀式が終わった。


国王「…うむ。これにて儀式を終了する」


主人公「王様、俺の職業は…」


国王「お主の職業は…勇者じゃ。」


主人公「ゆ、勇者?!俺が?」


国王「うむ。全ての精霊の加護を受けし勇者よ。

    お主は今日から、勇者主人公を名乗るがよい」


主人公「そ、それって…今日から魔物と戦わなくちゃならないってことですか?」


国王「案ずるでない。精霊の加護を受けたその身には、

    魔物と戦うだけの生命力、腕力、防御力など様々な力が身についておる。」


主人公「え…?何も変わってないような気がしますけど」


国王「胸に手を当てて眼をつぶってみなさい」


主人公「…!?」


国王の言うとおりにすると、自分の能力を確認することができた。

HPは20。MPは13。こうげきりょく…これは腕力なんだろうか。

ちょっと待て。HPとMPって何だ?


主人公「確かに今まで見えなかったものが色々と見えました」


国王「うむ。そうして時折、自分の能力を確認するがよい。

    同じ精霊の加護を受けし者同士であれば、互いの能力を確認し合うこともできる。」


主人公「ところで…HPとMPって何です?」


国王「…お主…学問所でちゃんと勉強しておったのか?」


主人公「…すみません」


この世界の成り立ちだとか、この世界で生きていく上で必要な知識は

16歳になる今日までの間に「学問所」と呼ばれる場所で学び、身につけることとなる。

俺はどちらかというと座って人の話をジッと聞いているのが苦手で、

学問所に行ってはいたが居眠りの常習犯だったのだ。


国王「…HPとはすなわち、お主の今の生命力じゃ。

    その数値が0になったその時、お主は死ぬ。」


主人公「…ええっ!!?」


国王「そしてMPとは、マジックポイント…魔法を使うのに必要ないわば魔法力じゃな。」


主人公「魔法…ですか」


国王「うむ。魔法についての説明も必要か?」


主人公「……すみません」


国王「……よかろう。」


国王「魔法とは、先ほどの儀式によって精霊の加護を受けたものだけが扱えるようになる

    とても特殊な力の発現のことを総称してそう言う。」


主人公「…特殊な力…?」


国王「うむ。手から火を放ったり、冷気を放ったり、生命力であるHP…

    ヒットポイントを回復したり、その効果は様々じゃ。」


主人公「すごい…俺にそんな力が?!」


国王「今はまだ、何の魔法も使えんじゃろうが…魔物を打ち倒し、

    経験を積むことによってお主らのような魔物と戦う職業の者たちは

    その能力を高めることができる。これを、皆はレベルアップと呼んでおる。

    レベルアップすることによって、精霊の加護によって授かった魔法が

    少しずつ解禁されていくようになるという寸法じゃ。」


主人公「最初から特殊な力が何でも使える、って訳じゃないんですね」


国王「うむ。レベルの低い状態で、本来は沢山の修練を積み、

    レベルが充分に高くなった状態でないと使えないような大魔法を使った場合

    身体にかかる負担が強すぎて何が起きるか分からん。

    下手をすると死んでしまうかもしれんからな。」


恐らく精霊たちは、そういった事態を案じておるのだろう。と国王はつけ加えた。


主人公「そのレベルアップってのをしていけば、

    いずれは何でもできるようになるってことですか?!」


国王「いや…全ての精霊の加護を受けたとは言っても、

    使えるようになる魔法は人それぞれが持つ素養と、受けた精霊の加護によって異なる。

    いくら勇者という職業になったお主でも、恐らく全ての魔法を使えるようにはならん。」


主人公「そうなんですか…」


国王「しかし…お主、本当に何も知らんのじゃな…。」


主人公「…もう何と申し上げたらよいやら」


国王「うむ…まあよい。とにかく、お主は今日から勇者としての職業についた。

    そこでお主に、ささやかながらプレゼントがある。」


主人公「ありがとうございます!」


主人公は、どうのつるぎと50ゴールドをうけとった!


主人公「…」


国王「なんじゃ?」


主人公「…いや、これでどうしろと」


国王「その50ゴールドで必要な物品をそろえ、

    そして銅でできた剣を使い魔物と戦うのじゃ。」


主人公「もっとこう、良い材質の剣がもらえたりとか」


国王「いわゆるレベルがまだ1のお主に、たとえ高級な剣を渡したところで

    決して使いこなせはしない。未熟な腕で剣を振るえば、

    高級な剣はかえって扱いにくい代物となるであろう。」


主人公「そ、そういうもんなんでしょうか」


国王「お主…国王のこのワシに何か意見があると申すか」


主人公「い、いえ…別にそういう訳では」


国王「まあ、支度金もたったの50ゴールドじゃ…

    文句を言われても仕方ない金額ではあると、ワシ自身も分かってはおる」


主人公「じゃ、じゃあ…」


国王「しかしじゃ。お主以外の者にも、ワシは生活費としてゴールドを支給しておるのだ。」


主人公「…!」


国王「お主のように、魔物と戦いうる力を身に付けた者以外の者たち。

    その者たちの生活に、ワシは支えられ、また、

    ワシがその利益を平等に分け与えることでこの国は成り立っておる」


主人公「…」


国王「それに、これまでも数多の人間が、精霊の加護を受け

    魔王を打倒するべく旅立っていった。

    その全ての人間に、ワシはお主にしてやったように

    必要最低限の支度金と装備を手渡してきたのだ。

    いくらお主が勇者という職業についたとて、特別扱いはできん。」


国王の言うことはもっともであった。


主人公「そ、そうですよね…」


国王「すまんな…主人公よ。」


主人公「いえ、俺の方こそ、本当に申し訳ありませんでした。」


国王「わかってくれるか…。

    では、勇者主人公よ、どうか頑張ってくれ。

    また何かあれば、いつでもここへ来るのだぞ。」


主人公「はい。」


俺は城を後にした。

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