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マネージャー  作者: 夕顔
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体育祭

 夏の兆しを感じるようになった頃には、松葉杖が必要なくなった。


 しかしサポーターとは名ばかりのガチガチのコルセットを足首に付けないといけないため、動きが自由になったわけではない。

 痛みの軽減ももちろんあるが、痛めた靭帯に負荷をかけないために守らないといけないのだ。

  走ったりする事は避けた方が良いと言われ、体育でも無茶をできないし、もうすぐある体育祭も応援に専念する事になるだろう。




 部活動には顔を出すようにしている。

 何しろまともに動けないため主に時計と笛係がメインである。

 マネージャーらしい事は何もできないが、やはり私はバスケが好きなようで見ているのも楽しい。

 特に唯が笑いながら練習をしているのを見ると私もつられて楽しい気持ちになる。


 どうにかして動けなくてもマネージャーとして役にたつ事ができないだろうかと考える毎日だ。



 


 体育祭の出場種目をHRで決める事になった。


 綱引きは全員参加で、個別に棒倒し、障害、短距離、二人三脚、長距離、リレーに人数を振り分ける。

 リレーと長距離は主にタイムが早い男女が3人ずつ選ばれる。

 障害は女子、棒倒しが男子、短距離は男女共、二人三脚は男女のペアとなる。

 二種目までは重複可能のようだ。


 私は足の具合のために見学とさせてもらうのだが、唯が何に出ようか悩んでいた。

 彼女はバスケは上手いがコート以上の直線距離を走るのはあまり速くない。


 体育祭委員はリレーと長距離以外の立候補を募った。


 「短距離が楽そうだよね。」


 と前の席に座る唯に話しかけたが、難しい顔のままだ。何を悩んでいるのだろう。


 暫く悩んでから


 「二人三脚にでる!」


 と挙手した。


 実は二人三脚に出場したい女子は多く、しかし皆周りの目を気にして立候補出来ずにいる気配をひしひしと感じていた。

 当然唯はそんな周りの思いなどお構いなしに、一番先に立候補した。


 「へえ意外だねえ。」


 すると唯は顔を少し赤らめながら小声で


 「澤村君も出るかもしれないじゃん!」


 


 嫌な予感はあった。そんなピンポイントでうまくいくだろうか。

 しかし彼女の思いがどうか届きますようにと、私は心の中で祈りながらHRを見守った。

 唯も手を合わせていた。恐らく無意識だろう。




 嫌な予感は的中してしまった。


 澤村君は長距離と棒倒しのメンバーに選出されたのだ。

 

 唯は気の毒な程抜け殻になった。


 その後各種目ごとにペアを決めたり役割や走行順を話し合った。

 唯は抜け殻のまま、あまり走る事が得意そうではない小柄な男子とペアになった。




 「仕方ないよなあ。」


 その日の部活動が終わる頃には少し持ち直していたが、度々溜め息をついていた。

 私は励ましの意味も込めて


 「澤村君にいいとこ見せよう。頑張れ。」


 と言った。

 それを聞いた彼女は、嫌な予感を感じさせる素敵な笑顔をした。

 この言葉は唯のスイッチを押してしまったようで、この時私は何か間違ってしまったような感覚に襲われた。






 体育祭当日


 快晴だった。


 唯は凄く張り切って自分のクラスを応援していた。

 こういうお祭りが大好きな彼女と私はこれを機にクラスメイト達と仲良くなる。


 クラスにはお祭り好きの人が多かったようで、皆で一喜一憂しながら盛り上がっている。


 最も白熱したのは男子の棒倒しで、大柄なラグビー部の大谷と野球部の外崎達が数名で棒を押さえて、身軽な宮本と真田が皆の背中を乗り越えて棒の天辺に飛び移る作戦は、一年生二年生相手に敵無しだった。

 

 彼達は土埃の中で奮闘し、土まみれになってクラスの待機場所に歓声の中帰ってきて、ハイタッチをしながら盛り上がった。


 唯はその皆の姿にも感化され、素晴らしい笑顔のままいよいよ危ないオーラを放ち始めた。




 マズい気がする。




 次の種目は二人三脚だ。

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